刃渡15センチの下剋上

イラクサ

プロローグ

「次、ニイド パース!」

「は、はい!」

僕は小さい頃から憧れたおとぎ話の英雄のようになるために、地下に広がる世界を探索する探索者(シーカー)を志し、ケスキ大剣神殿で刻印の義を受けに来ている。

この世界では刃渡り8cm以上の刃物を扱うには剣神様からのお許しの証「刻印」を左手に刻まなければならない。各都市にある剣神殿では「大工刻印」「料理刻印」など、これらの「職人刻印」は好きな物を選べる。しかしここ中央都市ケスキにある大剣神殿では探索者になるために「武器刻印」を授かることが出来る。武器刻印は剣神様自らがその人の適性を見て身の丈に合った刻印を授けてくださるのだ。

刻印の義はいつでも受けることは出来るが、やり直しは聞かない。だから僕は身体が成熟する18歳まで待った。それでも僕の身長は小柄だ。

小柄がなんだ!第1線探索者の中にも半小人族(ハーフヒューマン)だって居るんだ!いつかおとぎ話の英雄のように、、

そう思って自分の10数年の努力を思い剣神像の前に跪き、左手を掲げた。

光の剣で左手を貫かれ温かさを感じると、ふっと光の剣は消えた。

左手の甲を見た。そこには少し傾いた「短剣刻印」が薄く輝いていた。

全ての刃物を装備できる「聖剣刻印」とまでは行かないが、直剣を装備できる「直剣刻印」が欲しかった。でも仕方ない、むしろ小柄な僕の適性を見抜いて剣神様は取り回しのいい「短剣刻印」を刻んでくれたのだ。

刻印証の発行のため神官に見せに行くと、神官達がざわめき始めた。やはり傾いていたのは強力な加護付き刻印なのだろうか?

神官達のざわめきが収まる。その場にいる全員に緊張が走った。

「か、加護はありませんでした。コチラは加護なし、微剣刻印(ナイフ刻印)です」

「え、ナイフ?そんなの…」

「ナイフなんて聞いた事ねぇ!そんなん未刻印と同じじゃないか!ハッハッハ!!」

僕の言葉を遮ってその若者に続けてそこに居た者たち全員が声を上げて笑った。

僕は神官から奪い取るように刻印証を受け取り俯いたまま神殿を後にした。


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