お化けだってハロウィンがしたい!
隣町の〇〇支店に応援が決まったその日の夕方。俺はそのまま家に帰るとお化け達はテレビに夢中になっていた。テレビでは、ハロウィンの特集の番組を映している。テレビのアナウンサーも魔女のコスプレをしていた。
《みなさーん!私は今、〇〇のスクランブル交差点に来ています!見てください!可愛らしいお化けさんだらけですよー!》
ハロウィンか、もうそんな季節かぁ。
俺が部屋で着替えて茶の間に戻ると、花ちゃんが子供の様に目をキラキラと輝かせながら俺に声をかける。
「龍星!龍星!わしもハロウィンがやりたいっ!」
年がら年中ハロウィンみたいな奴が何を言うか。
「えー、お菓子とか用意しなきゃないじゃん」
「頼む!こんなオシャレな格好した事ないから…………ダメか?」
花ちゃんは目をウルウルさせながら俺に懇願してくる。
「うーん…………はーちゃん達もやりたいの?」
「ま、まぁあたしも興味はあるかな?」
「私も、少し気になりますね」
「わ、わたしも、気になる」
「べ、別に欲しくなんか…………ちらちら」
やれやれ、困ったものだな…………あっ!
俺は隣町の応援に行く話を思い出した。
「そういえば、俺明日から隣町の〇〇支店に応援に行く事になったんだけど、ついでに衣装の材料とか買って来ようか?」
俺がそう伝えると、メリーが顔を青ざめさせながら首を横に振る。
「はぁ?あんたに任せたらいやらしい服とか買うから嫌よ!」
「失敬なっ!ちょっとミニスカートを選ぶつもりだったが」
「ほらぁっ!」
「んじゃどうすんだよ、なんなら一緒に行くか?」
「あっ、それ賛成!」
すーちゃんがビシッと手を挙げる。その他のお化け達も「その手があったか!」と言わんばかりに驚いた顔をしていた。
「けど、遊びに行くわけじゃないからな?職場で会話なんて出来ないよ?それでもいいの?」
「まぁ、わしは構わんぞ?」
「私もそれでいいですね!」
「それじゃ順番どうする?ジャンケンでもする?」
ジャンケンか、それじゃ味気ないな。
「んじゃ、こうしよう。くじ引きで順番を決めよう」
「くじ?いいね、やろう!」
「なんだ!?ギャンブルか!?おじさんも混ぜろ!」
大盛り上がりで割り箸をくじにする。割り箸くじの下に1〜7の番号を書いて行き、書いた割り箸の端を俺が片手で隠した。お化け達は一斉に割り箸に手をつける。
「さぁ、怨みっこなしのくじ引きだ!引け引け!」
お化け達が一斉に引いた順番は…………。1番は花ちゃん、2番ははーちゃん、3番はおじさん、4番はメリー、5番はすーちゃん、6番はくねちゃん、7番はおくまの順番となった。花ちゃんは1番が嬉しかったのか、1人でこっそり喜ぶ。
「順番決まったな?んじゃ明日も早いから寝るよ〜」
「はーい」
翌日。
朝食を食べた俺と花ちゃんは隣町の〇〇支店に向かう為に電車に乗った。花ちゃんは電車が初めてだったらしく、子供のように足をばたつかせながら窓の外を見て1人で騒いでいた。
「ちょっ!龍星!早い早い!ほら、建物が!ちょ、龍星!」
隣がうるさい。
「龍星!龍星!あの建物はなんじゃ!?あの高い塔はなんじゃ!?おいっ!無視か!?」
電車には他にも乗客がいる。なので俺は花ちゃんに注意することが出来ない。だから俺はイヤホンを付けて花ちゃんの声をシャットアウトした。
「時代が変わったのぉ〜…………おい、聞いてるのか?。なんだその耳に付けてるのは?」
花ちゃんは俺のイヤホンが気になったのか、片方のイヤホンを外して見よう見まねで片耳に付けて見た。花ちゃんは音楽が聞こえたのにびっくりして、
