お化けだってキャンプがしたい!
それから月日が流れて季節は夏になった。仕事場ではカッシーと婦長に付き纏い、仕事終わりに飲んだ帰りに酔い醒ましも兼ねて口裂け女と談話を楽しみ、家でははーちゃん、花ちゃん、メリー、くねちゃん、すーちゃん、お菊さん達に付き纏って日々暮らしていた。セミがミンミンと激しく鳴く休みの昼間に皆でテレビを見ていた。テレビのキャスターはキャンプ場でキャンプ特集の番組が放送されていた。
「私は今○○県の○○キャンプ場にやって来ました!見てくださいこの広大な森を!癒されますねぇ〜!!」
夏休みシーズンに突入した為か、キャンプ場は人でごった返していた。俺は麦茶を飲みながら眺めていた。
こんなクソ暑い外でキャンプをするキャンプってのがこれが楽しいんだよなぁ。
そうしみじみ思うと、テレビを食い入るように見ていた花ちゃんが。
「龍星!わしもきゃんぷがしたいっ!」
何を言い出すんだこのロリババアは。
「わたしも行きたいです!お盆間近ですし、たまにはお出かけしたいです!」
「八尺さんと花子の言う通りよ。あたしもキャンプしたい」
「あたしも行きたい…………かなぁ」
「楽しそうですね。わたしも外の世界が見てみたいです」
花ちゃんにつられてはーちゃん達も騒ぎ出した。そして、くねちゃんも行きたいのかたどたどしい言葉で、
「わたし、も、行きたい」
「くねちゃんまで言うかぁ〜。う〜ん、どうしたもんかなぁ」
女性陣に言われて困っていると、唯一の男の仲間でもある小さいおじさんがランニングシャツにヨレヨレのガラパンの姿で俺に言ってきた。
「あんちゃん、なにもこんな暑い中出かけける事はねぇじゃねぇかよ。おじさんと一緒にビアガーデンにでもしゃれこもうぜ!?」
「いいねぇっ!おじさん、クソ暑い中行くより涼しい夜に行った方が」
チラッと女の子達を見た途端それはもう今すぐにでも殺してやろうかと言わんばかりに睨み付けて来る。お化け達は顔を見合わせた途端、力を合わせて強力なポルターガイストを起こし始める。飛び交う書物、倒れるタンス、小さいおじさんは巣穴に避難してる間俺は倒れてくるタンスを抑えるのに必死だった。
「分かった!分かったから!連れてく!連れてくからやめろ!」
そういった途端、お化け達はぱあっと明るくなりポルターガイストを起こすのを止めた。俺はスマホを取り出して山に囲まれたキャンプ場を探す事にした。
「えーっとなになに?○○キャンプ場?○○キャンプ場は、標高701メートルの○○山頂上付近に位置します。夏涼しく小鳥さえずる静かな展望台、ここからは広大な山々が一望できます…………。ここなら広いし、人混みから離れてキャンプすれば騒いでも大丈夫そうかな。みんなどう思う?」
どう思う?って言ってもソロキャンプにしかならないけどね。
俺はスマホをお化け達に見せると、ガタガタと場所を取り合いしながらスマホ見つめた。
「わぁ〜!素敵な所ですね!」
「イイじゃん!イイじゃん!龍星って結構センスいいよね!?」
「広くて気持ち良さそうじゃのうっ!」
「あたしもここが良いかなぁ…………なんて?」
「昔の風景見たいで良いですねぇ!江戸の頃にもこのような綺麗な山がありましたよ!」
お化け達はキャッキャウフフと子供の様にはしゃぎ始めた。仕方なく、ネットでキャンプ用品を注文し、次の休みにキャンプに行く事にした。
─────次の休みになった。カッシーと婦長にも声を掛けたが断られてしまった。理由は「何をするか分からないから」という。俺達は4人乗りの乗用車に乗り込んで○○県○○キャンプ場へ向かった。俺が運転、助手席には花ちゃん、後ろの席にはお菊さん、くねちゃん、メリーでトランクにはすーちゃん、車の屋根にははーちゃんが乗っていた。車で3時間程で○○キャンプ場に辿り着いた。昨日雨だったのか、キャンプ場の利用者は俺達だけだった。俺は管理所に向い、受付を行った。管理所には腹巻にステテコ、便所サンダルにハゲ頭に出っ歯というクセの強いおじさんがいた。俺は一瞬怯んだが、勇気を出して管理人のおじさんに声をかけた。
「あ、あの〜?」
「へえぃ、らっしゃい!お兄ちゃん、1人か?」
管理人のおじさんは酔っ払っているのか、キュウリを片手に俺の声に答えた。
「キャンプしたいんですけど、空いてますか?」
「へえぃ、空いてるよ。一人あたり1泊3000円だよ」
「あっ、んじゃ……」
って俺以外みんなお化けだわ、料金かかんないじゃん。
「クセの強いおじさんね」
「出っ歯がすごいのぉ」
「な、なんでキュウリかじってるんでしょうか?」
「未だにこんなおじさんがいるんですね………」
「へえぃが頭から離れないんだけど?」
後ろでヒソヒソと騒ぐお化け達を他所に、俺は何事も無かったような顔をして3000円支払った。管理人のおじさんはキュウリをボリボリかじりながら、
「へえぃ、毎度あり。テントとかバーベキューのレンタルもしてるけどどうする?借りるかい?」
「いえ、一通りの道具は持って来てるんで大丈夫です!」
「へえぃ、そうかい。んじゃ、ゆっくりしてってくだせぇ」
「はーい」
管理人のおじさんと別れた俺はお化け達を連れて場所を探した。車からキャンプ場道具を取り出して、テントを建て始めた。
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