追放冒険者は努力の果てに成り上がる

やみあるい

追放冒険者は努力の果てに成り上がる

「お前をパーティーから追放する」


 ある日の冒険者ギルドにて。

 少年クノは、自身が所属するパーティーのリーダーであるカイルから、唐突にそう宣言された。

「な、なんで……?」

「お前が弱いからだよ」

 その言葉は、クノの心に強く突き刺さる。

 何故ならそれは、ずっとクノが心の奥底で感じていた事だったから。

 自分は弱い。強くなろうという思いはあった。強い冒険者になるというのは、クノが目指した夢だったから。それ相応の努力もしている。休日にはパーティーメンバーたちに教えを請い、剣の素振りや魔術の手ほどきを受けていたし、冒険者に必要な知識を得るために冒険者ギルドの図書室で魔物の生態やダンジョンについて学んだりもしていた。

 だが、いざ実戦となると、その動きは鈍く思うように身体は動かない。結局いつも、仲間たちに助けられて終わる。

 周りの仲間たちが着実に強くなっていく中でクノだけが弱いまま、何一つパーティーの役に立っていない。

 だから最近では、自発的に行っていたパーティーの細々とした雑務に力を入れていた。買い出しや武具の手入れ、ダンジョン攻略中の料理や荷物持ちなど。

 弱いならば弱いなりに、せめて自分が出来ることをする。そうして、何とかパーティーへ貢献できるように。

 雑用を率先して受けることで、仲間たちからは感謝され、自分の居場所を見つけたと、そう思ってもいた。でも、どうやらそれは間違いだったようだ。

 カイルの周りには他の仲間たちもいたが、誰もカイルの宣言を否定しようとはしてくれない。

 戦士ラガン。魔術師ソウヤー。神官ラファン。斥候リカルド。

 クノは彼らに弱々しい視線を送るが、彼らはクノと目が合うと気まずそうに視線を逸らす。

「み、みんなも僕がいないと。ほ、ほら、料理はどうするの? みんな美味しいって言ってくれたよね。ダンジョン内でこんな美味しい料理が食べられるなんてラッキーだって。それに武具の手入れだって、買い出しだって……、荷物持ちだって僕が……」

 段々とクノの声は小さくなっていく。

「そんなもの、お前に任せなくたって、他の奴らがやればいい。どうせ誰にでも出来る雑用だ」

「そ、そんな……リカルド兄? ラファン姉?」

 クノは仲間内でも特に慕っていた二人へ、震える声で呼びかける。

 しかし。

「……お前は、いらない」

「……クノ、ごめんなさい」

 二人は一瞬悲しそうな顔をした後、毅然とした態度でそう告げた。

「う、うそだ。そんなの……そんなことって……」

「全部、本当のことだ。俺たちはこれからも、上を目指して危険なダンジョンへ挑戦し続ける。そんな俺たちグノンの輝石に、弱いお前は必要ない」

 クノの目に涙があふれてくる。

 夢だった強い冒険者になれず、それでも必死にパーティーに残ろうと、冒険者であろうと頑張ってきたのに。全てはこの瞬間に、砕け散ってしまった。

 呆然と立ち尽くすクノの隣を抜けて、仲間たちが去っていく。

「ま、待って。待ってよ、僕を置いて行かないでっ」

 追いすがるクノの手を振り払い、カイルが言う。

「お前がもし、俺たちと肩を並べられるくらいに強くなったら、その時はまたパーティーに加えてやるさ」

 それは、これまでどれだけ努力を繰り返しても弱いままだったクノにとって、永久追放に等しい言葉だった。

「ああ、そうだ。お前に持たせていた荷物は、餞別に全部くれてやるよ。どうせゴミしか入ってねえけどな」

 そんな捨て台詞を残して、カイルもまた冒険者ギルドから去っていく。


 冒険者ギルドにいた他の冒険者たちや、冒険者ギルドの職員たちは、勿論その光景を見ている。しかし、誰も残ったクノに声をかけることはしなかった。優しい慰めの言葉は何処にもない。何故ならば、冒険者たちの間でパーティー追放などというのは、よくあることだったから。


