くねくね
田園にポツンと変なクネクネと動く案山子の様なモノを見た俺は、じーっと見つめて。
「案山子かなぁ?にしては何か変な格好してるけど……」
俺は不思議に思ったが、チャックを戻して車に戻り、ハローワークに向かって行った。ハローワークに着いて受付を済ませ、就職先をパソコンで調べ始めた。
出来れば近くて定時で帰れる仕事がいいなぁ。
そう思いながら色々探していると、一つの仕事に目が行った。
ん?これは……。
職種 施設警備員 (○○県立○○病院)
雇用形態 パート労働者
賃金 日給 8000円
就業時間
変形労働時間制(1か月単位)
(1)8時30分~17時45分
(2)16時45分~8時45分
休憩 1時間15分
仕事内容
○以下の業務に従事していただきます。
○警備業務
・院内外の巡回、人・車輌の出入管理
・施設開錠、鍵の管理
・災害及び緊急時の対応
○日当直業務(夜間、休日)
・患者の受付、案内、会計
・電話の取次
・文書、物品の収受
・その他日当直に必要な業務
※霊感のない人大歓迎※
「ほう、警備員か……いいな。○○病院は家からも近いしな。ってか霊感ない人大歓迎ってブラックの匂いしかしないのだが……?まぁいいや」
よし、ここにしよう。
俺はそのまま事務員さんに求人票を持って行き、手続きを始めた。
─────────────────────
2時間後、事務員の人と話した結果、「3日後に面接をしたい」と言う事になった。履歴書などを書かなければならない為、俺は履歴書や、今夜の晩御飯のオカズなどを買いながら俺は家に帰ろうとした。その道中、
「面接は3日後かぁ……よっぽど人手が欲しいんだろうなぁ」
ん?
ふと、朝方に通った田園に差し掛かると、また例の案山子の様なモノがクネクネしながら動いていた。
「気になるなぁ……なんなんだろう、あれ?。ちょっと調べてみるか」
俺は広い所に車を寄せて、スマホを取り出して検索して見た。そこには……。
「【くねくね】?」
【くねくね。2000年頃から、インターネット上で語られるようになった都市伝説。全国各地の田んぼにあらわれる怪物で、真っ白い体をくねくねとくねらせながら動くという。関節がありえない方向に曲がるなど、普通の人間には不可能な体を動かし方をする。遠くから見るだけなら問題ないが、間近で見たり、双眼鏡などで拡大して見たりしてくねくねの正体を知ってしまうと、”頭がおかしくなる”と言われている。また、魂を取られて心を壊される、気がおかしくなると言った説もある】
検索結果を見た結果。
「やべぇ奴じゃん」
花ちゃんやはーちゃんが言ってた話の通じない奴って事だよな?正体を知ってしまうと、頭がおかしくさせるってのが、まずチートじゃないか。
危険と分かったが、俺は心のどこかで気になっているという事を隠せなかった。
「でも気になるなぁ……正体を知ったらおかしくなるんだろ?って言うことは誰もくねくねの正体を知らないって事だろ?気になるわぁ……」
俺は車から降りて田園にいるくねくねを遠くから見つめてみた。
「うーん、こっからじゃ人?って感じにしか見えねぇな。手でも振ってみるか?」
俺は興味本位で手を振ってみると、クネクネと動いていたのをピタッと止めた。
あ、気付いた?
すると……くねくねは何を思ったのか、クネクネと動きながらゆっくり近付いて来てるように見えた。
「え、こっちに来てる?ウソ、マジ!?」
急に怖くなった俺は車に逃げ込んでエンジンをかけようとしたが、エンジンがかからなくなった。
「おいおいおい!こんな時にお約束はいらねぇんだよ!」
何度も何度もキーを回すがエンジンは掛からない。チラッと様子をみると、50メートル程まで近付いていた。
「カモンカモンカモン!やばい、ホラーっぽくなってる!カモンッ!!カモンッ!!」
キュルルル、ブォン!ブォン!
