陽キャに幼馴染の彼女を寝取られた陰キャの俺が、学校一の美少女と夫婦になった件。同じ家で糖度100%の甘々青春ラブコメが始まりました!

くまちゃん

第1話 NTRれ、振られる

バスケ部の練習の帰りだった。

俺は体育館の裏に水を飲みきた。


「はあはあ……ああああああああん!もっと、もっとぉ……」


俺の幼馴染で、中学から付き合っていた彼女――飛騨朱未ひだあけみと、女たらしで有名なイケメン太田おおたが、恋人としかしないことをしていた。


「は!圭太!どうしてここに?」

「あー小川か……」


朱未はずり下げてたパンツを上げて、太田の後ろに隠れた。

焦っている朱未とは違い、太田は冷静だ。朱未を守るように、俺の前に立ちはだかった。


「朱未……今日はテスト勉強あるからすぐ帰るって……」


朱未は俺の問いを無視して、


「圭太こそ、どうしているのよ?今日はバスケの練習休みじゃ……」

「大会前だから、自主練しようと思って」

「……まあ、バレちまったなら仕方ないな」


太田は薄笑いを浮かべた。


「お察しのとおりだよ。俺たちは付き合っているんだ」

「はあ?朱未は俺の彼女で……」

「圭太と別れたいの!」


太田の背後から朱未が出てきた。


「圭太ってさ……男らしくないし、面白くないし、かっこよくないの。それに、もう飽きたの。圭太のこと」

「飽きたって……お前」

「そういうことだ。潔く身を引いてくれ」


朱未は太田の腕に抱きついた。

愛おしそうな目で、太田の顔を見つめている。


「圭太のこと、もう好きじゃないの。さよなら」


◇◇◇


俺は1人、夕暮れの帰り道を歩いていた。

朱未とは家が近所で、幼稚園の頃からずっと一緒にいた。

ワガママな性格だけど、かわいくて明るくて、俺はずっと好きだった。

でも、朱未のほうは俺とは違うふうに思っていたんだよな……

さっき見たものが、真実なんだ。


家に帰りたくなかった俺は、公園のベンチに座っていた。

このまま、ずっと公園で1人でいたかった。


ブランコの近くに、5歳ぐらいの女の子と、40ぐらいのおっさんがいる。

おっさんが、女の子にカードを見せている。

子どもに大人気のボケモンカードだ。

キラキラしているから、きっとレアカードだろう。


「お嬢ちゃん……このカードあげるから、おじちゃんと一緒に来よう」


あれ?親子じゃないのか?


「どこに?」


女の子が笑顔で答える。


「楽しいところだよお。そこで楽しいことしようお……」


かなりキモい笑い方をする。

ヤバそうなおっさんだ。


「きゃああ!」


おっさんが女の子を担ぎあげた。


「さあ、おじさんと楽しいことしようねえええ」


誘拐だ!助けないと!

俺は立ち上がって、女の子のところへ向かった。


「おい、おっさん。その女の子をどうするつもりだ」


俺はおっさんの前に立ちはだかった。


「その子を離せ。嫌がっているだろ」

「いやだね。あんたこそ、この子とどういう関係だ?」

「あんたなあ……」


誘拐しようとしているくせに何言って……


「パパ!」


女の子が叫んだ。


「パパ、パパ、パパ!助けて!」

「あんた、父親なのか……」


俺はその日、制服じゃなくてバスケをやる時のシャツと短パンを着ていた。

だから、俺がこの子の「パパ」に見えてもおかしくはなかった。

いきなり「パパ」と呼ばれて驚いたが、これを利用しない手はない。


「そうだ。俺はその子の父親だ。うちの娘を返してくれないか」

「あ……そうだったんですか。あの、この子が公園で1人でいるから、危ないと思いまして、保護しようかと……ははは」


ありえない嘘で、必死に取り繕うおっさん。

マジでふざんけんな。


「嘘つけ!さっと消えろ!このロリコン変態野郎が!」

「ひい!」


おっさんは走って逃げていった。


「もう大丈夫だよ」

「うん。パパ、ありがとう!」

パパとママはどこにいるの?」

愛花あいか!ここにいたの?」


背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

まさか――


「あ、綾瀬さん?」

「小川くん?」


振り返った先にいたのは、綾瀬未来あやせみくだ。

学校一の美少女で、生徒から「姫様」と呼ばれている。

さらさらの黒髪は、緩くたなびき、目は丸くてかわいい。

肌は透き通るように白くて、胸も……かなり大きい。

本当にめちゃくちゃ美人で、しかも大人気Vtuberのバイオレット・アイとしても活躍している。

俺とは同じクラスだったけど、話したことは一度もなかった。


「お姉ちゃん!パパが助けてくれたんだよ」

「パパ……?」


綾瀬さんは怪訝な顔をした。


「実は……」


俺は綾瀬さんに事情を話した。


「そうだったんですね!妹を助けてくれてありがとうございます」

「よかったです。誘拐されてなくて」

「じゃあ……また学校で」


綾瀬さんと愛花ちゃんは手をつないで、帰って行った。

もう日は落ちていた。

夜の公園でぼっち……

はあ……俺も帰るか。


――次の日、俺は学校一の美少女から、体育館の裏に呼び出されることになる。







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