きみはウィステリアの夢を見るか

赤寅

あらすじ

この世界には、転生している人がいる。転生者は前世の記憶を持ち、かつての想い人を探す。成就できなかった恋を遂げるために、転生しているのだ。

津久瑛一は、転生など自分には無縁の話だと思っていたが、ある日突然、前世の片鱗を思い出す。幼児を愛おしく抱きしめている自分。人生の宝物だった。それが同じ学校の野球部エース、岸川壮大であることも、徐々に思い出していく。しかし今世は同性愛者ではないので、なんとかして呪縛から逃れようとする。

転生に詳しい同じクラスの男子学生、加瀬真菰を頼ると、加瀬も転生者だと告白される。彼はすでに五回目の人生だと言う。そして、来世を誓い合った相手から逃げ続けている。

津久の覚醒に刺激を受け、親友である谷純也までもが前世の記憶を取り戻す。谷はなんと、昭和スターの生まれ変わりだった。あまりに美しい外見だったため、他人を信用できなくなり、自暴自棄な生活を送ったが、最期に顔ではなく内面を愛してくれる本当の恋人を見つけた。

谷は前世の恋人夏子と再会を果たす。しかし谷は、前世で自分の外見を憎んでいたため、まるで違う容姿で生まれていた。実は顔に惚れていた夏子は谷を拒否。落ち込む谷に、加瀬は自分の転生について語った。

加瀬は最初の人生では女性で、戦国時代のある小国の姫だった。幼い頃に将来を誓い合った四郎は、隣国に人質として囚われていた。四郎は必ず戻ると約束し、家の復興のため逃亡を図る。果たして数年後、成人した四郎はある国で頭角を現し、領主家に婿入りし、隣国に戦を仕掛けた。加瀬の父は隣国に加勢したが討ち死に。加瀬も自害をしようとしたところ、捕らえられる。

四郎の正妻が加瀬に毒を盛る。命尽きる時に、四郎が正妻の血縁を皆殺しにせよと命じるのを聞き、それを防ぐため、四郎に転生を誓った。だが再び添うことは望んでいなかったので、女性から男性に転生してしまった。

転生者は相手に命令することができる。命令されると逆らうことができない。加瀬は町中で四郎の歌を聞く。それは命日に死んだ場所へ来いという命令だった。

逆らうことができない加瀬は津久に付き添いを頼む。案の定、再会した四郎は加瀬に暴力的に命令したが、津久が機転を利かし、仕切り直しに成功する。安全な再会のため、岸川に協力を頼む津久。最後の記憶がよみがえり、男同士の恋愛であるからこそ身を引き、岸川の成功を願っていた自分が、なぜもう一度生まれ変わってまたやり直そうとしたのかを思い出す。まるで他人のように感じていた前世が、自分自身の記憶なのだとシンクロした瞬間だった。

全員で再会を果たす。四郎は「俺を愛せ」と命令しようとした。加瀬が「そうしてほしい」と頼んだ。四郎は苦しみながら、加瀬の前から姿を消す。

津久は岸川と一緒に生きていくことを決意する。加瀬は四郎に逢いに行くと、津久に告げる。

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