エピローグ
ある夜、グラネロ砦の居室。
マルヴィナは、眠れずにいた。
ビヨルリンシティでの結末のあと、すぐにまた新大陸への渡航準備に忙しくなるのかなと思っていた。だが、グラネロ砦に帰ってくると、日程も意外と余裕があった。
それがかえってまずかったのかもしれない。
不安な気持ちがどんどん、どんどんと大きくなっていく。はたして、ゴンドワナ大陸に渡って自分はやっていけるのか。どんなモンスターが待っていて、自分はそれに対して何ができるのか。味方は確かに強い。だけど……。
そんなことを考えていると、マルヴィナは自分がずいぶん遠いところに来てしまったように感じた。小さな島、カロッサからローレシア大陸に出てきて、そしてまたそこから旅立とうとしている。
そして、ふと思った。
意外と自分は頑張ってきたのではないか。
多少なりとも魔法を使い、全体の勝利に貢献したのではないか。確かに、国王だとかギルド長だとかいうレベルの貢献にはぜんぜん足りないかもしれない。ふだんはやっぱり演技というか、ほとんどはったりでその役を演じている。
でも。
でも、それ以前の自分と比べたら、ぜんぜん頑張ってきたんじゃないか。
そうやってことさら自分のことを鼓舞しないと、大きなプレッシャーに押しつぶされそうになる。真のマルーシャ姫の言うことが信用できないわけではない。マルーシャ姫にはその能力がありそうだ。
だが、皇帝?
帝国?
あまりに次元が遠すぎて、まったく想像できない。
だけど……。
そう、だけど、やっぱり思うのだ。
あの退屈だった学校の日々。そして、そこから見える未来。おそらく、とても退屈な仕事に就いて、一生そのままだっただろう。カロッサが悪い場所というわけではない。だが、カロッサだろうが、ローレシア大陸に出稼ぎで働いていたとしても、おそらく自分は退屈な仕事に日々を追われていただろう。
そして、そのまま一生を終えていただろう。
そういった灰色の日々を送ることに比べたら、多少緊張感があったほうがぜったいにいい。
だって、そもそも学校とか会社ギルドとか、自分には合ってないのだ。
もうこれは体質だ。遺伝だ。絶対そうだ。
マルヴィナは、自分にそう思い込ますことで、なんとなく前向きになれそうだった。
じゃあ、行こう、新たなファンタジーの世界へ。
マルヴィナ戦記2 氷雪の歌姫 黒龍院如水 @Josui
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