第2話 28歳のいま

 そんなこんなで現在28歳。何が起こっているだろうか。

 仕事では一通り一人で行うことができるようになり、なんなら指導する立場となってきた。かつての自分の上司のように、理不尽なことを言ったり、高圧的な態度をとらないと心に誓っている。周りからは甘いと言われるが、これらのような指導は無意味だと思っている。自尊心や主体性を損ねてほしくないのだ。ただ、本人に考える力や対応力をつけさせるためにどのような声かけや行動が必要かなど考えなければならず、そこに面白みを抱き始めたところだ。

 お局や理不尽な上司の対応に慣れてきて心を殺すことができるようになったが、全く傷つかないわけでなはい。仕事の経験年数もまだまだ未熟のため、意見をすることも難しい。板挟みになることもしばしばあり、同期で愚痴り合うのが精一杯だ。仕事後のビールが最高に美味しい。少し汚い、けど美味しい飲み屋に一人で入れるようになった。

 金銭的にすこし余裕が出てきたように思う。少しだが蓄えもできてきた。少し良いドライヤーを購入したり、ドラム式洗濯機に買い替えたり、家にもお金をかけるようになった。ブランドものの新作を買うほど裕福ではないが、新作の化粧品などはチェックしている。

 SNSを見れば、怒涛の結婚・出産ラッシュだ。結婚報告の写真(婚姻届に指輪をのせて撮った写真とともに投稿されているのが相場だろう)、産休報告、出産報告、以降は己の子供の写真が永遠に投稿されている。もちろんおめでたいという気持ちでいる。投稿に写っている子供たちは可愛らしく、いつか自分もこんな家庭を築くことができたらいいなと思っている。概ね微笑ましい気持ちだ。一方で、このような投稿が牙を剝くことがあるのも事実だ。

 私は結婚を延期されている。今年入籍予定だったが、相手から延期を提案された。事情は納得できるものであったため、その提案を受けた。しかし、入籍に当たって、女たる覚悟を決めたあとのことであったため、衝撃は大きかった。

 結婚するにあたり、両親にどのように報告・挨拶をするか、苗字が変わることへの覚悟、各種手続きや名前の変更、出産に伴う身体の変化(これについては些か気が早い)など、一通り覚悟を決めていた。周りへどのように報告するかも楽しみに考えていた。その矢先に結婚が延期となったのだ。そうなると、今まで見ていた物が、少し色を変えてくる。今までの微笑ましい投稿を見るたびに、ほんの少しずつ傷口をえぐるのだ。1回の攻撃は大したことはない。しかし、これが何十回、何百回と続き、気づくと深傷を負っているなんてことがある。厄介な生態だ。見なければいいものを、SNSから抜け出せなくなっているため、自ずと見に行き、傷を負って帰ってくるのだ。

 そんな28歳を過ごしている。

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