第9話 最終回
火事が起きてから数日、ノワール公爵領は大騒ぎとなり、跡継ぎを、失ったノワール公爵は、肩を落とす事となる。
しかし、ハルトの落とし種のジェイコブを時期、ノワール公爵にするべく奔走するのだった……。
そんな慌ただしい日々が続く中、ソフィアはノワール公爵と話をする機会を作って貰う。
「お義父様……お聞きしたいことが…。」
そう言ってノワール公爵邸の応接間でソファーに腰をかけ、向かい合う二人は、ゆっくりと話をはじめる。
「ああ、解っている……。聞きたい事と言うのは、『レイラ』の事だろう?」
ゆっくりと頷くソフィアに、ノワール公爵は言葉を続ける。
「あれは、ハルトが学園を卒業した頃の事だか、当時私は魔法具工場の発展の為には何処か大きな鉱山を持つ領地の令嬢と結婚させるべくアイツの結婚相手を探していたんだ……。まぁその中にヴェール侯爵家も入っていたが、まだ君は学生だった……後二年すれば話も進められるだろう……そんな事を考えていた矢先、ハルトはメイドの『レイラ』と結婚すると言い出したんだ。」
そこまで話したノワール公爵は、目を閉じひとつ溜め息をつく……。
「お義父様はそれを、反対なさったのですね?」
ソフィアがそう声をかけると、ノワール公爵は眉間にシワを寄せ、怒鳴るような口調で、
「ああ、そうだ!当たり前だろう!この先もノワール公爵家を発展させ続ける為には、メイドなんかと結婚させられる筈もない!まぁ、愛人として側に置くにしても、政略結婚とは言え、何処かしらの貴族の令嬢を妻として迎えるんだ、そんなコブ付きがいるのが分かっているような所に……。」
当時を思い出したのか、ノワール公爵は側に置いてあるステッキを壁に投げつける!
「お義父様……。」
肥をかけたソフィアにノワール公爵は、
「ああ、すまない……取り乱したようだ…それで……そうだな、幾らかの金を『レイラ』に握らせ、親元に帰そうとしたのだが、ハルトは断固として歯向かってきた……。そこで私は魔法具工場に『レイラ』を呼び出し、そこで始末しようと……」
右手で顔を覆い、俯く公爵……。
「魔石の海に『レイラ』を突き落とすところまではよかったんだ……そして何処かに埋めてしまおうと……しかし、ハルトはそれに気付いて、あれを助け出そうと……右手だけが魔石から出ていただろう?それはそう言う訳だ…。まぁ、それからのハルトは人が変わったように塞ぎ込んだ……そう言う訳だ……。満足したか?」
そう問われたソフィアは、
「ええ、分かりました…。お義父様、ありがとうございます。」
そう返事をし、ソフィアは微笑むのだった。
公爵婦人ソフィアの結婚 業 藍衣 @karumaaoi
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