 そうしてその日、少年クノは冒険者パーティー、グノンの輝石を脱退させられたのだった。





 今を時めく新進気鋭のCランク冒険者パーティー、グノンの輝石。

 彼らはグノンという辺境の村の出身者たちで構成された、所謂、幼馴染で作り上げたパーティーであった。

 最年長であるリーダーの剣士カイルに戦士ラガン、魔術師ソウヤー、神官ラファン、斥候リカルド、そして最年少の荷物持ちクノ。

 皆で同じ夢を持ち、冒険者となることを目指して村を出た。

 冒険者のパーティーとしては、オーソドックスなものの一つと言えるだろう。


 パーティー名の輝石は、辺境の村グノンのほど近くにある山からごくまれに取れる綺麗な石のことを意味する。それほど高価というわけでは無いが珍しく綺麗な石で、たまにやってくる行商人に渡せば、夕食が少し豪華になる程度の価値。

 だが、それは子供たちにとって、何よりの宝物だった。

 山の近くを探し回って、それを見つけた時の感動は何物にも代えがたい。

 その初心を忘れないために、彼らはそれをパーティー名としたのだ。


 Gランクという子供のお使いレベルから始まり、皆で努力を繰り返してランクを上げていった。

 初心者ランクを脱した日の事、初めて魔物の討伐依頼を受けた日の事、ダンジョンへ初めて踏み込んだ日の事、強い魔物に襲われて命からがら逃げた日の事、露店でガラクタを掴まされた日の事、初めての大金を稼いだ日の事、後から後から思い出が蘇っていく。

 辛く厳しいこともあったけれど、皆がいたから耐えられた。皆と一緒に冒険へ出掛けることが、何よりも楽しかったのだ。


 でも、そんな日々も今日で終わり。


 クノは暫く呆然とした後、荷物を持って冒険者ギルドを出た。

 そうして、いつの間にか定宿としている宿屋の前にいる。

 もしかしたら、まだ皆がいるかもしれない。もう一度、皆に会えれば、何かが変わるんじゃないか。

 そう願いながら宿屋の扉を開けたクノであったが、既に皆はそこを引き払った後。クノの借りている部屋は残してあったが、先払いしている宿代は明日で消える。そうしたら、クノもまたそこを出ていかなければいけない。

 何処へ行こう? 何処へ行けばいいんだろう?

 ぼんやりとそんなことを思いながら、クノは借りている宿の部屋へ戻った。

 荷物を投げ出して、ベッドに寝そべる。

 一人になってしまった。ただただ、空虚な気持ちだけが心にあった。でも、何か切っ掛けがあれば、また感情に流されて涙があふれてしまう予感もある。何も考えない事で、心を埋めていた。そうしなければ、様々な感情が入り混じって、おかしくなってしまいそうだったから。


 思えば自分には分不相応なランクだった。パーティーに加わっていることで、皆で受けた依頼の結果が反映されて、現在のクノのランクはCランク。でも、自分にはCランクの実力などありはしない。

 精々がEランク。駆け出しに毛が生えたと言われる者たちと同じくらいの実力しかない。

 クノは現在、十五歳。冒険者としてはまだまだ駆け出しと言っても、通じる年齢だ。

 五年も冒険者をやっているのに。冒険者歴だけは、同年代よりも積み重ねている。

 丁度五年前、村を出て冒険者になったグノンの輝石のメンバーたち。彼らの年齢が、大体今のクノと同じくらいだった。そう考えれば、クノの実力もそう悪いものではない。

 でもクノは、今のグノンの輝石の仲間たちと、共に歩んでいきたいのだ。

 思えば小さなころからずっと、クノは年上の仲間たちの背を追っていた。

 彼らが冒険者として旅立つと言った時も、絶対に自分も連れて行って欲しいと駄々をこねたものだ。優しい皆は、そんなクノをパーティーに入れて、ずっと守ってくれていた。

 最年少のクノは、いつだって皆に守られていたのだ。

 とうとう、愛想をつかされたのかな。沈んだ気持ちが、そんな結論を導き出す。

 気持ちはまだ空虚なまま。それでも何故か、涙が頬を伝う。





 クノが目を覚ますと、窓から差し込む光は茜色に染まっていた。あのまま、少し眠ってしまったようだ。気怠い気持ちのままクノは、宿の食堂に降りて夕食を食べ、また部屋へと戻ってくる。

