第38話 指向スーサイド
間一髪、間に合った――
ギリギリの瀬戸際に身を躍らせながら俺は運命に感謝した。
ステータス的だけでなく自分の運の無さを常日頃から俺は誰よりも自覚している。
今回の深層部への転移にあたり、俺が懸念したのはまさにこの点だ。
ウルカさんの持つ魔道具ダンジョンシーカーのお陰で、ミズキ達のおおよその場所の検討はつけられた。
問題は術師でない俺の場合、転移の座標が若干ずれる可能性があった事だ。
勿論フラノダンジョンの様に【石の中にいる】状態にはならないものの、うっかり壁一枚を隔てれば合流まで大きなロスタイムになる。
最悪の事態を迎える可能性を少しでも軽減させたい。
だから俺は――
事前にパラメータジャグラー発動させた。
現在L3にまで成長し、得ている30P。
これを全部、幸運値にぶっこんだのだ。
結果は上々。
転移後の平衡感覚酔いが体を捉える中、目前でミズキに襲い掛かる業魔を視認。
圧倒的な数の前に押し倒されるミズキ。
その背後には気を失い倒れ伏すミズキの後輩たち。
あいつの事だ、きっと身を挺して守ろうとするだろう。
そうなれば結末は明らかだ。
無論――俺達がここに来た以上、そんな事はさせない。
隣に俺同様転移してきたコノハへアイコンタクト。
了承を得るよりも早くレベルアップと共に思考するだけで操作出来るようになったパラメータジャグラーのポイントを、今度は全て速力値に割り振る。
全力移動――
前代未聞の速さに驚愕するも、何とか意識を合わせ両腕の刀を振るう。
俺の学んだ柳生心眼流の真価は乱戦にある。
天地陰陽の構えから円を描き山勢厳の構えへ。
周天と名付けられた型と共に、両肘を支点として刀を縦横無尽に振るう。
その動きはさながら風車か竜巻か。
ステータスアップに支えられた今の俺を止めれるものはいない。
しかし――多勢に無勢は確かだ。
モンスターハウスに匹敵するこの大勢を馬鹿正直に相手にしていては打ち漏らしが出るし、いずれ限界を迎える。
勿論、その為の打開策も持ち合わせている。
「コノハ!」
「うん!」
俺が強引こじ開けた業魔の群れ。
大群が蠢く中央を素晴らしい速さで突っ切り、コノハがミズキ達に到達。
俺と共にミズキ達を背にすると狭い玄室へ押し入ろうとする業魔達と向き合う。
これで――すべての条件は整った。
この角度ならミズキ達へのフレンドリーファイアによる被害を気にする必要もないからだ。
「――やれ、コノハ!」
「任せて。自己犠牲自爆呪文(め〇んて)・改!」
刹那、ダンジョンを揺るがす轟音。
圧倒的な閃光と爆風の乱舞
有象無象いた業魔達は瞬時に消し飛んでいく。
それは自分を爆心とし周囲を無差別に破壊する自爆呪文ではない。
ここ半月の特訓の成果生み出された改良版。
指向性自爆呪文――
通称クレイモアと名付けた新しい自爆呪文の初披露だった。
『名前 狭間ショウ
職業 遊戯者トリックスター(大器晩成型)
LV 17
HP 155
MP 35
筋力 45
速力 45(+30)
体力 45
賢明 45
幸運 45
特技 パラメータジャグラーL3(30P)
ステータスに任意でL×10Pを付け加える事が出来る。
各項目ごとに割振り可能でいつでも何度でもやり直し可能。
マルクパーシュ L1(消費MP1)
定められた運命への反逆、嘲笑う言葉。
最大制約数L×一文字。
因果律への介入、現実事象への干渉を可能とする。 』
『名前 咲夜コノハ
職業 勇者(特技特化型)
LV 24
HP 91
MP 53
筋力 35
速力 49
体力 38
賢明 42
幸運 89
特技 自爆魔法L1 メ〇ンテ 自己犠牲呪文
生命力を攻撃力に転換し、
敵全体に大ダメージ 術者は死ぬ
自爆魔法L2 メ〇ルーラ 街犠牲呪文
行った事のある街を犠牲に
ダンジョンに大ダメージ 街は死ぬ 』
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