五つ星幽霊ホテル
───────1週間後。アメリカに飛び立つ日を迎えた。結局お化け達全員に断られた俺は1人で行く事になった。今日から5日間の旅行だ。1日目に出発し、2日目、3日目を宿泊して4日目に現地の空港を出発して5日目に日本に帰ってくるという日程になる。田中さんには行き帰りの飛行機代とメインとなる2日目と3日目の宿泊券を用意して貰ったのだ。俺個人で出す費用は滞在費とお土産代のみだ。
田中さんには本当に感謝しかない。
俺は乗る飛行機を待つ間、泊まるホテルの事をスマホで調べる事にした。調べてみると、○○ホテルは1900年代初頭に、結婚式当日に婚約者に捨てられ、失意に打ちのめされた女性が自ら命を絶ったそうだ。その悲劇の日以来、彼女はホテルをあてもなくさまよい歩き、ゲストや従業員を呼び止めて花婿を探していると尋ねて今も探し続けているという。最近では、高校生が【ブラッディ・メアリー】という都市伝説を試して心霊体験をしているという。
アメリカの都市伝説と花嫁の幽霊か……。
幽霊の情報を読んでいると、アナウンスが流れた。
《○○航空より、アメリカ・○○へご出発のお客様にご案内いたします。○○航空120便、アメリカ・○○行きの機内へのご案内時刻につきましては10時。午前10時頃を予定しております。先ずはじめに、小さなお子様連れのお客さま、お手伝いが必要なお客様、ファーストクラス、ビジネスクラスをご利用のお客さまからご案内いたします。当便ご利用のお客様は今しばらく50番搭乗口付近にてお待ちください》
そろそろ行くか。
俺はキャリーケースを手に搭乗口に向かった。色々な手続きを済ませて保安検査場のセキュリティチェックと審査を終わらせた。そして飛行機の中に進んで自分の席を探して席に座った。
30分後……。
《皆さま、今日も○○航空120便、アメリカ・○○行をご利用くださいましてありがとうございます。この便の機長は佐々木 康次郎、私は客室を担当いたします高橋美々子でございます。まもなく出発いたします。シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。○○空港までの飛行時間は12時間20分を予定しております。ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。それでは、ごゆっくりおくつろぎください》
徐々に飛行機が動き始め、遂には空港が小さくなって行った。これから10時間以上飛行機で過ごす事なる。明るいうちはモニターで映画を見て時間を潰す事にした。
数時間後。
飽きた、流石に飽きた……。4作品ぶっ通しは飽きるな。
そこで退屈しのぎに飲み物を頼むためにキャビンアテンダントを呼んだ。
「お客様、どうかなさいましたか?」
キャビンアテンダントは丁寧な日本語で俺に声を掛けてきた。だが俺は無駄に格好を付けて、
「すいません、飲み物を頂けますか?」
「───────っ!?」
流暢な英語で返した。キャビンアテンダントは少し驚いたのか僅かに苦笑いをした。だが、キャビンアテンダントも機転を利かせて来る。
「かしこまりました。何をお飲みになりますか?」
向こうも英語で返して来た。
流石プロ。発音も素晴らしい。
それを数回繰り返して時間を潰して無事にアメリカに辿り着いた。入国審査をクリアしてタクシーに乗り、目的のホテルに向かった。車で2時間街を走りようやく○○ホテルに到着した。ホテルの見た目は映画にで出てきそうなクラシカルで内装は歴史を感じるアンティーク。俺はキャリーケースを引いて胸を踊らせながらホテルマンに声を掛けた。
「すいません。予約したリュウセイ・フクシマですけど、この宿泊券で合ってますか?」
「いらっしゃいませ。では拝見します」
ホテルマンはメガネを掛けて宿泊券に目を通す。チラッと俺を見つめて、
「お待ちしておりました。ミスターリュウセイ。お部屋へご案内します」
「よろしくお願いします」
スタッフと共にエレベーターに乗った。3階で降り、廊下を進み○○○号室に辿り着いた。荷物と鍵を受け取り、チップを払って部屋の中に入った。部屋の中は映画のセットの様な高級なテーブルやソファー。寝室には王様が寝るような大きなベッドがある。とりあえず俺は部屋を歩き回り、ベッドに飛び込んで呟いた。
「これが勝ち組って奴か……へへっへへへ」
優越感に浸ってしまった。調子に乗ってシャワーを浴び、バスローブを着てルームサービスを頼み、安いシャンパンを注文してセレブを気取り始めた。
「いやぁ、アメリカのホテルは凄いなぁ。こんなにいいホテルなのに幽霊なんてホントに出るのかなぁ〜?」
そう独り言を言った時、空港で調べた事を思い出した。
アメリカの都市伝説、ブラッディ・メアリー。
俺は洗面所の方を向いた。
「ブラッディ・メアリーか。どんな子なんだろう……。白人なのか、黒人なのか……はたまたラテン系なのかな?気になるなぁ」
シャンパンで酔ったせいもあるだろうが、俺は居ても立っても居られなった俺は立ち上がった。
「ブラッディ・メアリーを呼んでみよう!!」
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