第10話 昨日のキスのこと(side 未来)

——昼休み後の教室。


「そろそろ教えてよ。未来と小川くんは、付き合ってるの?」


あたしの親友、桜田凛(さくらだりん)が興味津々で聞いてきた。

教室で席が隣だから、朝から何度も同じことを聞かれている。


「朝も言ったけど……付き合ってないから」

「でも、家まで入れたんでしょ?」

「そうだけど……」

「未来の家って、今は親いないじゃん」

「うん」

「……小川くんと、家で2人きりだったってこと?」

「愛花がいるから」


あたしは今まで、家に男の子を招いたことがなかった。

家まで来た男の子は、ケータが初めてだ。


「で、小川くんと家で何してたの?」


凛はニヤニヤしながら聞いてくる。

基本は優しくていい子なんだけど、お調子者でミーハーなところが欠点だ。


「うーんと……小川くんに動画編集のこと教えてもらいたいと思って」

「動画編集……?」


凛は怪訝な顔をした。


「Vの動画作るのにわからないことがあったから、小川くんに教えてもらってた。小川くん、そういうの詳しいから」

「へーそうなんだー」


……嘘ついちゃった。

ケータ、ごめん!

でも、昨日のことは誰にも言うわけにはいかないよね。


「じゃあ……未来は小川くんのこと好きってわけじゃないんだ」

「あ……うん。そうね。別に好きとかじゃないよ」


これも嘘だ。

いや、正確には嘘じゃないかも。

あたしはケータが好き……なのかな?

ひどい人見知りの愛花がケータに懐いているし、昨日もすごく頑張って「パパ」をしてくれた。

とっても優しい人なんだと思う。


一緒に愛花と遊んでる姿は、素敵だったなあ。

キスもしちゃったし……

昨日はドキドキして眠れなかった。


「未来、顔赤いよ」

「え?あ……」


あたしは思わず自分の顔を覆った。


「なーんか怪しいなー」

「な、何もないって!」

「絶対、何かあったでしょ?あたしにだけ教えてよ」

「本当にないから!」


思わず叫んでしまった。

一斉にクラスメイトの視線が集まった。


「未来はわかりやすいなー」

「もお!凛のいじわる!」


あたしは凛の肩をポカポカ叩いた。


……やっぱり、ケータのことを考えるとドキドキする。

今日も……ケータとキスする。

変なお願いして、ケータはびっくりしてたけど、愛花のためなんだ。

恋人だからキスするんじゃない。あくまであたしたちは、愛花のパパとママだから。


今日もケータが来るの楽しみだな。



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