第36話支援職はエルフの里を救う4
俺はクロエを伴ってさらにダンジョンの奥に進んだ。
流石にあの状況で嘘を言うとも思えないし、100人以上の捉えたエルフの人々を隠す場所はこのダンジョン以外にあるとは思えない。それに俺の探知のスキルに感がある、だが。
「!?」
「どうしたのね? レオ様?」
「どうやら、醜悪なヤツがまだいるらしい」
どうやらこの先に広いスペースがあり、そこに大勢のエルフの人達が捉えられているぽい。
しかし、そこへ続く小部屋で……
「ろくでもないことが行われているようだ」
「ろくでもないこと……なのね」
クロエの声がしずんだ。察したのだろう、ドアの向こうからうめき声が聞こえた。
怨嗟の声も。
俺はドアを蹴破った。
そこは拷問場だった。
吊るされた女性がまさに手足を切断されようとしていた。
「いーひっひっひぃ! 人をあんこう鍋みたいにするのはたまらんな」
「ああ、それもたっぷりと犯した女をこうすると余計昂る!」
ゲスの極み。
それがそこにいた。
身なりからそれなりの地位の貴族か何かだろう。
それがボロボロな衣服の女性をゴミクズのように扱っている。
女性からは性臭がした。
この男達二人の臭い匂いと一致する。
「ゴミは処分する……か」
「でも、この人達は人間なのね?」
「こいつら……貴族だ。法で裁けるとは思えん」
「さ、裁けないのですの? 右の人! この人はそこでバラバラになっている人を殺したのね」
「クロエは一旦ドアの奥へ戻れ」
俺はクロエをドアの向こうへと言った。いや、これから俺がやることを見せたくなかった。
床には切り刻まれた女性の遺体があった。ナイフで刻まれたのだろう。そして右の男は笑いながら、ナイフを手にしている。
「クロエ、早く奥へ」
「わかりましたのね。レオ様」
そう言って、ドアを開けて、もと来た道に戻る。
「へ?」
「は?」
俺達の存在に気が付いてようやく間抜けな声を上げる貴族達。
「だ、誰か! 賊だ! 賊が出た!」
誰が賊だ?
「さあ、人を面白半分に切り刻んだ罪、貴様ら自身にも刻んでやろう。他人の幸せを踏みにじっておいて、自分たちだけのうのうと生きて行けるなんて思うんじゃねえ!」
啖呵を切った俺の前の貴族と思しき二人の後ろの扉から黒装束の半魔族が続々と湧き出て来る。
「……ッ! お、お前ら! 早くこいつらを殺せ! いきなりそこの壁から出て来やがった!」
「我らにお任せください。アストレイ伯爵 」
「おお! 頼むぞ。だが、奥の通路に隠れている女の方は生きてとらえろよ」
「承知」
何故クロエだけを生きて捉えるかは容易に察しがつくが、こいつが首謀者のアストレイ伯爵か?
「死んでもらいます。この人がどうなってもいいのですか?」
先頭の男は一緒に一人の女性のエルフを連れて来ていた。
「た、助け……て」
顔色には絶望が浮かんでいた。
先頭の男はリーダーなのだろう。
一番前に進み出て、女性の首にナイフを突きつけていた。
「さあ、動くとこの女の首を掻っ切りますよ。どうします?」
卑怯だな。
俺が罪のない人に危害が及ぶのに黙っていられる筈がない。
「さあ、その物騒な剣をこっちに投げなさい。そして手を上げて降参しなさい」
俺は剣を前に投げる。
そして手を上げて降参の姿勢をとる。
「ふふふ、どうも正義の味方という奴らはこういう方法が良く効くと見え……え?」
男は突然驚いた。
俺が手を下ろし、剣を拾おうとしたからだ。
「何を勝手に動いているのですか? この女を殺しますよ?」
「どうやって殺すんだ?」
「このナイフで首を掻っ切るに決まって? え? な! ない? ナイフがない?」
男にはナイフがなかった。いや、そもそも手首がなかった。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」
俺はステルス魔法を使っていた。俺の収納の中で、風の符術を発現させた。当然、魔法陣は見えず、とうの本人すら気が付かないうちに、風の刃の魔法で男の手首を切断した。
「な、ない! 俺の手がない!」
俺が剣を構えると。
「……ッ! お、お前ら何をしている! こ、こいつを殺せぇ!」
「はッ!!」
加速のスキルを使い、俺に切り掛かる賊、5名。
「死ねぇぇぇぇぇえ!!」
次の瞬間。
「へ? ま、待っッ!」
ズシャ!!
