議事録3『図書室へのライトノベル設置について(あるいは生徒会長の苦労)』
会長「はい、というわけで今日も
勇者『何がライトか分からないアレか?』
魔王「ふむ、すまんがラノベとやらが何か教えてくれぬか」
勇者『俺らみたいな存在が跳梁跋扈してるのがラノベなんじゃね?知らんけど』
魔王「なるほどわからん」
会長「えっとねー、ライトノベルって若者向けの娯楽小説のひとつでさ。最近は陰キャが異世界に転生して強すぎる能力ゲットしてヒャッハー無双したり、巨乳な女の子とイチャコラしたり、悪役令嬢がこのままだと破滅するからってフラグ折ろうと奔走してたら何か愛されてたりする話が多いかな。で、アニメっぽい絵柄の挿絵が入ってることもある」
勇者『なんでもアリなのは伝わった』
魔王「よくわからんが、かなり俗というか夢見がちな内容という事か。なるほど、一種の逃避だな」
会長「まぁ、そうね。で、そういう小説にも一定の需要があるからさ、そりゃ図書室に置いてくれっていう意見も出るよね」
魔王「して、学び舎にそのような俗な書物を置くのは許されるのか?」
会長「図書室担当の先生はダメって言ってる」
魔王「では、結論は不可という事ではないか。これにて会議終了だな」
勇者『そういえば、前にウチのやんちーがカチコ……もとい隣接校への視察に行ってたから制圧兼ねて見学させて貰ったけど、そこにはあったよ』
魔王「お前はしれっと何をしておるのだ……」
会長「カチコミ!? これ図書室にラノベ云々よりそっち先に処理した方がいいんじゃない!?」
魔王「そうだな。まずはその学校を制圧し、世界征服の一歩とするか」
会長「魔王様は世界征服をおやめくだされ」
魔王「やだ!やめない!」
会長「駄々っ子か!!」
勇者『ワロタ』
魔王「昨日見ていたテレビ番組の台詞を使ってみたのだが。当世風ではなかったか?」
会長「うーん。どちらかというと当世の子供風かな!」
魔王「それにしても、あのテレビとかいうカラクリは素晴らしいな。元居た世界でも再現できないものか」
勇者『魔法でなんとかなるやろ。だって割となんでもありだし』
魔王「魔力を使えぬものでも使用できるというのが、技術のすばらしさだ」
勇者『てか神器化してるとはいえ、俺が使ってる417作れてる時点で、それなりの技術あると思うんだけどなぁ』
会長「えへへ~、魔王に褒められたら何か地球の人間代表として嬉しいなぁ……べつに代表してないけど……。あと勇者、それ言うたらアカン」
魔王「別にお前が開発したわけでもあるまいに」
勇者『まぁ割と由来不明ではあるからな。アレも。てか魔法あれば基本テレビなんていらんと思うんやが。千里眼的な魔法とか普通にあるし』
魔王「テレビの良いところは、送る情報をコントロールできるところだ。うまく使えば、虚偽の情報を流して愚民どもを躍らせる事もできよう」
会長「使い方がまさに魔王。まさに外道」
魔王「我の掌の上で踊るが良い」
勇者『洗脳魔法で事足りる。勇者始める前色々やってたから知ってるけど、洗脳魔法ほぼ時間かからんし楽よ?』
魔王「同時に多人数、かつ複数の場所には不可能であろう?お前ほどの使い手ならできるかもしれんが」
勇者『あー。どうだっけなぁ……』(悩む仕草)
会長「お待ち!! 勇者あんた洗脳魔法つかって何やってたの!?!?」
勇者『んーとね。山賊とか海賊とか洗脳して王国兵士に集団戦とか山や海での戦闘のノウハウ教えさせたりしてたこともあった。アレは、一人一人個別にかけてたけどね。ちなみに別の場所に居る多目標を同時に洗脳したこともあった』
魔王「つくづく所業が勇者とは思えんな」
勇者『国王他相当数の臣下洗脳して兵役逃れたことが何回か。ちなみに勇者の誘いも洗脳で逃れたことが100回くらいあるかな』
会長「……乱用しすぎちゃう?」
魔王「勇者の誘いを断る勇者……いかん、不可思議な矛盾に頭痛がしてきた」
