星の光
下総雫
たった二人の観測会
いつからか夜が怖くなくなっていた。
昼間の喧騒に疲れてしまったからなのか、お化けや妖怪はフィクションだなんて常識が染みついてしまったからなのか、もしかしたら町の街灯が増えただけで自分の中身はまったく変わっていないのか、そのどれとも違う理由なのかはわからない。けれど少なくとも星の光は穏やかで、宝石のような昼間の太陽よりもずっと優しく温かい。
そんな詩文めいた独り言を静かに聞いてくれていた一つ年上の先輩は、星の光みたいな微笑みで
「キミにはまだ星明かりが見えるんだね。」
と少し寂しそうにつぶやいた。
歳をとるのは簡単で、時間が来ればシンデレラのように子どもの魔法は解けてしまう。隣で星を眺めている先輩はきっと一足先に大人になってしまったのだと理解した。きっと、すべきこと、明日の予定、来年の計画、人生のロードマップ、そういったことで毎日がいっぱいいっぱいで星の光を気にする余裕がなくなってしまうのだ。
だからこそこの二人だけの時間だけは星の光だけを見ていてほしくて、ずっとずっと僕らは天を仰いでいた。
星の光 下総雫 @simousa_sizuku
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