第24話 歴史の移り変わり

前書き

 2023年元旦 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。



ユニは再び猫に戻り、俺達は村を散策した。出来上がった村は、前とそっくりだった。そっくりというレベルじゃない. 寸分たがわず一緒と言うべきものだった。


(始まりが同じでないと、意味がありませんから)


 俺が驚いていると、それが当然とばかりにユニが囁いてくる。本当にただの実験としか思って無い様だ。壊れる前の世界でもそうだったんだろうか。そう考えると少し腹立たしく感じる。

 ただ、暫く村で過ごすと村人の性格に確かに違いがあるのがわかる。最初の村と違って、力や知力に優れたものはそれなりに尊敬を受けていたし、羨ましがられてもいた。畑を大きくして、より多くの家族を養おうと考える者もいた。村人それぞれに個性が感じられる。


(では、再度千年後を見てみましょう)


(そんなに世界を千年ずつ放っておいていいのかよ)


 俺達はタイムマシンで千年後に行くわけじゃない。別の世界で、謂わば千年間眠って、起きたら千年後とかいうものだ。俺達にとっては一瞬だが、実際には時間が進んでいる問題は無いのだろか、と考えてしまう。


(仕方がありません。それ位のスパンでないと、歴史の移り変わりというのは分からないものです。十年ぐらいですと人暮らしぶりが、百年で時代の流れが分かるぐらいなのですから)


 そんなものか?うーん。確かにこの文明レベルだとそんなものかも知れない。時代によっては百年で目まぐるしく変わった事もあったが……


「また千年後に飛ぶらしい。お前は何か意見は有るか?」


「いいえ。それぐらい経たないと判断が出来ないのでしょう?私もそう思います」


 ルイーダも見かけによらず、時間間隔はユニと似たような感じだった。というかこいつ何歳なんだ?女性に歳を聞くのは失礼だから聞かないでおくが……決して聞くのが怖いからではない。


(問題はないらしい)


(それでは、千年後に……)


 村の外れにまで行くと、フッ、と周りが一瞬ぼやけた後、俺達はまた村の外れにいた。今度は滅びていない。だが、外から見る限りそんなに変わったようには見えない。


「千年でこれかよ……」


 そうは思ったが、一応また散策してみる。千年前と同じように、見知らぬものにも拘らず、俺達を温かく迎えてくれる。それは好感が持てる。


 それに、一応前よりは発展はしていた、毎日同じことの繰り返しではもちろんなかったし、働き者と言われる者の家は、他の家より大きかった。ご飯の献立も変わってる。少なくとも自分が魔法で出す保存食よりは、まともなものが出てくる。

 平和な農村そのもの、って感じだ。


「悪くないじゃないか。極端な貧乏人もいないようだし、老いて働けなくなったものは、子供がいなくても、皆が助けているみたいだしな。ずっと住むには退屈な村だがな」


(まだ初期の段階ですから。少しづつ発展すると思いますよ)


「そうして、富を集めたものが、無いものを踏みにじる世界が出来るのね……」


(いえ、それはありません。ルイーダ様がそのような事はお許しになってませんから。人口が増え、その中で身分の差は出来てくるでしょうが、それによる貴賤は無いでしょう。その内王と呼べるものも現れるでしょうが、身分に合った仕事をするはずですよ)


「人々の為に尽くす善良な王か。そりゃ最高だな。そんな王がずっと続けばだがな」


 何代にもわたって、ずっと名君が続くなど聞いた事がない。人間は贅沢や楽を覚えれば堕落していくものだ。


(問題ないようでしたら、また千年先に行きましょう)


 まあ、千年でこのくらいの発展度合いだったら、次の千年では町ぐらいまでかな。そんな事を考えながら、またユニに千年先まで連れて行ってもらう。


 そこはまたしても廃墟になっていた。廃墟の様子から推測すると、一応最初の村の10倍くらいまでの人口にはなったようだった。


「今度は何で滅んだんだ?またも食糧難で、みんな仲良く餓死した訳じゃないよな?」


 俺は人型に戻ったユニに尋ねる。


「それが不思議なんです。確かに少しずつではありますが、人口は増え、それから町と呼ばれるようなところまで発展しました。ですが、ある時を境に少しずつ人口が減り始めました。人口が減り始めて、滅亡するまでは、加速度に早くなりましたね」


「なぜだ?」


「私にも分かりません。おそらく子作りに関して何か問題が起きたと思いますが、その手の事は、私には分かりにくい事ですので……」


 ユニは言いにくそうに答える。おそらくユニは人の感情というものの詳細が分からないのだろう。神なんて人の感情なんて気にしないものだ。思考回路自体が違うに違いない。


「それだけ言われても、俺にも分からない。考えてみるから、なんか資料をよこせ」


 仕方がないので、自分で考えてみることにする。どうせルイーダはあてにならない。子作りに関してなんて聞いたあかつきには、聞くに堪えない悲惨な過去を聞かされるに決まっている。

 それはともかく、俺がそう言うと、ユニは直ぐに分厚い資料の紙束を差し出した。これを全部読めってか……多すぎる。多分読むだけで一週間はかかる。


「流石に多すぎる。もっとまとめた奴をくれ」


「これがそうですよ。これ以上は何を削ればよいのか分からないのです」


「だが読むだけで一週間はかかるぞ」


「何か問題でも?」


 やっぱりこいつとは時間感覚が合わねぇ。多分ルイーダも同じだ。俺達の話を聞いていて、何も言ってこない。こんな時こそ味方しろよ。普段は余計なんだよ。そう思いながら、俺は軽くため息をつき、諦めて分厚い資料を読み始めた。

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