 この先の事は何一つ、決まっていない。決めようという気持ちも湧いてこなかった。

 夢が、希望が、これまで築き上げてきた努力が、その何もかもが一瞬にして消えてしまったように感じる。

 眠ってしまいたい。そう思ったが、昼間からずっと眠っていたクノの身体は非常に元気だった。眠れる気配もない。

 その時、クノの視界に放り出された荷物が映った。

 荷物の整理でもしておこう。

 そう思ったクノは、クノが持たされていた唯一の荷物である袋を手に取った。


 そこでクノは、あることに気づく。


 カイルはクノへ、お前に持たせていた荷物は全部くれてやると言っていた。

 しかし、それは考えてみればおかしなことだ。

 クノの持つ荷物は、その袋だけ。大した量も入りそうにない小さな袋だ。

 でも、クノの仕事は荷物持ち。本当はもっと戦いに参加したかったけれど、弱い自分が戦いに出ても足手まといにしかならないから。と、それはともかく。

 荷物持ちはパーティーで使う荷物を持つのが仕事だ。

 当然ながらその荷物の量は、かなりのものになる。小さな袋一つに入りきる量ではない。

 通常ならば。

 そう。クノが持たされていたのは、通常の袋では無かったのだ。

 今の今までクノは、パーティーを追放されたショックで忘れていた。

 この袋が、中級ランクへと上がった記念にパーティーの資金をつぎ込んで購入した魔道具であると言うことを。


 魔法袋。一般的にそう呼ばれるその袋型魔道具は、時空属性の魔術が付与されており、見た目よりも多くの物を収納しておくことが出来る。

 流通している物の中には、ダンジョンから出土されたレジェンドクラスの魔法袋もあり、最高位の物になると城一つ程の物を保管でき、さらに中へ入れた物の時間の流れを遅くする効果までついているという。

 さすがにパーティーで購入したものは、レジェンドクラスの最高級品などではなく、人の手により作られた廉価版の魔法袋であったが、それだって安いものではない。

 時空属性を付与できる職人がまず少ないうえに、使われている素材も稀少で入手困難な物が多いのだ。

 当時は中級ランクに上がり、得られる報酬もぐっと上がっていたのに、購入にあたって暫く食費や宿代を節約し、パーティー全員で極貧生活を送っていたほどである。

 だが、それをしてでも購入しておく必要のある魔道具だった。

 中級ランクからは依頼される魔物の素材も大きなものが増えていくし、ダンジョン内で寝泊りする機会が増え、そのための準備にも多くの荷物を持ち運ぶことになる。

 これを購入することが出来た事もまた、グノンの輝石が躍進出来た理由の一つであろう。

 いわば魔法袋は、成功する冒険者にとって必需品とも言える代物なのだ。


 そんな大事な魔道具を、パーティーから追放する相手に手切れ金として持たせたりするだろうか?

 そう思った瞬間、クノは即座に魔法袋の中へ手を突っ込んでいた。

 クノの手には魔法袋特有の、かなりのアイテムが入っていた時の感触がある。

 クノは魔法袋の中から手に触れたアイテムをどんどん出していく。

 最初に出てきたのは、無骨な飾り気のない剣だった。

 一見すると、何の変哲もない鉄の剣。だがクノは、これに見覚えがあった。

 いつだったか、剣士カイルが自分の使う武器の予備として購入した剣だ。見た目は普通の剣だが、実はこの剣には少量のミスリルや竜の牙の粉末といった高級素材が使われており、それを触媒として鋭さや硬さを上げる魔術付与が施されている。剣自体に関しても、一流と呼ばれる鍛冶師に頼み込んで打ってもらった一級品だ。その仕上がりは、ちょっとした魔剣と言っても良い様なもので、新進気鋭のCランク冒険者であろうとも、おいそれとは手が出せない高級品。

