あさぼらけ

浅緋 アル

ぺトリコールと響く足音

 石畳の道を踏みつけるようにして街を歩く。履きなれない靴の底がぶつかり、コツコツと硬く乾いた音をたてる。その石畳を飾りつけている枯葉が踏まれて、しゃかしゃかと薄く乾いた音を奏でていく。

 少年は、延々と続く白い建物と石畳の無機質な風景を横目に、どこを見るでもなく、ただただ足を動かしていた。

 石と枯葉。

 どちらも自然のものである筈なのに、人間によって形を変えられ、住処を変えられて__人工的で、無機質で、なんだか暖かみがなくて、どこか冷たくも感じられる。

 そんなふうにさえ思えるのは日も傾いて辺りは薄暗く、おまけに雨上がりで空気が湿っぽいせいだろうか。

 何の前触れもなく足を止めて、少年は短く息をつく。ただの呼吸のようにも、ため息のようにもとれるものだった。

 気持ちを切り替えるように、先刻まで降っていた小雨ですこし湿った前髪をすくって流す。そこで彼は、左手の指の隙間から陽の光を感じた。そこで初めて、「なんとなく」ではなく、自分自身の意思をもって空を見上げると、灰色の雲の隙間から一筋、光がさしている。

 快晴とはいかない。

 雲もまだ厚い。

 雨上がりの虹も出てはいない。


 少年ははただ、いつもの道をかけていく。

 しかし、少し晴れ晴れとした顔をしているようにも見える。

 軽い音をたてて、少年がかけてゆく。

石畳を蹴っとばして。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る