勇者『頭痛が痛い。あるいは、腹痛が痛い。って話かい?』
会長「全然ちゃうわい。……さて、ラノベの話に戻すけどさ」
勇者『…………今思ったけど、自販機問題といいこの問題といい先生たちを俺が洗脳すれば割と事足りるんじゃないかと思ったりしたんだけど、どう?』
魔王「名案だというとでも?」
会長「却下ァ!! そんな非人道的行為を使うなァ!!」
魔王「そもそも武力制圧して恐怖支配した方が早いしな」
会長「それも却下ァ!! 生徒会は生徒の自由を守るための場所なんだよ!? その生徒会が恐怖政治敷いてどうする!!」
魔王「生徒を引き締めるのも我らの仕事であろう」」
会長「それはそうだけど手段に問題がありすぎるのよ!!」
勇者『魔王引き締めるところから始める必要あるくねコレ』
魔王「なに、一度見せしめをしておけば今後やりやすかろう」
勇者『最初の見せしめにちょうどいいやつが目の前に居ると思うんだけど。ね?会長』
会長「それただの内輪もめやろがい!! そろそろ本題に戻らせてくれ」
勇者『そう言えば、自販機の件はどうなったん?』
魔王「それなりに圧は掛けてやったつもりだがな。青ざめた教師共の顔はなかなか見物であった」
会長「あぁ自販機ね。アレは結局置くってことになったよ。いい感じに予算捻出して体育館の方に2台ほど設置するって」
勇者『おー。良かった良かった』
魔王「やはり我の
会長「まぁなにはともあれ置くってことになってよかったね!!」
勇者『脅迫(土下座)ってオチかな。どうだろう』
魔王「いや、要求を呑まなければ体育館あたりを更地にしてやろうと提案しただけなのだが」
会長「最悪じゃねーか!!」
魔王「安心しろ。お前に迷惑が掛からぬよう、議論が終わった後にこっそりやっている」
会長「そういうのが一番良くないんだけど!? 私が監督不行き届き処分受けちゃうじゃん!! ……まぁそれはいいや。んでラノベだけど、これは置かない理由は図書館担当の先生から聞いてるのよ」
勇者『ほう』
魔王「現実を直視しろと?」
会長「んー、魔王が言う通り内容がアレってのとか、表紙の露出度が高すぎるっていうのもある。でもそれ以上にシリーズが長すぎて全巻揃えようとすると予算が足りないって話になってくるんだって」
魔王「また金か。おい勇者、貴様が寄付してやれ。うちの城からかっぱらった財が残っておるだろう?」
勇者『一旦次元の壁に穴開けて創造主と相談させて欲しいんだが?』
会長「親並みの気軽さで第四の壁の向こうに助け求めるな!!」
魔王「もうそれはよせ!」
勇者『はいよー』
魔王「いっそ、我や勇者の辿ってきた来歴を物語にして蔵書に加えるというのはどうだ?皆の好む冒険活劇になると思うが」
勇者『あー。決戦の最中、謎のピクシー的キャラクターから《30分以上戦闘が続いています。休憩しましょう》って言われて挟まった休憩の最中に聞かされた、1023人のイカレ勇者の話とか?』
会長「何その千夜一夜物語みたいな話。聞かなくても滅茶苦茶なのわかりすぎて逆に読みたいわ」
勇者『魔王城に大量の蜂蜜ぶちまけて帰った勇者が居たり、負けて帰る時ついでに魔王城お堀の水抜いて外来種駆除してった勇者が居たり、キノコ食ってデカくなったり小さくなったりする勇者にマホカ○タとかメ○ゾーマ使う勇者も居たとか』
魔王「うちの中庭で暢気にキャンプファイアーを楽しんでた勇者もいれば、団子の串を唯一の武器として向かってくる変わり者もいたな」」
勇者『そんなヤツいたの!?』
魔王「団子の串で我を傷つける者がいるとは思わなかったぞ」
勇者『俺が言えたセリフじゃ無いのはわかってるが言わせてくれ。滅茶苦茶だ!!!!』
会長「ねえ……君らの世界の勇者やりたい放題過ぎない? そこの勇者含めて」
勇者『てかしれっと最強法務部と言われる某社から訴訟飛んできそうな奴ら交じってたのスルーされてない!?』
