第2話

なんせ、見たことがないんだから。


「近藤先輩は、どこか肝試しに行くんですか?」



「ん? あぁ、もちろん」



あたしの質問に近藤先輩は満面の笑顔で頷いた。



「地元にある地蔵坂って知ってる?」



「あ、あたし知ってます!」



栞がすぐにそう返事をした。



オカルト部に所属していなくてもきっとみんな知っているだろう。



とても有名な場所だった。



「毎年夏休みにはそこに行くことにしてるんだ」



「毎年行ってるんですか?」



渚が驚いたようにそう聞き返した。



「あぁ。毎年行って写真も撮って帰って来るんだけど、何も写ってないんだ。あそこは偽物っぽいけど、雰囲気は味わえるからなぁ」



近藤先輩はそう言い、ペラペラを雑誌をめくって眺めている。



「そうなんですか……」



あたしは残念に思ってそう呟いた。



地蔵が100体並んでいると言われる地蔵坂。



地蔵坂の周囲は森で囲まれていて、奥へ進むにつれてその道は細く、そして険しくなっていくらしい。



その坂を上っている最中に女のうめき声を聞いたとか、地蔵が動いたとか。



そんな噂をよく聞いていた。



「まぁ、心霊現象なんて人間の心理が引き起こしている幻覚と幻聴がほとんどだと思うけどな」



近藤先輩の言葉にあたしたち3人はため息を吐き出した。



「そんな現実的な事を言わないでください。あたしたち、まだオカルト部に入部したばっかりなんですよ?」



栞がそう言うと、近藤先輩は「悪い悪い」と、頭をかいた。



「でもまぁ、ガチでヤバイ場所もあるにはあるけど……」



近藤先輩はそう言い、雑誌を閉じた。



どこからかヒヤリとした空気が肌を撫でた気がした。



「それってどこですか?」



栞がすぐに身を乗り出して話を聞きたがる。



「意外と身近にあるんだけど……」



近藤先輩はあたしたちを順番に見て行く。



「絶対に行かないって約束できるか?」



予想外の言葉にあたしたちは返事に困ってしまった。



オカルト部の部員が心霊スポットに行かない事を約束させられるなんて、思ってもいなかった。



行きたい。



という気持ちの方がずっと強いけれど、ここで約束しないと心霊スポットを教えてもらうこともできない。



「約束します」



あたしはそう返事をした。



「絶対だぞ? 今から教える場所は本気でヤバイ所なんだ。素人が足を踏み込んでいい場所じゃない」



念を押して来る近藤先輩に、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。



それほど危険な場所がこの街にあるなんて、思ってもいなかった。



「早く、教えてください」



栞が目を輝かせてそう言った。



近藤先輩は周囲を確認し、そして声を小さくしてこう言った。



「椿山高校の旧校舎だ」

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