ボクが世界を見捨てたのか? 世界がボクを見放したのか?

@k0905f0905

第1話

 「ねぇ、仁一朗」

崎田仁一朗の部屋で仁一朗の友人、滝野菊が

甘ったるい声を出した。

「何が野菊だよ。ドクダミみたいな顔して」

仁一朗が余計なことをいった。

「やかましいわい!アンタはどうなのよ。税務署

みたいな顔して」

「どんな青じゃなかった、顔じゃい」

仁一朗が全身で怒りを露わにした。

「で、なに言おうとしたんだ、野菊」

二人の傍にいた仁一朗の友人2号、栄波太郎が

野菊にたずねた。

「仁一朗よ。このままじゃ、取返しのつかないことに

なるわよ」

「もう、なってるよ」

仁一朗が煎餅を齧りながらいった。

「まだ、間に合うわよ。まだ25歳じゃない」

「まっ、もう遅いか、確かに仁一朗の言う通りかもしれんな」

「しっ、波太郎のバカ」

野菊が自分の唇に人差し指を当てた。

「大丈夫よ、これから死ぬ気になって働けば。何とかなるって」

「何のために」

「なっ、何のために⁈」

野菊がわけのわからないといったような顔をした。

「自分のためにでしょう」

「いいよ、オレはもう人生捨ててるんだから」

「仁一朗」

野菊が本当に悲しそうな顔をになった。

「オレも世捨て人になりてぇな」

波太郎が頭の後ろで手を組んでのけ反った。

「しっ、バカ、このアンポンタン」

野菊が波太郎を非難した。

「何で、オレが長崎ちゃんぽんなんだよ」

波太郎が口を尖らせた。

「どういう耳してんの、本当に」

野菊が大きなため息を吐いた。

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