小悪魔な幼馴染と彼女いない歴=年齢な俺。
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
第1話 いきなりのキス宣言
「ねぇ先輩、キスしてもいーですか?」
「ぶっ、ばっ、な、なに言ってんだよ、急に!」
あまり発言に、俺は飲んでいたスポーツドリンクを吐き出した。
あああ、苦しい。変なトコ入ったし。
「やだぁ、汚なぁい、先輩。もー。ほらはい、ハンカチ」
隣を並んで歩く後輩である
ピンクのレースのハンカチは、爽やかな柔軟剤の匂いがした。
いやこれは、無意識に匂いが入って来ただけで、わざと匂いを嗅いだというわけではない。
決して、変な気持ちで匂いを嗅いだんじゃない。
俺と亜由美が一緒に帰るようになったのは、ある意味必然にも近かった。俺と彼女は同じ部活の部員とマネージャーという立場であり、数少ない学校からの徒歩での帰宅組だ。
同じ部活なだけあって、帰宅時間はいつも一緒。この先の角を曲がるまでが一緒の道だ。
「あ、亜由美なんで、い、いきなりそんなコト言い出すんだよ」
動揺を隠せない俺とは違い、やや小悪魔の様な笑みを浮かべながら亜由美が数歩先で立ち止まる。
ピンク色の艶やかな唇が、形よく弧を描く。そして次の瞬間、ふわりと彼女の長いポニーテールの髪が揺れた。風に乗って、彼女の匂いまで漂ってくる気がした。
「えー、先輩の唇、だって柔らかそうだしぃ。って理由じゃダメですか? ん-。キスがダメなら唇に触ってみてもいいですか?」
ダメですか? ダメですかって。いいのか、これ。
いや、普通に考えたらダメだろう。だがいい断り文句も思い浮かばなければ、断る理由すらない。
小首を傾げこちらを見上げる亜由美は、どこかのCMにでも出てくる可愛げな小動物のよう。
何でこんなに可愛い亜由美が、俺になんて興味を示すのか全く分からなかった。
それに唇だって、どう見ても亜由美の方が柔らかいだろう。
彼女の考えを読み取ろうにも、その唇に目がいってしまって考えが上手くまとまらない。
あああ、心臓の音がうるさい。
ドッキリ動画とか何かなんか? 誰かどこかで撮影してるんじゃないのかよ。
キョロキョロと見渡しても、夕暮れ時の人通りのない道には二人だけだった。
だとしたら本当ってことか?
なんの取柄もなく、今までモテたことすらない俺とそんなことしたいとかって。
こういうのを据え膳って言うんだよな。
そ、それならーー
「そ、それくらいなら……別にいいけど?」
恥ずかしさのあまり顔を背けると、にこにこしながら亜由美が覗き込んできた。
俺の唇などより、亜由美の唇の方がよっぽど柔らかくて美味しそうだ。
そこまで考えて、自分がしてはいけない想像をしたことが急に恥ずかしくなる。
なんだよ『美味しそう』って。どこの変態だよ。自分でもキモイだろうが。
落ち着け俺! 変な想像なんてすんな。
た、ただの通常会話なのかもしれないだろ。知らんけど。
マジで誰か俺に正解をくれ!!!!
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