第2章 誘拐編

【あらすじ】


「あなた‥‥もう少し、運動したほうがいいわ。どんなか弱いご令嬢やお年寄りでも簡単に使える手頃に扱える物があるから。」


 事件の発端は、数年前のセレネによるこんな不用意な一言から始まっていた―――。



 レパード男爵家18女ことユリアンが、一見美男であるハディス、オルフェンズ、ヘリオスを伴って学園へ行き、アポロニウス王子にも目を掛けられてしまったセレネを敵対視するようになる。ユリアンは魅了の魔力の持ち主であり、並々ならぬ上昇志向の持ち主で、王子やそのご学友達を始め、自身の在籍する3年生令息達に次々と毒牙を伸ばして行く。ついにはヘリオスまでもがユリアンの魅了に堕ちてしまうが、セレネの挑発により正気を取り戻す。けれどこの出来事は、姉にコンプレックスを抱くヘリオスの心に影を落としたのだった。


 安心したのもつかの間、学園帰りのヘリオスが何者かに誘拐され、現場には紫色の魔力が残される事態が発生。その紫色の魔力は強い魅了の効果を持つもので、誘拐犯の目的は、魅了して落としたいヘリオスを狙ったものなのか、夜会で注目を浴びた為に利用価値のある資質持ちとして目に留まったセレネを狙ったものなのかは分からないと言う。


「本当に危なっかしい立ち位置にあるんだよねー。それを護る為に、腕にちょっと覚えがある僕が護衛に就いたんだよ。」


 ハディスが護衛になったのにはそんな経緯があったらしい。そして紫色の魔力に心当たりがあると云うハディスは、自分に任せるように告げると一人セレネのもとを去る。


 ヘリオスの手掛かりが掴めないまま、学園では生徒会長となったセレネを追い落とす画策が進行し、ユリアンをはじめ、王子のご学友である騎士団長令息カインザによって、セレネの生徒会長罷免嘆願書が学園に提出される。しかし、友人との連携、協力により、王子にますます興味を抱かれることになってしまったものの、無事切り抜けることができた。騒ぎは学園長の耳にも入り、そこで今回の誘拐と生徒会長罷免嘆願事件について裏で糸を引いているのが、彼の孫であり、「燕の子安貝」の継承者で、魅了を司る紫色の魔力を持つイシケナル公爵だと判明する。


 学園長と、ギリム、オルフェンズの協力のもと、イシケナル公爵の元への潜入に成功!ヘリオスを探す中、ハディスが「火鼠の裘」、オルフェンズが「蓬萊の玉の枝」の継承者だと判明する。対峙したイシケナル公爵との魔力での応酬にセレネは勝利し、ヘリオスとの接触も果たすが「お姉さまと、僕との未来のために」成長を果たすため、一時、公爵のもとへ留まって家族と離れることを決意する。


 一件落着かと思ったのも束の間、イシケナル公爵の領地内でかつてない規模の大木トレントや、多数の動物型魔物の発生が報告される。居合わせたセレネ達も、その討伐に力を貸すことになり、無事魔物たちを森の奥へと追い返すことに成功するが、その混乱の中、ハディスに対するほんのりとした想いを自覚するセレネだった。



本編はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16816927860663382828




【登場人物】


第2章の登場人物まとめです。



■セレネ・バンブリア(主人公)■

15歳(4年生)、桜色の髪、黙っていれば妖精の様な儚く可憐な乙女。

前世の記憶があり、記憶と知識をもとにバンブリア商会発展を望む。魔力を纏って出来る事をイメージ&実践した結果、そこいらの騎士には劣らない体術を持つことになっている。



■ヘリオス・バンブリア(弟)■

14歳(3年生)、珊瑚色の髪、瑪瑙色の瞳。幼い頃はセレネと瓜二つだったが、成長期を迎えて可愛い系ではあるものの少年らしい容姿になっている。

バンブリア商会が誇る技術担当。姉と共に行動することで鍛えられた魔力の制御は大したものだが、共にいるのが規格外の姉なので、それはあまり分かっていない。



■テラス・バンブリア(父)■

バンブリア男爵その人。代々続く竹細工の商いを家業としていたが、セレネが生まれ、その才能に気付くや、教育に力を入れ、順調に業績を伸ばして男爵位を得る。外回り&交渉担当。



