モノクロ・ガールミーツガール⑦

 「おおー。こんにちは!新入生??パートは??」

 私と明音は怒涛のあいさつと質問攻めに少し戸惑った。

 「...はい。1年生の橘です。」

 明音が珍しく圧倒されながら短く答えた。

 「若葉いろはです。同じ1年生です。」

 私も明音に続き短く答える。

 「そうかそうか。新入生かぁ。ついにわが軽音部に新入生が。それも3人も。感動だあ。」

 さらさらの長い髪をフリフリと揺らしながら先輩は一人で感激している。その姿に、私と明音はまた呆気に取られていた。

 「こら、渚。いきなり質問攻めして、勝手に感動して1年生を驚かさないの。」

 私たちが呆然としていると、後ろからハーフツインの女の子が「渚」と呼ばれた先輩の頭を軽く叩いた。

 「はーい。えへへ。ごめんね。」

 「いえ...。大丈夫です。」

 私は短く答える。

 「ようこそ軽音部へ。私は部長の柳沢麻衣。まいって呼んでね。こっちは今井渚。」

 「渚だよー。よろしくね。」

 「橘明音です。ライブ感動しました。よろしくお願いします。」

 先に、明音が元運動部らしく会釈をしながら元気にあいさつした。

 「若葉いろはです。私もライブ見て来ました。よろしくお願いします。」

 私も続いて精一杯の挨拶をする。

 「ライブ、良かったと思ってくれたんだ。うれしい。さぁ入って。」

 「どうぞどうぞー!」

 麻衣先輩と渚先輩が部室に招き入れてくれる。

 「「ありがとうございます。失礼します。」」



 「ようこそ!新入生!」

  息をのむ。あぁこの色を覚えている。絵画のような光景だ。そこには、あの赤の先輩が仁王立ちしていた。

 「私は、御影紅葉。バンドではボーカルとギターをしている。2人ともよろしくな。」

 「わ、わ、若葉いろはです。あ、、、あのライブ感動しました。よろしくお願いします。」

 うまく言葉にできているのだろうか。そんな心配をしながらも、精一杯、言葉としての体裁を整える。

 「ありがとう。いろはさん。聞いていたよ。これから、よろしくな。」

 あたふたしている私を落ち着かせるように、紅葉先輩は優しく語り掛ける。その姿はステージとは少し違った一面だった。

 「君は明音さんだったかな。」

 「はい!橘明音です。よろしくお願いします。」

 「こちらこそ。よろしくな。さあ2人とも座って。もう1人の新入生も紹介しないと。」

 促されるままに、席に着こうとすると、そこにはあの公園のモノクロ少女が座っていた。


 「公園の…」

 つい思ったことが声に出てしまった。

 「あ、急にごめんなさい。」

 「もしかして、一昨日の‥」

 黒髪ショートのモノクロ少女が少し驚きながら、思い出したようにつぶやいた。

 「はい…。私、若葉いろはっていいます。よろしくお願いします。」

 「私は鎌田千代。よろしくね。若葉さん。」

 「鎌田さん。私とバンド組んで下さい。お願いします。」

 千代さんはまた驚いた。私も自分で驚いた。ここに来るときはこんなことを言うつもりはなかった。しかし、千代さんの演奏を聞いてから、あの熱が忘れられない。ずっと見てたいというのとは違う。一緒に作りたいのだ。ただ、その欲望に従った言葉が出てしまった。でも、すっきりとした気分だ。

 「どうして?」

 「うーん。直感かな。どうしても千代さんとバンドしてみたかったから。」

 「先輩の方が上手いよ。」

 「ううん。先輩たちのバンドはずっと見てたい感じ。でも、やりたいのは鎌田さんと。」

 「千代でいいよ。若葉さん。」

 「私も、いろはって呼んで。」

 「わかった。いろは。一緒にやろう。」

 「うん、千代ちゃん。」

 「ちょっと。幼馴染を置いてかないで。」

 「ごめんね。明音。よかったら明音も。」

 「千代さんがよかったらいいよー。」

 「よろしくね。明音さん。」

 「うん、よろしくー。」

 こうして、私達は再開し怒涛の勢いでバンド結成となった。私は、これからの日々に少しの不安と圧倒的なワクワクを感じて、顔がニヤケてしまう。


 「ちょっとー。置いてかないでー!」

 渚先輩が髪をフリフリさせながら、ドタバタしてる。

 「みんな仲良くなれそうでよかったよ。」

 紅葉先輩は微笑みながら私達を眺めている。

 「そうだね。どっちにしろ、1年生には1年生同士でバンド組んで貰おうと思ってたけど。すんなり決まって良かったよ。」

 部長の麻衣先輩が話をまとめてくれる。


 ここから、わたしたちのバンドの物語が始まるのだ。



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