 今、カイルが愛用している剣も悪い物では無いけれど、決してこの剣ほどではない。ずっと何故、こちらが予備なのだろう? と疑問に思っていたクノだったが、今、クノがその剣を手にしたことで、その疑問は解消された。

 驚くほどクノの手に馴染む剣の柄。重さもクノが振るのに丁度良く、明らかにクノよりも体格の良いカイルが使うには軽すぎる一品だった。

 クノはその剣をそっとベッドの上に置き、次のアイテムを魔法袋から取り出しに掛かる。

 すると出てくるわ、出てくるわ。

 重装備で防御を固めた戦い方を得意とする戦士ラガンが、いつだったか注文していた、これまた高価な素材をふんだんに使用した高品質な軽鎧。魔術師ソウヤーが大切にしていた魔導書の数々と魔術の効果を高める指輪。神官ラファンがずっと守護の神聖魔法をかけ続けてきた腕輪。斥候リカルドの愛用している短剣や煙玉に、いざと言う時の為に隠していた秘薬の類いまで。

 出てくるアイテムの全てがクノの使いやすいように、調整されていた。最初からクノが使うことを考慮していたかのように。

 いや、きっと考慮していたのだろう。

 最後には、大量の金貨まで出てきた。

 パーティー内で使うアイテムの買い出しを引き受けていたクノは、現状でパーティーの資金がどれだけあるかも把握している。

 そこにあった金貨は、パーティー資金の実に半分もの大金であった。

「ははっ、カイル兄。これをゴミって言うのは無理があるよ。どうするんだよ、こんな大金渡してきて。これじゃ、次の冒険が大変じゃないか」

 クノの瞳から涙がこぼれる。しかし、その涙は、先ほど流したものとは全く違う涙だった。

「相変わらず、カイル兄はお金の勘定が苦手なんだから」

 去り際のカイルの言葉が思い出される。


「お前がもし、俺たちと肩を並べられるくらいに強くなったら、その時はまたパーティーに加えてやるさ」


 ずっと助けてもらっていた。ずっと守ってもらっていた。

 本当は分かっていたんだ。

 このままじゃ、強くなれないって。このままじゃ、夢は叶わないって。

 でも、皆は年下の僕に過保護で、戦闘に参加しても少し怪我を負えば、すぐに誰かが助けてくれて。いつの間にか僕は、そんな環境に甘えてしまっていた。

 自分の夢を置き去りにして、楽な方へ向かっていた。

 皆に対する心苦しさを、見て見ぬふりしていた。

 本当はずっと、苦しかったのに。本当は強くなって、皆と一緒に戦いたかった。守ってもらうばかりじゃなくて、僕が皆を守れるように。でも、その気持ちを皆には隠していた。

 過保護で優しい皆を、困らせてしまうと思ったから。

 でもいつかは、その関係にも終わりが来る。皆は順調に、ランクを上げていった。

 皆には、冒険者としての才能があり、そして不断の努力もあったから。だからこれまでは、僕を守りながらでもなんとなかっていた。

 しかし、いつかは足手まといがいては、立ちいかなくなる。

 僕が皆に、ついていけなくなる時はきっとくる。

 それでもきっと過保護で優しい皆は、僕を守ってくれるだろう。

 そうして、誰かが傷付き倒れてしまったら、僕はきっと立ち直れない。

 皆は気づいていたんだ。僕が心の奥底で、まだ諦めきれていないことを。

 皆は分かっていたんだ。このまま進めば、いずれどうしようもない事態が訪れることを。

 だから今日、僕はパーティーを追放された。

 いいや、僕はパーティーから巣立ったのだ。

 強くなるために。皆と共に歩める強さを手に入れるために。

 またグノンの輝石へ、皆の下へ戻ってくるために。

 皆がくれたこの武具やアイテムを使って、僕は皆の足跡をたどる。


「まずは、初めて皆で挑んだあのダンジョンに行こう。あそこで、腕を磨くんだ。皆に追いつくために」


 そうして少年クノは、新たな気持ちで旅に出た。