会長「何か突っ込んじゃいけない気がした」
勇者『なるほど』
魔王「ちなみに、団子の串の勇者の必殺技は『千本桜餅』だったぞ」
勇者『ボカロに似たタイトルの曲無かったっけ?』
魔王「曰く、花より団子だそうだ」
勇者『それも似た名前知ってる……』
魔王「肝心の技の内容はというと、団子の串の先端に桜餅を模した粘着爆弾をくっつけての投擲だった。わざわざ数えてはいないが、あれはおそらく、文字通り千本投げてきたな」
会長「トリモチ!?」
魔王「本人曰く、準備するのに四時間くらいかかったらしい。いざ実戦で披露してみたら、使い切るまではたった数秒だったのにと空虚な目をしていたな」
会長「コスパ悪すぎ!!」
勇者『ワロタ』
魔王「そんな阿呆だが、我の体に傷をつけた貴重な勇者ではある」
勇者『アンタの体に傷を付けれるやつそんなに少ないの!?』
魔王「そうさな……八十人に一人くらいの逸材だと言えばわかるか?」
会長「絶妙な割合!!」
勇者『12~13人くらいですか』
魔王「今思えば、一年あたりコンスタントに数十人は勇者が湧いては魔王に挑んでくる世界って、控えめに言ってクソだな」
会長「勇者の過剰供給じゃん!!」
勇者『まぁ魔王憎しの憎悪凄かったからねぇ……』
魔王「それにしても湧きすぎではないかと言いたい」
会長「まぁ、確かにそんなにいっぱいいれば千と一勇者物語とか書けそうだよね」
魔王「あまりに数が多すぎて、むしろ真っ当な勇者ほど記憶に残っていないという不思議現象がだな」
勇者『そう言えば王様に言われてたな。過去130年間だけでも10万人近く勇者送り出したって』
魔王「もう、一つにまとめて軍隊として運用しろと言いたい」
会長「ド正論!!」
勇者『軍隊にしたら都合が悪いんだとさ。どいつもこいつも何らかの能力に長けてるからまとまられると負けるらしい』
魔王「社会不適合者の掃きだめのように聞こえるのは気のせいか」
勇者『知らん。たぶん気に入らんやつ追い出してってるだけだろ。割と人気の役者とか詩人とかも勇者にさせられたらしいし』
魔王「むしろそっちの王こそ魔王では?」
勇者『かもしんない。でもこれが人間世界じゃ当たり前っちゃ当たり前だし』
魔王「わかったか、会長。この世界がどれほど恵まれてるかという事が」
勇者『こっちも世知辛くはあるって結構聞くけどね』
会長「あーまぁ、わかったけど……図書館にラノベ置くかどうか問題はどこ行っちゃったのよ。散歩?」
勇者『散歩ついでに帰ったんじゃね?』
魔王「論ずるに値しないような些末な問題だったという事だろう」
会長「帰ったんなら今連れ戻すね。そんで些末って言うな! 問題が泣いちゃうよ!」
魔王「むしろ、問題に泣かされるのでは」
勇者『あと、魔王・勇者の2人な』
会長「生徒会長は泣きません。財布を落とした時とフラれたときと勇者と魔王がこの世界で大乱闘始めたとき以外は泣きません」
魔王「大乱闘?そんなことした覚えがないが。せいぜいじゃれあいや小突き合い程度だろう」
会長「これからしたらの話!! どうすんの君らの大乱闘で校舎ぶっ壊れたり校舎があった場所にクレーターができたりしたら!!」
魔王「付近一帯を更地にして、物理的になかったことにするか」
勇者『そしたらたぶん俺らは連れ帰されるよ。壁の向こうの存在に』
会長「自業自得じゃ!!」
魔王「で、だ。話を本題に戻すといっても、他に議論できるような内容もなかろう」
会長「まぁね……この議題は予算どうにかしろって上告するってことで問題なさげかな」
魔王「もう生徒会自体が、生徒が教師陣に意見を具申するための手段になってはいまいか?」
会長「あ、安心して。OBOG諸氏も全員それ言ってるから」
勇者『あと、俺と魔王も具申の手段に使われてるよね』
魔王「……会長も苦労するな。部屋に胃薬でも準備しておいてはどうだ」
会長「安心して。胃薬も頭痛薬も常備してるから……段ボール何箱単位で……あはは」