「おぉ〜!音楽が聞こえる!ほほぉ〜!」
音楽が気に入ったのか、急に大人しくなり音楽を聴き始めた。そして、降りる駅に着いた。俺は花ちゃんに目で合図をすると、花ちゃんはトテトテと付いてきた。商業施設に着くと店の中はハロウィンの飾りが飾られていた。花ちゃんは辺りを見渡しながら俺の袖を引っ張る。
「龍星!龍星!なんじゃアレは!?ちょ、かぼちゃがデカいぞ!?」
そろそろ黙れロリババア。
そのまま警備室に向かい、この商業施設を管理している警備員達に挨拶をした。
「○○病院から応援に来ました、福島龍星です。新人ですがよろしくお願いします」
俺が挨拶すると、白髪でオールバックの髪型をして口ひげがダンディなおじさんが立ち上がった。
「福島くんだね?私がここの警備部長の田中だ。少しの間よろしく頼むよ」
「はい。よろしくお願いします」
「んじゃ、早速仕事内容の説明するからロッカールームで着替えて来てくれ」
「はい。分かりました」
警備部長に指示された場所に行き着替え始めた。花ちゃんは浮んで辺りを飛び回る。
「汗臭い場所じゃのぉ〜龍星はいつもこんな感じなのか」
花ちゃんに嫌味を言われながら着替えを終える。そして、指で花ちゃんに合図をする。花ちゃんもそれに気付いて床に着地してトテトテと付いてきた。そして、俺と花ちゃんは警備部長の元へ戻る。
「お?似合ってるね。じゃ、ここの業務内容を説明する」
警備部長の話はこうだ。施設内の「巡回」。特定の位置に立って周囲を警戒する「立哨」。施設を出入りする人の「受付」。施設内の「開錠・施錠」。防災センターでの「防犯カメラのモニター監視」と、病院の内容と似ている内容だった。
「分かりました。今日は何をすれば良いんですか?」
「そうだね、今日はここのエリアで立哨をして貰う。そこに警備員がいるからその人と交代してくれ」
警備部長は地図に指を指しながら俺に指示を出した。
「はい、分かりました」
「おい、龍星!近くに服売場がある!ハロウィンの買い物には打って付けじゃ!」
2階の○○の近くだな。
俺は場所を覚え、その場所に向かった。指定の場所につくと、その場には先輩らしき中年男性の警備員が立っていた。
「お疲れ様です。交代に来ました」
「お疲れ様です。あっ、新人の?」
「はい、そうです。福島っていいます」
「俺は渡辺。よろしく」
渡辺さんから簡単に説明を受けた。
「基本的な役割は不審者の監視やトラブル発生時の対応だから、気を引き締めて見てね。いい?ボーッとしちゃ駄目だよ?」
「はい。分かりました」
「要は変な奴がいないか見張ればいいのじゃろ?簡単じゃなわしも手伝おう」
立哨が始まった。俺は怪しい人物がいないか目で辺りを探ってみる。
「退屈じゃのぉ…………なぁ?龍星?」
花ちゃんは退屈なのかしつこく俺に声を掛けてくる。返事をしたい所だが、人が多すぎる。
「なぁ、龍星!返事くらいしてくれてもいいだろう!このたわけ!」
「…………」
「あの吸血鬼の格好した娘、胸がデカイな」
「えっ?」
チラッ
「おい、貴様。なぜあの吸血鬼の娘を見た?おい、コラ、わしには目も向けないのにものすごいスピードで見たな?なぁ、なんか言ってみろこの変態野郎」
花ちゃんは一瞬で背後に回り俺の肩をミシミシと掴んで耳元で囁いた。
軽率な行動をとってしまった事につきまして、深く反省をしております。誠に申し訳ございませんでした。
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