5人は一瞬で粉々の肉片に変わる。
そして、先頭の男の頭がコロコロと俺の足元に転がって来る。
「は?」
「ま、待って殺さないで!」
ただ驚く者、戦力の差を理解して慈悲を願うもの。
だがな。
悪人に人権はない。そもそも、こいつら人間じゃない。故に処す。
俺は足元の男の首を無造作に掴んで持ち上げると、先程の卑怯な男に向かって投げた。
「ま、待ッ!」
「なぁ!」
「どへぇ!」
「ほげッ!」
ドンという音速の壁が破られる音と共に固まっていた残りの賊が一瞬で肉片に変わる。
残りの全員は木っ端微塵に爆散して血潮がドアに吹き飛ぶ。
ビシャ!
ドア一面が真っ赤な肉片と血に染まる。
人質の女性は加速の符術で一瞬でこちらの元に保護していた。
「ヒ、ヒィ!」
「た、助けてぇ! 誰かぁ!」
そして貴族達二人が残った。
「さあ、残りはお前ら二人だな。今、その女の人を切り刻もうとしていたな? お前らに逆の立場を教えてやろうか?」
「や、止めて、止めてぇ!」
「い、いくらだ? いくら欲しい? それとも女か? なんでもやるから、だから!」
フッ。
「お前らと一緒にしないでくれよ」
俺は貴族の一人に近づくと、まずはその手を捻り上げた。
「い、痛い。痛い!」
「お前らはどうせ少しづつ刻んだんだろう? なら同じことをしてやるな」
ボキ。
まずは指の骨を一本折った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
全くうるさいやつだ。
四肢を切断されるより余程マシだろうに。
「言っただろう? 人を面白半分に切り刻んだ罪、貴様ら自身にも刻んでやると? 他人の幸せを踏みにじっておいて、自分たちだけのうのうと生きて行けるなんて思うんじゃねえ!」
「た、頼む! いっそ、一思いに殺してぇ! お、お願いらから!」
「嫌だな。お前らそういう懇願を聞いて、今までどうして来たんだ?」
顔が曇る貴族。
やっぱり、命ごいも懇願も無視して、いたぶり殺したか?
ならば、同じ思いをさせてやった方がいいだろう。
俺は恋人繋ぎで貴族の手を握る。ニヤリと笑いながら。
何をするのか察した貴族は泣き喚く。
「や、止めて、止めて! お前正義の味方なんだろ?」
すまんな。
俺は別に正義の味方じゃない。
むしろお前らに近いのかもな。
虐げられた奴隷の気持ちなんて、真っ黒なものに決まっている。
バキバキバキバキ。
俺は手をぎゅっと握って貴族の指を一気にへし折った。
貴族の掌から骨が見える。
「あ! ふ! や、止めて。こ、殺して……おねがいらから」
「そうは行くか!」
俺は貴族の右手を掴むと……。もいだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ! なんで私がぁ!」
なんでだと?
わからんのか?
俺は右手の次は左手をもいだ。
「あぷ、かぁは。し、死ぬ。や、やめ。こ、殺して。殺してください。お願いらから」
両手をもがれてもしばらく人間は生きているようだ。
じきに死ぬだろうがな。
「……お願いらから」
貴族ははいつくばって懇願して俺を見上げた。
「わかった」
そう言うと。
ベシ。
俺は貴族の男の頭を踏み潰した。
ピクピクと痙攣しているが、即死だろう。
こいつは被害者に一度でも慈悲を与えたとは思えんが、さすがにこれ以上はな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます