支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
第47話勇者パーティの末路(ケース3 勇者アーサー)
第47話勇者パーティの末路(ケース3 勇者アーサー)
何故こんなことになった?
俺は暗い地下牢の中で一人自問自答する。
何故だ?
あんなに上手く行っていた過去最速レベルアップの勇者パーティを率いていた俺が何故?
皆に崇めたてられ、崇拝されて然るべき勇者である俺が?
何故だ?
……レオを追放した……時……から、か?
ブルブルと顔を振る。俺は一体何を考えているんだ?
一瞬浮かんだ考えを全力で否定する。
俺が間違いなんて犯す訳がない。
やつはただの足手まといだ。
そこに揺らぐものなんて微塵もない。
自分の愚かな考えにゾッとした。
「ヤツだ。ヤツが卑怯な手を使って、俺を陥れたに違いない」
気がつくと、頬に涙が伝う。
ヤツめ、逆恨みで、散々あちこちで汚い手で俺を嵌めたに違いない。
信じがたい悪行!
勇者である俺に!
俺がこんな薄汚いところで!
既に勇者アーサーは精神を壊しているのだろう。
普通に考えれば自業自得だ。
それをレオに陥れられたのだなど、レオは何もしていない。
彼は主人であるアリスに従い、アーサーのことなど、既に忘れている。
アーサーが勝手に落ちぶれただけだ。
勇者アーサーは聖女アイリス殺害の罪で捕えられた。その上、魅了の魔法を使って、剣聖エミリア、魔道士ルビー、そして何の罪もない女性達を魅了し、毒牙にかけ、多くの者を不幸にした。
もっとも、エミリアとルビーはわかっていて、自ら進んでという点はあった。
アーサーはこの国の王子であり、二人は勇者パーティの立場を利用して私利私欲を満たしていた。他の女性に罪はないが、この二人は魅了の犠牲者とは言えなかった。
「レオめ! 神を恐れぬ愚か者! 必ず天罰が下るぞ!」
「ウルセェ! 黙れ新入り!」
隣の牢獄の囚人が怒鳴る。
ウルセェだと? お前の方がウルセェ!! 殺されたいのか!!
しばらくすると音が聞こえる。
役人の靴音だった。
「これが勇者でありながら破廉恥な魅了の魔法でたくさんの人々を陥れた卑怯者か?」
「はい。少なくと10人もの魅了犠牲者の女性が自殺するに至っております。しかも、それだけでは無く、我が身かわいさに聖女アイリス様を蹴飛ばして身代わりにして殺害するという暴挙。他にも冒険者数名がやはり身代わりに使えわれて、殺害、その10名」
は?
女が10名?
冒険者が10名
聖女如きがなんだ?
「お前ら何を言ってやがる! 聖女一人や、女10人や冒険者ごとき10人やそこらの命と俺の命のどっちが重いのかがわからんのか?」
「この男は白痴なのか?」
「どうもそのようでして……」
白痴?
白痴はテメェらの脳みそだろう?
俺の命がたかが100人やそこらの人間などより軽い訳がない!
「お、俺は王子であり勇者だ! 神に選ばれし者だ! そ、それをぉ!」
「抵抗するんじゃない!」
バキバキと役人に殴られる。
チキショウ。
魔道具で本来の力が抑えられていなければ、一瞬で首を刎ねてやるのに。
アーサーはその力を魔道具によって、レベル1まで落とされていた。
しかし、何度か役人が来たが、今回は様子が違う。
「さあ、出るがいい」
そう言って、俺を牢獄から出した。
そうか!
流石に低脳な父上(国王)も俺の価値がようやくわかったか?
聖女一人殺した位、シエナでも死刑にして誤魔化せばいいだけだろう?
いや、おそらく女神が顕現してヤツに正義の制裁を加えたのだろう。
思わず笑みがこぼれる。
「笑ってるよ」
「きみが悪い男だ」
何、安心しろ。
釈放されたらお前らを真っ先に殺してやる。
そう考えて、久しぶりの空の元へ出る。
すると。
「この卑怯者!」
「クズ! てめえは人間じゃねえ!」
信じがたいことに俺に石礫を投げつけるヤツらが俺の周りを取り囲んでいた。
「貴様ら! 正気かぁ! 俺は勇者だぞ! そんなことをすれば天罰があたるぞ!」
俺の忠告も聞かずに、ヤツらは俺の顔を見てせせら笑うような笑みを浮かべる。
なんだよ、その顔は?
ありえねぇだろ?
コイツら正気なのか?
しかし、俺を取り囲む男には見覚えのあった。
ははっ、コイツら。
俺に女を寝取られた間抜け達じゃねえか!
これは逆恨みじゃないか?
