フラグメントはきらめいて

卯月ゆう

プロローグ

***

 会場の明かりが人々の姿を照らしている。


 それは健闘を称えるために優しく包み込んで。

 それは勝者を決めるために強く影を作り出して。


 ステージでは司会を務める女性があふれる笑みで語っている。


「ついに今日この日を迎えられました。

無事に開催出来まして安堵しております」


 今日、この日。

 参加者は都心のイベントスペースに集まった。

 表彰式の時間を迎え、中央のステージに集合した者は皆静かに会場に視線を注いでいる。


「......皆さまが作っているゲームを公開する場を提供したい、手にしている<原石>を光らせてあげたい。

その考えから企画が生まれ、今回初の開催となりました」


 原石。その言葉にわくわくを感じる。

 この日のために作り上げてきた作品を見てもらうために、その自信作でトロフィーを獲得するために。そのために日々技術を積み重ねてきたんだ。


 そう、ここはアマチュアのゲームクリエイターによる祭典、<ゲームクリエイターズMtgミーティング!>。


 僕は隣に座っている先輩の姿をちらりと見た。

 彼女の瞳は、まるで宝石のようにきらめいている。自分の優勝を信じているからこその光だ。

 僕が今ここにいるのは、彼女に出会ったから......。


 このストーリーは、夢追う人々の軌跡。

 そのはじまりは、赤ずきんとの出会いだった。


「それでは、発表いたします!

大賞は......」


 ・・・


 小さな鳥が空を飛んでいた。

 彼女は立ち止まって、胸の前で手を握りしめる。顔を上げて、澄んだ晴れ渡る青空に誓いをあらたにした。その姿を、爽やかな風が通り抜ける......。


 彼女の手の中に眠るのは、小さな<断片フラグメント>。


 生まれたばかりの夢の欠片が。少しずつ形を成して、結晶になろうとしていた。


 情報の網が世界中を駆け巡る時代で、僕は彼女に出会った。

 レンズの向こうに広がる美しい瞳に僕は惹きこまれて、プログラムの世界に足を踏み入れる。

 ......今、たしかにフラグメントはきらめいて。

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