第49話 海 part7

「かき氷、おいちい!」

「うん!おいしいね!」


俺たちは海の家で、かき氷を食べていた。


「おいちいけど……ケータがトロピカンランドで食べさせてくれたかき氷のほうがおいちいかった!」

「こらこら」


俺は愛花ちゃんの頭をぽんと叩いた。


「桜田さん……ちょっと泳ぎに行かない?」


悠介が桜田さんを誘った。

桜田さんは冷たいかき氷が好きじゃないらしい。

未来と愛花ちゃんが食べるのをじっと見ていた。


「うん……そうだね。泳ぎに行こっか」

「圭太。俺たちは泳ぎに行くから」


悠介と桜田さんは浜辺へ向かった。


「ふふ。行ちゃったね。凛と悠介くん」

「ああ。上手くいけばいいけど」

「私たちも2人きりだね……」

「うん……」

「ぶー!愛花もいるのに!」

「あはは!」


俺たちは笑い合った。


「食べ終わったら、俺たちも泳ぎに行こう」

「愛花も泳ぎたい!」


◇◇◇


「あはは!気持ちいい!」


浮き輪をつけた愛花ちゃんが、海から俺と未来に手を振った。

俺と未来は浜辺のベンチに座っていた。

少し離れてところで、悠介と桜田さんが泳いでいた。


「今日は楽しかったね……」


未来がしんみりした声で言った。

いったいどうしたんだろう?

さっきの大学生との喧嘩のことを気にしているのかな。


「どうした?」

「また夏休みが1日終わちゃったから……」

「ああ……そっか」

「そう考えると、なんだか寂しくて」


たしかにもうすぐ、夏休みが1日終わる。

そろそろ夕方だ。

人も帰り始めていた。


「ねえ……ケータ。近くに座っていい?」

「え、あ……いいよ?」


俺と未来は同じベンチで、隣同士で座っている。

もう十分に俺たちは近くにいるはずだけど。


「じゃあ……近くに行ってもいいんだね?」

「ああ」


未来は立ち上がって座った。

――俺の膝の上に。


「え?」

「……ケータが近くに座ってもいいって言うから」


近くと言うから、もっと距離を詰めてくるだけだと思っていた。

俺の膝に、未来のお尻が乗っている。

むちっとしたお尻の感触が、俺の膝に伝わっていた。

すげえ柔らかい……


「いや、でも、ここじゃ……」

「……嫌なの?」

「嫌じゃないけど……」

「ケータの膝、暖かくてたくましいね」


未来は後ろ手に、俺の膝を撫でた。


「あ、ありがとう……」


未来の水着のお尻が、俺の膝の上で動く。

ぷにぷにしているぜ……


「凛と悠介くん。上手く行くといいね」

「そ、そうだね」


今はそれどころじゃないんだが……


「どーしたの?」

「……なんでもない」

「あ、ごめん。重いよね」

「いや、そうじゃなくて」

「ふーん……」


未来は立ち上がって、俺に向き合うように座った。

――また俺の膝の上に。


「ケータ……顔が真っ赤だよ」


未来はベンチの背もたれに両腕をつけた。

まるでベンチの上で、俺を包み込むように。

未来の大きな胸が覗けて、すげえドキドキする。


「未来も……真っ赤だからな」

「ふへえ?あたしが?」


未来があわわと焦る。

未来は「紙耐久」だ。

攻撃力は高いが、防御力が低すぎる。

自分が攻めている時は威勢がいいが、いざ自分が攻められる側になると弱い。


「もう!ケータのバカ!」

「ははは」


未来は俺の胸板をポカポカ叩いた。


「……ケータの胸板って、厚いね。あ、腹筋も割れてる」


俺の腹をじーっと見つめる未来。

そんなにじっくり見られると恥ずかしい。


「触ってもいい?」

「……いいよ」

「ふふ。ありがとう」


未来が俺の腹を触る。

さわさわと優しく撫でてくる。


「うわ!硬いね!ケータはバスケ部だもんね。すごいなあ」

「まあな……」

「ずっと触っていたいな」

「え?」


未来はイタズラぽっく笑った。


「お姉ちゃああああああああああん!!ずるいいいいいいいいい!!」


愛花ちゃんが叫びながら、ベンチへ突っ込んできた。

浮き輪をつけたままだ。


「愛花!」

「ずるい!ずるい!あたしもケータの上に乗る!」


どすん!と、未来の背中に覆いかぶさった。


「おわ!重い……!」

「こら!危ないでしょ!」

「あたしもケータのお腹触る!お姉ちゃんはどいて!」

「絶対どかない!」


俺の膝の上で姉妹喧嘩が始まった。

……やれやれ。重いから早くどいてほしいな。










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