「お前ら、今に見ていろ、釈放されたら、必ず仕返ししてやるからな! 天罰だと思え!」
だが、ヤツらはなおも歪んだ笑みを浮かべ続ける。
「お前ら、今に見ていろ! 必ず天罰が下るからな!」
俺は負け犬共に勇者の風格を教えてやった。
ニヤリと王者の笑みを浮かべる。
負け犬の遠吠えの歪んだ笑みじゃねえ。
「これから処刑されるお前に何が出来るんだ?」
「こいつ、卑怯者の上、頭おかしいじゃないか?」
はっ!?
お、俺が死刑?
コイツら馬鹿か?
俺はこの国の王子であり、勇者だぞ?
そんなことはありえん。
この不当な扱いから逃れられたら、必ず、コイツらの方を死刑にしてやる!
「お前のおかげでエミーは死んでしまった」
「俺の妹も自ら命を絶った」
はっ?
何言ってんだ、こいつら?
そして、更に連行されて連れられて行く。
「さあ、ここで私の役割は終わりだ」
何?
終わり?
役人の言葉に俺は久しぶりに俺らしい余裕の笑みが浮かぶ。
そうか、どうせ、困っていまさら俺に助けてくれとか言うんだろう。
嫌だね。
速攻で首を刎ねてやる。
レオも目の前でシエナを散々犯した上で殺してやる。
あいつ、絶対シエナのこと好きだぜ。
俺にこんな扱いをした報いを必ず受けさせてやる!
「さあ、この扉を開けて広場に出るんだ」
そうか、広場で俺の活躍を高らかに宣言して名誉を回復する手筈だな。
俺は心躍らせて、広場への扉を開けた。
すると。
盛大な歓声と罵声が聞こえ、目の前にはギロチンが。
「な! お前ら気は確かか?」
しかし、観衆から上がった声は。
「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!!」」」
何故かは知らんがな、民衆ごときが俺を殺せとか訳わからん。
しかし、ここは慎重に対応しないと本当に死刑になってしまう。
屈辱だが、民衆に俺の無実を訴えるしかない。
「みな! 聞いてくれ。俺は確かにたくさんのどうでもいい女を魅了して使い捨てたし、冒険者のヤツらは生意気だからあえて見殺しにした。それは価値の低い人間を有効に使っただけなんだ。俺はな勇者なんだ。この世界に絶対必要な存在なんだ。何故こんなことになったのはわかっている。お前達に罪はない! みんなあの落ちこぼれのレオが俺を嵌めたんだ! さあ、早く俺を助けろ!」
民衆はすっと静かになった。
ちょろいな。
俺の演説に心打たれたか?
「こ、コイツ頭おかしい」
「こんなヤツ早く殺せ!」
「よりにもよって英雄のレオ様のせいにするなんて!」
「俺の恋人はコイツに奪われて……なのにどうでもいい女なんて!」
「俺の兄は立派な冒険者だった。なのにこんなヤツのために!」
ごくりと唾を思わず飲み込む。
だめだ、こいつら馬鹿だ。
勇者の俺の言うことがわからないなんて。
「た、頼む! みんな、あのあくどいレオに騙されているんだ。ヤツが俺を陥れようとしているんだ!」
「いつまで訳のわからんことを言ってるんだ?」
「た、頼むから! 俺を助けろ!」
「そんなに偉そうに言うことか」
「お、お、おねが……い……し、お、お、おねねがい……し……ます!!!!!」
俺に話しかけた男が微笑む。
俺の誠意が通じたんだ。俺は助かったんだ!
「ところで、お前、俺の顔を覚えているか?」
「知らん、お前如き矮小な存在などいちいち覚えている訳がないだろう?」
「ああ、俺はそんな存在なのか……俺は辺境伯だ。俺の婚約者はお前に寝取られて、魅了の魔法が解けた途端、罪の意識に耐えきれず自害した。俺は婚約者を許すことができただろう。だが、彼女自身が自分を許せなかった! 俺は、お前が絶対許せない!」
「そ、そんなの! 勝手に死んだだけだろ! 俺には関係ない!」
「お前になくても、俺たちにはあるんだ。ここに集まっているのはお前に妻や、婚約者や、恋人を奪われて、大切な人を亡くした人達の集まりだ。国王陛下からは処刑前に何をしても構わんと言われている、ふっふふふふふ!」
「や、止めてくれぇ!!!!!!!!!!!! こいつ、頭おかしい!」
「貴様はこれから俺たちになぶり殺しになって、いや、死なない程度に痛めつけた上、そのギロチンで処刑する。まずはそのお粗末なポークビッツあたりを切断するかな?」
「や、止めてぇ、しゃめてくださいぃぃ。いやだ、死にたくないです、ころさないで」
「……やれ」
辺境伯の声に従い集まった男達に血祭り上げられるアーサー。
散々痛めつけられた彼はほんの1時間も生きてはいなかったが、死んでもなおも怒りに満ちた人達の心を収まらず、ボロボロの死体となったアーサーに形ばかりの死刑が執行される。
死体の首をギロチンに括りつけて、そのギロチンが落ちてきた。
転がった首はその後、男達によって、サッカーの試合に使われた。
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