第11話 自慢にして頭痛の種【side.エクトル】
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「聞きましたか、会長。会長の妹君が、昨日見事な魔法陣を披露されたようですよ」
「何?セーレがか?」
セーレに魔法陣の書き方を教えたのは俺だ。あの日から毎日欠かさず練習を重ねてきたセーレのことだから、失敗するなどということはありえないだろう。だが……。
「一年生の前期授業は、魔法陣の仕組み理解までだったよな?紙に書いて発動させる演習は、後期からだった気がするが」
「どうも魔法を発動出来ない代わりとして、他の生徒から魔力を借りる形で演習に参加したようです。会長の妹だけあって、流石の機転ですね」
いや……妹は自分の力を敢えてひけらかすようなタイプじゃない。あいつは地道な努力と探求を優先して、ギリギリまで実力を高めてから戦いに臨むタイプだ。特に魔法が関することに関しては。
「さては挑発に乗ったな?あいつは冷静そうに見えて頭に血が上りやすいから……」
「はい?」
「いや、なんでもないよ。妹も人間だなと思っただけだ」
「はあ……」
苦笑いを浮かべつつも、軽い頭痛に見舞われた。要するに学園においてもセーレはセーレだし、その扱われ方も大きく変わらなかったと言うことだ。これでは父上が言うところの味方を作るどころか、妬み嫉みで敵を増やしかねないじゃないか。全く、何をしているのやら。
しかし、学園では屋敷と違って俺が介入することはできない。当人の問題は当人に解決してもらおう。皮肉な話だが、屋敷では魔法不能者扱いされてきたわけだし、それで冷静さを完全に損なうこともあるまい。
「ところで会長、妹君は生徒会に入れそうなのですか?」
「え?」
「前期の成績優秀者を生徒会にスカウトする決まりじゃありませんか」
……妹が生徒会に、か?それは考えていなかったが、妹は魔法に関する知識においては俺をも超えつつあるので、順当に行けば生徒会入りすることになるだろう。だが魔法第一主義の学園において、魔力が無い妹が生徒会に入るなど、もはやトラブルの予感しかしない。もし入ったとしたら――
『校則として、授業以外での魔法使用を厳禁とすることを提案します。私が校内全体に魔封じの魔法陣を書きますわ』
『セ、セーレ!それでは収容所と変わらないじゃないか!?』
『収容所で魔法が封じられているのは、囚人の安全を配慮してのこと。私の提案も生徒の安全を配慮してのことです。看守を設置しないだけこちらの方が有情ですわ』
――まずいな。本当に言い出しかねないぞ。自分で想像してて寒気がした。
「…………万が一入ってきたら、万年書記をやらせるからな」
「はははっ!そんなに入ってきてほしいのですか?気が早いですよ会長!でも、入ってくれるといいですね」
良いものか。全く。
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