第4話 お願い1つ目


 聖女様、御園の喋りは主人公相手に丁寧語になったり

 砕けた話し方になったりします。




 〜〜〜


「お兄ちゃんっ。おはよう!」


「?? おはよう」


 朝リビングに降りてくると由希がやけに楽しそうに挨拶をしてくる。


「なにかあった??」


「ふふふ。例のお願い決めたんだぁ」


「それでそんな悪い顔してるのか」


「悪い顔とはなによっ!プリチィでしょ?プリチィ!」


「はいはい。で…お願いとは?」


「んふ。えっとねー」



 そのお願いを聞いた俺は朝から頭を抱えるのだった……。





「おっはよう。由良くん」


「おはよう。小林さん」


「なんでそんな浮かない顔してるの?目は見えないけど」


「まぁ、ちょっとね」



 前髪のせいで誰も話しかけてこない陰キャラとなっている俺だけど小林さんと喋っている光景にもクラスのみんなは早くも慣れた様だ。

 初めの頃は視線がびしびし突き刺さってたけど今ではそれも少なくなっている。


 まぁ一番視線を感じるのは御園からなんだけど。




 放課後



「ねぇ。今日は暇?由良くん?」



「昨日行かなかったの?」



「うん。由良くんと行きたいって言ったじゃん」



「あー、荷物持ちね荷物持ち。小林さんなら他の男に頼んだら即オッケーしそうだけど」



「あはは……下心丸出しで来られるのはちょっとなぁ」

「その点由良くんは安心安全人畜無害って感じじゃん?」


「……まぁ下心はないけど」


「だよねぇ。私的には由良くんなら良いんだけど?」


「ひぁっ……!」


 耳元で囁かないでくれっ!

 なんなんだもう……。

 小林さんはよく揶揄ってくるけど反応に困るのでやめて欲しい。

 それを楽しんでるんだろうが……。



「それで今日だけどお暇?」


「あー、今日はちょっと」


「何かあるの?」


「不本意ながら」


「……私と買い物行きたくないって訳じゃないよね??」


「うん。本当に用事。荷物は持ちたくないけどね?」


「なになに?彼女とデート??」


「いや居ないって」


 揶揄ってるだけだろう。

 こんな見た目のやつに彼女なんている訳ないんだから。


「髪切りに行くんだよ」


「えぇ!?髪!?」


「罰ゲーム的なあれでね」



 罰ゲームというか妹へのセクハラの罰だけど。


 がたんっ

 勢いよく立ち上がって此方をじっと見てくる御園。

 聖女様がそんな行動をするもんだから周りは何事かと静かになる。


「髪、切るんだぁ?」


「あ、うん……」


「ふーん?」


 なんでそんな悲しそうな顔に??

 御園、俺の髪、をキーワードに頭の中に検索をかけてみると

 ふと思い出した。

 あー、でも流石にもう良くない??


 御園が前を向いて座ったと思ったら俺のスマホに通知が入る

 御園からだ。


『約束忘れたんですか?』


 ごめんなさい思い出しました……。



 約束、とは

 セフレを解消する時の条件の一つ

『前髪は切らないで』 だった。



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