たかしへ お母さんより

子供戦車

お母さん今日は悪の取り締まりをしたの

 たかしへ。


 お母さんです。

 毎日きちんと食べていますか。

 たかしが自分の部屋でパソコンを頑張ってるみたいでお母さんも鼻が高いです。

 でもずっと家にこもりっきりだと運動不足になりやすいから、たまには外に出て遊ぶんですよ。


 お母さんね、今日は悪の取り締まりをしたの。


 お母さん今はグランドアースというところに来ています。

 周りの人たちみんな外国人なのでお母さんちょっと困ってしまいました。

 でもお母さんはお母さんだから、大体何とかなったわ。

 やっぱり言葉より筋肉、対話より暴力よね。

 外国語でごちゃごちゃわからないことを言われても、最後はやっぱりこの手に限るわ。


 それで、お母さん日本語がわかる人を紹介してもらって、通訳をお願いしたの。

 グランドアースっていう国の名前もその人から教えてもらったの。

 通訳さんは親切な人で、色んなことを教えてもらったわ。

「この世界は魔王シャトブリアに支配されている」

 とか、

「このままでは人間は魔王とその軍勢に滅ぼされてしまう」

 とか、

「あなたのような人なら魔王を倒せるかもしれない」

 とか。

 よくわからないけれど、お巡りさんの代わりにお母さんがコラッて怒らないといけないことだけはわかったから、とりあえず行ってみる事にしたわ。


 この国、電車も車もないんですって。今時不便よねえ。

 でも大丈夫、お母さんには主婦の強い味方、ママチャリがあるから。

 たかしを自転車の後ろの子供用シートに乗せて保育園に送り届けていたのが懐かしいですね。

 そのシートは今も自転車に着けたままですよ。

 丁度いいから通訳さんをそこに乗せる事にしました。

 お母さん頭いいでしょう?


 ママチャリを漕いで20分くらいしたら、シャトブリアさんの自宅まで着いたわ。

 すごく立派で大きかったからマンションかと思ったら、一軒家ですって。

 お父さんの給料何年分あったらこんなおうち建てられるのかしらね。

 でもインターホンが玄関のどこにも取り付けられてなかったから、欠陥住宅ね。

 たかし、あなたがマイホームを買うときはしっかりした設計士さんを頼りなさい。

 当たり前にあるようなものを当たり前に設置してくれるのがプロよ、覚えておきなさい。


 シャトブリアさんはよくわからないペットを一杯家の中で放し飼いにしてるみたいで、お母さんを見るなりそれらが沢山寄ってきました。

 躾がなってないみたいで、噛み付いてくる子もいたわね。

 お母さんが「めっ!」ってしたら静かになったけれど。

 でも今度は逆に通訳さんが騒ぎ出しちゃって困っちゃったわ。

 叫んでないで通訳してほしいのにね。


 シャトブリアさんの居るお部屋にお邪魔したら、お母さんすごく怒られたわ。

 しょうがないわね、お母さんピンポン鳴らさなかったもの。

 でもお母さんの言い分も聞いてください。

 ないものは鳴らせないのよ。


 部屋に入って怒られたことで思い出したけれど、たかしのお部屋に入った時もあなたに怒られましたね。

 大丈夫、お母さんはたかしがスクール水着の小学生の女の子の絵を右手のおかずにしていても気にしませんよ。

 小学生の女の子でまたついでに思い出したのだけれど、今月分の漫画雑誌(コミックえるおー、でしたね? いろんな種類があるからお母さん覚えるのが大変です)を買おうとしたのだけれど、グランドアースにはコンビニも本屋さんもありませんでした。

 たかし、せっかくだから外に出る運動も兼ねて自分で買いに行ってくださいね。

 それとお部屋のティッシュで一杯のごみ袋もついでに捨てなさい。

 あなたったらすぐ袋をティッシュでパンパンにするから、レジ袋が有料の今のご時世ではゴミ袋を用意するのも大変です。


 話を元に戻しますね。


 シャトブリアさんは怒ってお母さんを叩こうとしたのだけれど、お母さんはお母さんですからね。

 髪の毛毟り取ったり、お尻ぺんぺんしたり、ジャーマンスープレックスしたり、鼻の穴に指を突っ込んでジャイアントスイングをしたり、鬼殺しを目から飲ませたり、布団叩きでスマーッシュ! ってしたり、金玉をキンキーンってしたり、色々と「めっ!」ってしたら物理的にちっちゃくなって、反省してくれました。

 懐かしいわね、たかし。


 とりあえずシャトブリアさんは、

「これまで悪い事してきたのはすべて謝罪します、生きている間にもう悪い事はしません」

 って言ってくれたわ。

 お巡りさんがいないからって好き放題やっちゃいけないわよね。

 わかってくれてよかったわ。

 でも大人同士のお話をしているのにおしっこを漏らすのはどうかと思うの。

 おしっこで思い出しましたけれど、たかし、ペットボトルにおしっこを溜め込まないでくださいね。

 たかしの事なので大丈夫だとは思いますが、それがきっかけで飲尿や変な性癖に目覚める事がないか、お母さん心配です。

 あと、お土産に世界の半分をくれるらしいわ。

 お母さん食べきれる自信がないから、たかしにも半分あげます。

 生ものだから早めに食べなさい。

 勿論、お父さんには内緒ですよ。


 確か冷蔵庫の卵が少なくなってきていたと思うので、帰りにサンクスマートに寄ってお買い物をしてきます。

 多分夕ご飯の時間までには帰ってきます。

 それまでにたかしも世界を救うんですよ。

 お母さんだって世界を救うヒーロー!

 ……の、お母さんになれたら、近所のおばさま方に自慢できますからね。


 たかしの事が大好きなお母さんより。

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