第2話
-西暦2058年3月30日-
アメリカ合衆国ネバダ州バージニア・ゴールドクリーク生物科学研究所の爆破テロ事件から2日が経ったこの日、警察は総力をあげて全国のALF構成員を逮捕する作戦に出た。その手が真っ先に向かったのはALF最大の基地とされているロサンゼルス市の事務所である。ここは、表向きはジョン・ベックマンという黒人系の政治家の事務所であった。しかし、ジョンは裏ではALFと繋がっており、資金や隠れ家の提供を行なっていた。
-午前11時58分-
SWATが事務所を取り囲んでいた。
「突入準備、3,2,1行け。」
ドーン、扉を勢いよく開け、突入した。中には、6人の男がいた。1人はジョンであった。
「何事ですか?」
とジョンが接触を試みるも近づいたところを警官に取り押さえられた。
「なにをする!放せ!」
「ジョン・ベックマン、テロ組織との関係の疑いで逮捕する。そして、お前らの中にもALFがいることは分かっている。出てこい!」
「ここには、もういないぞ。彼らはとっくに逃げたさ。私の金を奪ってな!」
「リアム警視、地下通路らしき道を発見しました。この道は物件の見取り図には書かれていません。」
「まだ、奴らは遠くまで逃げていない。すぐに追うんだ、そして本部にも警戒を強化するよう伝えておけ。ここには10人残り、見張りを頼む。」
「はい。」
「行くぞ。」
地下通路は200mほどの直線の後、2つに道が分かれていた。
「ここからは2手に分かれて行動する。私は右に向かう。アーサーは左を頼む。何かあったらすぐに応援を呼べ!」
「はい。」
リアムたちの進んだ右の通路はその後行き止まりとなっていた。一方、アーサーたちは道を進み続けていた。進み続けてから10分ほど経った時に、緊急連絡が入った。
「こちら、アーサー、どうした?」
「アーサー警視、大変です。ジョンが発砲し、逃亡しました!」
「なに!?な、なにがあった!」
「ボディーガードの1人が暴れ出しわたしたちの目がそいつに向いた瞬間に銃を取られ、発砲されました。1人が負傷しました!」
「まずいぞ。。。これは、大事件だ。すぐに追いかけろ!」
「リアム、こちらアーサー。連絡は入ったか?」
「あぁ。まずいことになった。ロサンゼルス市警の顔に泥を塗ってしまったからには、降格されるかもしれない。」
その後、リアムとアーサーしてジョンを捜索するが、見つかることはなかった。この突入作戦失敗は大きく、その後ジョンが表に姿をみせることはなかった。
-ロサンゼルス北東アルダデナ-
「ジョン、でかしたぞ。お前の機転のきいた言葉で誰一人欠けることなく、脱出出来た。」
「いや、なんてことないさ。住民どもに嘘公約を言うような感じさ。」
「そうか、お前はALFのために資金提供をしてくれた、感謝している。しかし、お前はミートイーターだろう。そいつは仲間じゃねぇ。殺せ、ミン。」
「はい!」
「待て!私はお前らに、、」
ドン、ドン。2発の銃弾がジョンの頭を貫いた。
「片付けておけ。」
「はい。」
「ウィリアムさん、失礼します。」
「おぉ、来たか。スーニー入れ。」
「はい。」
「派手にやってくれたそうじゃねぇ。しかし、アーロンを失ったのはデカかったな。あいつにはALFに対する忠誠心があったからな。」
スーニーと話すこの男は、ALFロサンゼルス支部隊長ウィリアムである。世界各地に点在するALFの支部の中で本部に次いで勢力を持つ支部の隊長である。
「はい、惜しいやつでした。」
「まあ、いい。次の任務だ。ボスはお前にもう一度チャンスを下さった。ありがた〜く思え。」
「えっ、、、どんな任務ですか。」
「ロシア連邦への潜入だ。あそこはアメリカが仮想敵国としていたから、中々近づけなかったが、ボスもとうとう手を出すらしい。まず、日本で待つ仲間と、合流してから択捉島、ウラジオストクという順番で向かえ。その後については随時連絡する。」
「はい。」
翌3月31日、スーニーが日本へ出発したと同時にロシア連邦ムスチスラフ・クジミチェフ大統領が衝撃的な論文を発表した。その内容は2068年に日ロ平和条約に締結された際にロシアが日本に返還した「北方四島が長期的な歴史的な目で見ると、ロシア領であるということ」だった。この論文が発表された結果、日ロ間の対立が高まり、ロシアへの渡航及び戦争が始まった際に戦場となるであろう青森県以北からの避難・侵入禁止となり、青函トンネルは封鎖され海上警備はより一層強化された。そのため、北海道は海に浮かぶ要塞と化した。また、自衛軍北部方面隊(第2師団、第7師団、第5旅団、第11旅団)に加え自衛軍東北方面隊の第6師団、第9師団も順次配置されていった。そして、自衛軍の開発した最新兵器である「M11-7ファイター」は第5旅団に配備された。「M11-7ファイター」とは自衛軍大河内正志(おおこうち・まさし)自衛技官が開発した、AIを用いた装甲兵器である。この装備は着用することにより、大砲はもちろん防ぎ方によってはミサイルにも耐えうる設計であった。また、この兵器の最大の特長は内部の人間が死亡していても、コンピュータが生きていれば動き続けるということだ。この兵器の開発に日本は軍事費の大半を使うほどの熱の入れ方であった。
「ウィリアムさん、日本に来たはいいが渡航禁止になった。どうも入れなさそうだ。」
「そうだな。まさかこんなことになるとは思いもしなかった。そこで一時待機していろとしか言えない。また追って連絡する。」
「はい。」
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