あの女の子たちは絶対カップルに違いない!
システムロンパイア
花奉ミコと奏ノ宮クウの場合
わたしたちの結婚式
「今から、わたしこと
その一言で会場が瞬く間に沸き立ち、スタンディングオベーション。白いウェディングドレスに包まれたミコに、なぜかマイクを奪われて四つん這いになっていた司会役も「イェーイ!」とはしゃいでいる。同調圧力こわい。
主賓席から右を見れば、うちの親父とミコのお父さんが肩を組んで泣きながら酒をあおっているし、お母さんコンビは「今はそういう時代なのねぇ」と満足げに受け入れている。
左手側に参列した高校の同級生のみんなの中には「わしが育てた」とか言ってる師匠面のやつもいるし、手を繋いで頬を赤らめてる女の子たちもいる。
――なんだこの地獄絵図。まともなのは私だけか。
この国では自分の結婚を妥協した人が八割近くいるらしい。わたしもなんとなく受け入れた相手の、プロポーズをなんとなく受け入れて、なんとなく結婚して老いていくんだろうなぁってずっと思ってた。
でもその相手が女の子になるとは思っていなかったし、ルームシェアしてたミコがわたしに「そろそろ結婚しようよー」って言いながらまとわりついてきた時には「今日の朝ごはんはフォルマッジピザにしよう」とか考えていたし、だからつい口から出た「いいね」って生返事を返しただけで、ここまでとんとん拍子に事が進むとは思っていなかった。
――え? そもそもこの国で同性婚とか無理だよね?
って昨年改正した古い常識を、結婚届けを出し終わった後に気づいた時にはもう遅かった。てか普通に受理してる役所の人に血の気が引いた。
というかプロポーズもだけど、寝起きがめちゃくちゃ弱いワタシの生態を利用されたと思う。これもう半分犯罪だろ。
「えーと、うちらの馴れ初めなんだけど、高校で出会いましたー、どうやって仲良くなったのかは――おしえなーい!」
それからミコは「二人だけの秘密だよね」と言わんばかりのウィンクをこちらに向けた。正直はっ倒したい。
私たちのそんな以心伝心になぜか会場は「てぇてぇ」とかいう空気に包まれてるし、父親たちは「えーしりたーい」となぜか体をクネらせたオカマと化してる。もうこの世界はダメなのかもしれない。
でもそのかたわらで「ミコのドレス姿、綺麗だな」と思ったりする自分もいるわけで。一番初めにもうダメになっていたのは、実は自分の方だったのかもしれない。
口を閉ざしたミコの代わりに、ワタシはぼんやりと自分の高校生活を思い返していた。
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