 遠い皆の背中を目指して。いつか彼らと並ぶ日を目指して。





 中級ダンジョン密林の洞窟。その第七階層セーフティーエリアにて。

 Cランクパーティー、グノンの輝石が焚き火を囲んで、食事を行っていた。

「マズっ。おい、ソウヤー。なんだよこれ、塩入れすぎだろ」

「そう言うんならラガン、貴方が作りなさい」

「くっそ、知ってて言ってやがるだろ。俺の飯当番の時は覚えてろよ、まっと不味くなるからな。あー、クノの飯が恋しい」

「言わないでください、ラガン。それも含めて、ああしたのでしょう」

 スープを飲みながら言い合う戦士ラガンと魔術師ソウヤー。その隣では、神官ラファンと斥候リカルドが暗い表情を浮かべている。

「ねえ、リカルド。クノは大丈夫かしら? ちゃんとご飯を食べてるかしら? お腹出して寝てないわよね? ああ、一人で泣いていなければいいのだけれど」

「きっと、大丈夫だ。その辺り、あいつは俺たちよりも賢い。むしろ俺は、戦闘経験の少なさが気になる。せめて一度は、俺たちが見守っている中で魔物を倒させてやりたかった。そうすれば……」

「そんなの無理よ。私たちが我慢できないわ。魔物との戦いは、いつだって死と隣り合わせよ。だからって全てをお膳立てしてトドメを刺させたって、本当の意味で強くはなれないし。貴方に出来るの? 傷つくあの子を見ているだけなんて」

「…………無理だ。そんなこと、出来るわけがない」

 怒鳴り合う二人と、暗い表情で心配を口にする二人。そんな四人へ、カイルが疲れた表情で注意する。

「はあ。お前ら、いい加減にしろ。ラガン、ソウヤー。クノに頼りっぱなしだった部分は、これから全員で学んでいくって決めただろ? 少しは我慢しろ。それからラファン、リカルド。今更心配してもどうしようもないだろ。クノなら自分の身の回りの事は自分で出来る。それにラファンの腕輪も持たせたんだ。多少の傷を負うことはあっても、致命傷となるような傷はアレが守るだろ」

「すいません」

「ごめんなさい」

「悪い」

 カイルの説教にソウヤー、ラファン、リカルドは謝ったが、ラガンはまだ不満顔だ。

「リーダーだって、ずっと苛立ってるじゃねえか。それが終わらねえのが原因だろ?」

 ラガンの指差す先にあるのは、カイルが先ほどからずっとにらめっこを続けている書類の束。正確に言えば、このパーティー、グノンの輝石の収支書だ。

「あーあ。このまんまじゃ、クノの方が俺たちを心配して戻ってくるかもな」

「うぐっ。に、苦手なんだよ。数字の計算とか。そういうのは」

 痛い所を突かれ、言葉を濁すカイル。

 そうして沈黙がパーティーを支配して。

「ぷっ」

「ふふっ」

「あははははっ」

「ガッハッハ」

「クックック」

 皆が一斉に笑い出した。

 そこに険悪な雰囲気はもはや無い。

「クノを心配させたら不味いよな」

「ああ、不味いですね」

「そうね。私たちの方が年上なのに」

「そうだな。それは不味い」

「頑張らないとな、俺たちも。クノが帰ってきたいと思えるようなパーティーでいるために。まずは、もう一度Cランクの依頼をこなせるように戦力を整え直さねば」

 そうして一頻り笑い合うと、五人は静かに食事を再開した。





 数年後、六人組の冒険者パーティー、グノンの輝石は、数々の高難易度の依頼をこなしていき、異例の速さでAランクという超一流冒険者たちの仲間入りを果たす。

 そのパーティーのエースは、剣と魔法を使いこなす最年少の青年だったという。

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追放冒険者は努力の果てに成り上がる やみあるい @Yamia_Rui

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