バリアント対策本部定例会議 議事録
日付:二〇三〇年 九月 一日
場所:バリアント対策本部 大会議室
発言者:
バリアント対策本部 本部長兼技術開発顧問室長
東京都防衛協会 特別事案対策室実行委員
防衛装備庁 先進技術兵装開発センター長代理
《 記録開始 》
綺羅星:
先日、デュアリスこと天下原 衛士がバリアント対策本部直属の
大熊:
その少年はバリアンビーストだったのだろう? 我々人間を裏切る可能性を懸念すべきではないか?
綺羅星:
たしかに天下原少年はビーストでしたが、元々は普通の人間です。そしてビースト特有の精神不調が起きなかった稀有な事例でもあります。彼の能力と精神状態については、適性診断と十度の面談結果をご覧になれば納得いただけるかと。
大熊:
しかしまだ子供だろう? どのようなきっかけで心変わりするか分からん。その点の対策はどうするつもりだ?
綺羅星:
もちろん定期的なメンタルチェックを実施します。もっとも私が言うのもなんですが、彼はメテオキックよりも精神的に自立していますよ。その点で言えば、私はメテオキックの方が手を焼くと思います。
大熊:
ううむ……。
綺羅星:
旗魚博士はどうでしょうか?
旗魚:
私は文句ありませんよ。いわゆる悪の怪人の「光堕ち」ってやつでしょう? ただまあ、兵装開発のための研究に協力してくれると嬉しいですね!
綺羅星:
細胞分析ならビーストの死体で十分かと思われますが……まあ本人の意思次第ですが、戦闘実験などは可能な限りご協力させていただきます。
旗魚:
ええ、ええ、十分ですとも!
綺羅星:
……では、今後はメテオキックとデュアリスのツーマンセル、あるいは交代でビースト駆除活動を実施。バリアント災害の永久排除を目指します。なにかご意見は?
(大熊委員が挙手)
大熊:
直近のバリアントの動向変化についてはどう対応するつもりだ?
綺羅星:
その件についてのご相談こそ、本会議の本題です。これまで午後四時から午後八時までの限られた時間でのみ出現していたバリアンビーストですが、八月下旬から昼夜を問わず出現するようになりました。
大熊:
そもそも夕方しか活動しない方がおかしな話だったのだ。ようやく本気を出して来た、というところではないか?
綺羅星:
スペクター・バリアントの思考は不明ですが、これまで人的被害が抑えられていたのは出現時間が限られていたからです。活動時間の変化により二人のヒーローだけでは手が回らなくなる可能性が高くなります。
大熊:
由々しき問題ではないか。旗魚博士、例の特殊兵装の開発はどうなっているのだ?
旗魚:
現在テスト段階でして、実戦に投入するにはデータ不足と言わざるを得ませんねぇ。
大熊:
対策本部の施策は?
綺羅星:
現状はヒーローたちが交代で対処することになっています。しかし彼らはまだ学生。普段の生活リズムが崩れれば、体調にも影響します。どちらも行動不能になる最悪の事態だけは避けたいところです。国内の超人探索も継続していますが、正直望み薄と言わざるを得ません。
大熊:
ならばここは、特別事案対策室が用意した施策を聞いてもらおう。
綺羅星:
伺いましょう。
大熊:
合衆国からヒーローを誘致する。
旗魚:
へぇ! 海外のヒーローですか! それは面白い! あ、いや、失礼……。
大熊:
日本と違い、あちらは国家公認のヒーローが多数存在する。生まれながらの超人から改造人間、特殊装備の機械兵士から宇宙人まで様々だ。我が国も見習いたいものだな。
綺羅星:
ですがその分、合衆国は超人犯罪も非常に多い。それらに対処するためにもヒーローは合衆国にとって貴重な人材のはずです。そのような人材を我が国に派遣してくれるでしょうか?
大熊:
綺羅星本部長の心配ももっともだが、我々に任せておけばその点はすぐに解決するだろう。
綺羅星:
……その様子ですと、すでに合衆国とお話がついていらっしゃるようですね。
大熊:
ああ。まずは試験的に一人、派遣してくれる運びとなった。まあ流石に主力級は派遣できないが、新人ヒーローならばと快く引き受けてくれたよ。
綺羅星:
それはありがたいお話です。で、こちらからの返礼は?
大熊:
バリアンビーストとの交戦記録の提供だ。公開情報も多い。合衆国に知れたとして、特に問題はないだろう?
綺羅星:
そういう機密に関わるお話は、事前にご相談いただかなければ困ります……とはいえ現状、ヒーロー誘致以外に有効な手段がないのも事実……ちなみに、その新人ヒーローの活動歴は?
大熊:
パーソナルデータの確認はこれからだ。名前だけはすでに聞いているがな。
綺羅星:
検索しますので、伺ってもよろしいですか?
大熊:
もちろん。
(大熊委員、書類データを綺羅星本部長に提出)
綺羅星:
超能力ヒーロー【
大熊:
綺羅星:
待ってください。「彼女」と言いましたか?
大熊:
ああ、サイキックは女性のヒーローだよ。それも、十代のね。
《 記録終了 》
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