カラー・ロック
@uta0624
モノクロ・ガールミーツガール①
ひらひらと桜の花びらが舞っている。木々の枝は、ピンク色に黄緑が混じり始めている。匂いはまだ春の香りだ。入学式で、桜が満開とはいかないだろう。そういえば、中学の時もそうだった。そもそも、桜が満開な入学式なんてフィクションなのかもしれない。
そんな哲学じみたことを考えながら、ぼんやりと高校からの帰り道を歩く。下見というやつだ。合格発表以来、久々に歩く道で哲学してしまうのは、私が意外と緊張しているからかもしれない。でも、その緊張の中に新しいことへのワクワクはない。部活も帰宅部だろうし、女子高だから恋愛なんかもしないだろう。ただ、新しい環境への純粋な緊張なのだ。
少し重たくこわばる足を動かしながら、近道のために公園を横切る。まだどこの学校も入学式前なのだろう。子どもの数がいつもより多かった。子どもたちの赤みがかったオレンジの声が、夕焼けの空とグラデーションになっている。そんな暖色の公園で、モノクロな場所があった。本来ならイヤな組み合わせだろうが、私はその色に目を奪われた。モノクロは、少しずつ私の中にも流れ込み、先ほどまでの緊張をほどいてく。
色のもとをたどると、アコースティックギターを弾く少女がいた。ツヤのある黒いショートカットとは反対に、透き通るような白い肌、少し幼いが美人な顔立ち。年下のように思えたその少女は、ただただカッコよく見えた。少女に目を奪われていると、ふと目が合ったような気がして、急に恥ずかしくなった。気が付くと、私はその場を逃げるように離れていた。名前を聞いたりして、話さなかったことを後悔した。
そんな後ろ髪を引かれるような出会いが、私の日常を少しずつだが着実に変えていった。
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