■オウナ・バンブリア(母)■

赤みの強いマリーゴールド色の髪に紺のスーツを颯爽と着こなすキャリアウーマン。

バンブリア商会の商会長(経理、人事などデスク担当)。



■ハディス(自称護衛)■

赤髪、黒に近い深紅の瞳、垂れ目。肩までの髪。

しがない貴族の三男坊と自称。王家の文様である「有翼の獅子」をあしらった衣服を纏ったり、王の御璽付きの書類を得ることの出来る人。『火鼠の裘』の継承者で、膂力・攻撃力を司る紅色の魔力を持つ。



■オルフェンズ(暗殺者、吟遊詩人、護衛)■

腰までの銀髪(奇麗なのでセレネに女装させられてしまうことも‥‥)、アイスブルーの瞳。

セレネに出会うまでは、気に入った者の生命を奪うことで充足感、高揚感を得てきた困った男。『蓬萊の玉の枝』の継承者で、隠遁・隠密力を司る白銀色の魔力を持つ。



■ギリム・マイアロフ(神殿司)■

セレネの同級生。神殿では、魔力視と視力両方の確保のため片眼鏡モノクルスタイル。鬱金うこん色の瞳。前大神殿主の息子。

魔力を操る力は群を抜いているが、彼自身に色を持った魔力は無い。



■イシケナル・ミーノマロ(公爵)■

特異な魔力「魅了」で人心掌握に優れ、若くして公爵位を継いでいる。20代半ば。

紫紺の髪に鮮やかな紫の瞳。魅了体質が強すぎるためあまり表に出ない。フージュ王国先代国王の姉を祖母に持つ。祖父は王立貴族学園長のクロノグラフ・ミーノマロ。『燕の子安貝』の継承者で、魅了を司る紫色の魔力を持つ。



■バネッタ・ニスィアン(伯爵令嬢)■

セレネの同級生。友人になれた!とセレネは信じている。教室で最高位の爵位を持つ。利用できるものは利用するが、認めないものには心を開かない。



■スバル・エクリプス(騎士爵)■

セレネの同級生で親友。一括りにした長いはしばみ色の髪。自身が剣をふるって武功を立て、騎士爵を得ている。



■ユリアン・レパード(男爵令嬢)■

3年生。レパード男爵家18女。赤みがかった金髪のゆるふわウエーブで、大振りなリボンでハーフアップに髪をまとめている。薄紫の瞳に、眉と睫毛は髪とは違って生来の煉瓦色。魅了の魔力を持つが、王子曰く「微弱な魅了」であり、ドッジボール部員達にも効かなかった。男爵からの指示と、自らの成り上がり志望から、学園内の高位貴族や見目良い令息獲得を狙う。



■アポロニウス・エン・フージュ(王子)■

12歳(1年生)、金の組み紐を編み込んだ胸までの艶やかな黒髪。父は国王のデウスエクス・マキナ・フージュ。



■カインザ・ホーマーズ(騎士団団長令息)■

1年生。王子の学友兼護衛担当。ユリアンに次いでイシケナルの魅了に掛かった。現在は解けているが、ユリアンと、婚約者であるメリリアン・ジアルフィー子爵令嬢(飴色サラ艶ストレート髪)の間で「俺のモテ期キタ―――!」と浮かれていたが、1ケ月後の『文化体育発表会』までにケジメをつけるよう、王子から宿題を出されている。



■ロザリオン・レミングス(宰相令息)■

1年生。フージュ王国宰相の嫡男。王子の学友の一人。その他、公爵家令息も居る様だ。



■ムルキャン(前・大禰宜)■

グレーの髪のテラス程の年齢かと思われる男。自身は大した魔力は持たないが、ミワロマイレの有り余る魔力を利用、操作していた。自己顕示欲は高いが、中間管理職であり、鬱屈した感情が溜まっていた。

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