魔王「ふむ、積極的に手を貸してやろうという気が起きる程度には哀れだな。ここはやはりアレをやるか……?」
勇者『便利屋やってた期間比較的長かったし、継続治癒魔法かけておこうか?まぁ、自覚はあるし』
会長「自覚あるんかいっ!! でもツッコミ入れる元気あるからまだまだ大丈夫よ! ヴェハハハ!」
勇者『アカン。会長がぶっ壊れた』
魔王「勇者よ、帰りに少し時間を寄越せ。例の計画を実行に移す。こやつが見苦しすぎて放置しておれん」
勇者『何やるん?』
魔王「学校でのヒエラルキーの頂点にこいつを据える。反抗するものは全て潰す。我々好みの、シンプルでいい案だろう?」
勇者『あー……一気にやると色々狂うからちょっとずつソフトにやってくなら良いんでね?』
魔王「そうだな。まずは第一段階として、校長室への襲撃から行くか」
勇者『洗脳魔法もレベル低いやつなら同時多目標簡単だし』
会長「却下ァアア!!」
魔王「そちらは有象無象の生徒共に頼む」
勇者『あいよ』
会長「……はー、びっくりして正気に戻っちゃった。君ら私が知らないところで何計画してんの? 会長おこだよ?」
魔王「ふむ、ようやく直ったか。やはり貴様はそれでよい。上に立つ者は、弱みを見せてはいかん。心が折れそうになったら、自分という抑えがなくなった時、我々が学校そのものを改革しようと画策するであろう事を思い出して踏み止まるがよかろう」
勇者『なんとかなったね。魔王』
魔王「ああ。日頃の行いの悪さの賜物だな」
勇者『確かに』
会長「やだよそんな踏みとどまり方……もうちょっとマシな踏みとどまり方用意してよ頼むから。たい焼き奢るから」
魔王「いや、今日は我が奢ってやろう。たまには労われる側になるのも経験だろう」
勇者『茶番劇繰り広げてる間にサラッと治癒魔法もかけておいたしたぶんそろそろ効き始める頃じゃない?』
会長「……あ、確かになんかちょっと楽になった気がするや。ありがと勇者。魔王も今日は有難く奢られるよ」
魔王「ああ。もちろん、利子はトイチだからな」
勇者『そこで取るな』
会長「10日で1割!?」
魔王「利子分は生徒会の活動で返すという事で良かろう。……では、帰り支度をして寄り道と洒落込もうか」
勇者『あ。俺ちょっと用事出来たから片付けてから合流する。後で場所教えて』
魔王「別に勇者は必要ないから来なくてよいぞ。今日は会長の慰労会故」
勇者『生徒会関係職員とか校長に今まで見聞きした生徒会の現状の記憶流し込んで色々カタつけてくる』
会長「勇者ァ!! 君はもう少し『非暴走不服従』を覚えなさーい!!」
勇者『非暴走はともかく不服従はなんで!?』
会長「いや、君らの事だからどうせ校長とか教師陣に服従なんてしないでしょ? だからせめて非暴走だけは覚えて帰ってね! 生徒会長との約束だ!」
魔王「よかろう、断る」
勇者『へーい。やだね。ま、どこぞの魔王と違ってこっちは会話でなんとかするし良いだろ?』
会長「でも勇者パワー使ってヤバいことし始めるでしょ! 会長知ってるんだぞ!」
魔王「お前も人の事は言えまい」
勇者『勇者パワー使うと次元の壁壊れるからそっちは使わない。それに、魔法使ったとてこういうところだとどうしてもガタが出るから使った方が不利。特にこっちの世界だとね』
会長「思ったよりちゃんと考えてて草」
勇者『処世術』
魔王「強かでなければ生き残れないからな」
会長「強かすぎるわ!!」
勇者『便利屋やってるとこういう事とかも自然と身に付くし。いつ向こうに戻れるかわからんけど体験してみる?』
会長「謹んでお断りします」
勇者『だよね。よしじゃあ、行ってくるわ』
魔王「うむ、ゆくがよい」
会長「いってら~。お手柔らかにねー」
勇者『おう』
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