ようやくエンジンがかかり、くねくねを見ないようにしながら俺は車を走らせた。そのまま家に辿り着いて、慌てて玄関に逃げ込んだ。すると、おくまが「どうしたの!?」と言わんばかりの顔をしていた。
「はーっ、はーっ!怖かった……」
物音に気付いた花子さんやメリー、お菊さんや八尺様が玄関に集まった。
「なんじゃ?どーしたんじゃ?」
「どうしたんですか?龍星さん」
「何をそんなに慌ててるの?トイレ?」
「ご主人様。とりあえずお水を飲んで下さい」
俺はお菊さんから渡された水を一気に飲み干し、話し始めた。
「田んぼに、変な奴がいて……怖くて逃げて来た」
ゼーハー言いながら説明すると、はーちゃんが、
「田んぼに変なやつ……もしかして”くねくねさん”を見たんですか!?」
はーちゃんが俺に深刻な顔をしながら言ってきた。花ちゃんも突然顔色を変えた。
「くねくね?なんじゃその変な名前は?妖怪か?」
「あー、あたしもちょっと聞いた事があるヤツね、今の時代ではトップに近いヤバい奴よ?」
「そんな方がどうして龍星さんに?」
「分からない、俺も興味本位でくねくねに手を振っただけなんだけど、こっちに気付いて近付いて来たんだよ。急に怖くなってさ、慌てて逃げて来た。こんなに恐怖を感じたのははーちゃん以来だよ」
俺がそう言うとメリーもただ事ではないと理解したのか、考え始めた。
「あんたの事怖いもの知らずと思ってたけど、余程のヤツね。まさかとは思うけど、付けられてないわよね?」
「わかんない……スピードは出してたから撒いたとは思うけど……」
ホラー映画だとフラグなんだよなぁ……。
「あ、やべぇ。買い物車の中だわ」
「取ってくれば良いでしょ?大丈夫よ」
「わたし達もいますし、きっと大丈夫ですよ」
そう?そうかなぁ?
「ちょっと覗いてみる」
俺は恐る恐る玄関の扉を開けて外を見てみると、何ら変わらない風景が広がっていた。俺は一旦扉を閉めて、後ろを振り返った。
「どう?なんかいた?」
「いや、居ないけど……メリー取ってきてよ。幽霊が見ても頭がおかしくなる事はないだろ?」
「バカ言わないでよ、あたしだって嫌よ!」
「ええ……幽霊もビビる奴って相当じゃん……。やだなぁ……」
俺は意を決して外に出てみた、辺りを見渡してみるが先程のくねくねはいなかった。
「大体この状況だと、大半車の下に居るんだよな。そこかっ!?」
車の下を見てみたが、何もいなかった。
ここじゃない、となると……。
「こっちか!?」
今度は車の中を覗いてみると、飲みかけのコーヒーとスマホしかなかった。
ここでもない……後ろか!?
俺はバッと後ろを振り返るが、何もいなかった。
「いないな。やっぱり撒いたのかな?あー、ビビった」
ようやく安心し切った俺は車のトランクを開けようとしたが、俺は手を止めた。
「いや、安心し切った所に来るってパターンもあるな」
そう考えた俺はトランクを思い切り開けて、そのまま隠れた。少しの間様子を伺うが、何も起こらなかった。
ホラー映画の見すぎか?ここにも居ねぇ……。
「大丈夫そうだな、さっさと取ろう」
俺は買い物袋を取ってトランクを閉め、玄関に戻ろうとしたその時。生暖かい風がフワッと吹いた。
この感じ……もしかして……。
そのまま、ゆっくり振り返ると……。
「おぬぁぁぁっ!?」
なんかいる!!フラフープを持って白いレオタードを着たショートカットの女の子がいる!!……あっヤバ!!。
俺は咄嗟に目を手で覆いながら言い放った。
「お前、もしかして……くねくね?」
「…………」
声をかけたが応答がなかった。すると、俺の叫び声を聞きつけたお化け達が玄関をすり抜けて現れた。
「龍星さん、大丈───って誰ですか!?」
「な、なんじゃ!?こやつ!?」
「変な輪を持ってますね。しかし、破廉恥な格好をしておりますね」
「なんでフラフープ持ってるの?」
俺は目を覆いながらはーちゃん達に言い放つ。
「バカ、見るな!!そいつがくねくねだ!田んぼで見た奴だ!!」
そうい言うと……。
「何も起こらないわよ?」
「そうですね、なんででしょうか?」
「変な格好をしてるが、可愛らしい子じゃの」
「あ、わたくしお着物探してきますね!」
あ、あれ?何ともないの?
ゆっくり手を離してくねくねを見るが、何とも起こらなかった。
「おおお……なんも起こらない。都市伝説も当てにならないもんだな」
「こやつは大丈夫そうじゃ。わしは中に入るぞ?」
「そうですね、お茶の準備しますのでメリーさんと龍星さんにここは任せますね」
はーちゃんと花ちゃんはそう言って家の中に入って行った。残された俺とメリーはくねくねを調べ始めた。くねくねも首を傾げたままこちらを見つめている。
「うーん、特に害はなさそうね」
「うん。確かに、言葉分かる?通じてる?」
くねくねに尋ねると、コクんと頷いた。
あっ、話は出来るっぽい。
「あんた、言葉は話せるの?」
メリーが聞くと、くねくねは首を横に振った。
言葉は理解出来るが、言葉は話せないらしい。クネクネと動いて見えていた原因はフラフープをしていた様だ。
いや、まずなんで田んぼでフラフープ?
フラフープはさて置き、くねくねの細かい所を知った俺はじーっとくねくねの体を舐めますように見た。
「しかし、レオタードってエッチだなぁ」
「あんた、全世界の新体操やってる人に向かって土下座しなさいよ。よく初対面で言えるわね」
「──────っ!!」
くねくねも理解したのか、恥ずかしそうにモジモジし始めた。
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