Deepness

三十六計逃げるに如かず

ALFの暗躍と世界危機

第1話

 西暦2214年、地球では人類を中心とし、被造物が共存し合う世界が70年ほど続いていた。200年前までは人間よりも知能がなかったとされていた生き物たちも人間の支配から独立し、それぞれの環境で生活をし、時には他の種族とも交流を持った。当初は、この独立を鎮圧するべきだという意見も出たが、彼らが自分達に手を出してこないと分かると、そんなことを言う人間はいなくなった。彼らは人間の下から独立して70年ほどで急速に進化し、文明は発達した。しかし、人類は培養食料などで人口増加による食糧難を乗り越えたが、彼らにはまだそこまでの技術はなかったため、種族間の争いが絶えなかった。彼らの中には未だに食物連鎖といういわば生命のくびきが残っていた。しかし、今までは上下関係があった食物連鎖も「武器」の登場によって崩れかけていた。そう、生物最大の発明「武器」である。武器の登場によって、均衡する戦いを打開するために戦術が作られ、相手を圧倒するためにも、新兵器が作られた。そして、この物語ではそんな世界の動きについて語っていく。


 -西暦2058年-

 この年、世界を激震させる連続テロ事件が起こった。アメリカ合衆国西部ネバダ州バージニア・シティー郊外バージニア・ゴールドクリーク生物科学研究所を過激派ヴィーガン組織対人解放戦線(ALF)が襲撃したという事件である。ALFはアメリカの主要都市でテロを起こしたり、解放と称して研究所を襲撃していた。構成員の中でも逮捕者が出るが、テロ行為がやめられることはなかった。ここ、バージニア・ゴールドクリーク生物科学研究所は、先代のアメリカ合衆国大統領の資金から設立されたのだか、違法な生物実験が行われているという噂があったが、確証は取れていなかった。しかし、芽は早いうちに摘んでおくということもあり襲撃が決定された。作戦としては、研究所内の情報を盗むこと、動物を解放すること、そして研究所を爆発することだった。

-3月28日午後12時43分-


「突撃まで2分前」


オペレーションが入る。


「いいか、最後に各自作戦を確認しておけ」


そう長身の男が話す。この男がこの突撃部隊を指揮している「アーロン」である。彼らの装備は23年製であったが、訓練を積んでいるため、しっかり戦うことができる。


「10秒前、9,8,7,6,5,4,3,2,1,0。」


そう聞くと、茂みから男たちが飛び出した。全速力で壁まで走り突破。そして研究所の壁に爆弾を仕掛け、爆破した。中から、悲鳴が聞こえる。


「なんだ!?」


と近づいてきた警備員を走りながら撃ち殺すと、逃げ惑う研究員を射殺した。そして、奥部まで突入し、片っ端から動物を解放していった。


「まずい、警察めもう来やがった。」

「早いな。」

「アーロン、撤退だ。」

「だめだ、まだ奥に取り残されている子供がいる。俺はそいつを助けてから合流する、お前らは2部隊に分かれろ。スニーお前は半数を連れてエネルギー供給室に爆弾を仕掛けて、スミスたちは出来るだけ研究所内の情報を集めろ。」

「わかった。」


 アーロンが皆と別れてから最奥の部屋に入ると、そこには生まれたばかりのライオンの子供がいた。


「もう、大丈夫だ。」


といい、戻ろうとすると警官がアーロンに向かい発砲した。手が塞がっていた彼は、弾を避けきれず弾丸で肺を貫かれた。その時にライオンの子供も共に弾丸に当たり、即死してしまう。

 同時刻に、スミスたちも警官と交戦をしていた。激しい銃撃戦が続いたが、ある警官の投げたフラッシュグレネードにより、視界を奪われたところを攻撃され、全員が死亡した。

 一方、スニーたちは爆弾を取り付けると研究所から逃げ出し、無事に帰還する。そして、取り付けた爆弾を爆発させると、突入していた警官は全滅した。その後、スニーたちは残った部隊の人数が5人しかいないと分かると、この作戦が失敗に終わったことも合わせて大きなショックを受けていた。

 この10分間のテロ行為により、ALF側は10人が死亡した。また、研究所所属の23人が射殺され、7人が爆死した。警察側は2人が射殺、28人が爆死した。このテロは即座にニュースで取り上げられ、世界に衝撃を与えるとともに、活動をさらに促進させることとなる。


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