第5話 ママにチューしなさい!

「パパ!ママにちゅー!ちゅー!ちゅー!」


愛花ちゃんのちゅーコール。

どうすればいい?

俺が綾瀬さんにキスするまで、やめそうにない。


俺は綾瀬さんを見つめた。

綾瀬さんも困ってるようだ。

仕方ない……ギリギリまで頬に唇を近づけよう。

キスしたように見えるはずだ。


コクリ、と綾瀬さんがうなづいた。

覚悟を決めたらしい。


俺は綾瀬さんに横に立って、少しずつ顔を近づける。

洗い立てのシーツのような、いい匂いがする。

頬のギリギリまで近づいた。

お互いの吐息が顔にかかる。

綾瀬さんは顔を真っ赤にして、固まっていた。


「ブブー!ほっぺじゃなくて、唇にするの!」


愛花ちゃんが俺をポカポカ叩いた。

唇を重ねるのはさすがに……


「ほら!ママがちゅーを待ってるよ!」


綾瀬さんは目を閉じて、少し唇を突き出していた。

これは……しちゃっていいのか?


「愛花がうるさいから、しちゃおう……」


綾瀬さんが小声で言った。

もうやるしかないな。


俺は綾瀬さんの肩を掴んで、キスをした。

もちろん、唇が軽く触れる程度だが。


「もっとでしょ!もっと!」


愛花ちゃんは怒り出した。

さすがにこれ以上は……


「ううんっ……!」


あり得ないことが起こった。


綾瀬さんが俺に抱きついて、キスをしてきた。

唇がぴったり重なった。

すげえ柔らかい……


「やったあ!パパとママがちゅーしてる!しあわせいっぱい!ヒューヒュー!」


愛花ちゃんは手を叩いて喜んだ。


「愛花も入れて!」


俺と綾瀬さんに抱きついた。


「パパ……ありがとう!すごく嬉しい。またパパとママが仲良くしているところ見れて」


愛花ちゃんの笑顔を見ると、俺は怒る気がなくなった。

この子は本当に、ちゅーするところを見たかったんだ。


「ママも嬉しい!パパ、愛してる!」


とびっきりのかわいい笑顔で、綾瀬さんも喜んだ。

愛してるって……

俺とキスして嬉しいわけないのに、ここまで本気でオママゴトするのはすごいな。


「パパは……ママのこと愛してる?」


愛花ちゃんが俺を真剣な顔で見ていた。

……言うしかないよな。


「パパも、ママを愛してる」

「どれくらい?」

「えーと……象さんくらい大きく、かな?」

「象さんって!」


綾瀬さんがクスクスと笑った。

我ながら自分のボキャブラリーのなさに呆れた。

小学生レベルじゃねえか。


「ありがとう!パパ♡」


綾瀬さんが俺にぎゅうと抱きついた。

おうふ……豊かな胸が当たりまくるぜ。


「あ!パパ顔真っ赤だあー!」


愛花ちゃんは笑った。


「ふふ。今夜は久しぶりにする?」


綾瀬さんはイタズラぽっく笑う。


学校一の美少女に抱き合って、キスをした。

すげえおいしいこと、なんだよな?

でもそんなことより、2人が笑顔になってくれたことが、俺は嬉しかった。




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