フィルムとぐるぐる 2022~

N.river

2022年

サリュート7 ー2022.1.7.

監督:クリム・シペンコ

2016年



「宇宙の逆境感に半端なし」


アポロ13やファーストマン、ゼログラビティ、強引に含めるならインタステラ―など、

アメリカ映画における宇宙を舞台にした作品は多く見てきたが

ここへ来て実話ベースのロシア作品はインパクト大だった。

ということで、アマゾンプライムビデオにてウクライナとの戦争が始まる直前に滑り込み鑑賞。果たして今、プライムビデオにてこの作品がラインナップに残されているのかどうかは知らない。

もちろんソレとコレは正直関係ないはずだ、と言いたいところも、微々たるものだろうと戦争資金に寄与することとなるのか、と思えばなんだか複雑な気分にもなってしまう。


もとい。


そもそもロシアと言えば古くより、いやまず最初に、コンスタントに宇宙へ参入した大国である。国の威信がかかっての見栄っ張り開拓精神だろうと、先駆者ならそこに映画化できるようなエピソードや資料は事欠かないのではないかと思えてならい。

ゆえにか、こなれ感すらある肩の力の抜けた、しかしながらリアリズムあふれる本作の映像には余裕さえ感じる。

物語の中には当時、真っただ中だったアメリカとの冷戦も描き込まれており、よりリアリティを感じることができ、演じる押さえた演技の俳優陣にも煽られることなくシンプルに引き込まれた。

アメリカ映画と双極を成して過不足なし。

同カテゴリーにおけるテイスト違いの出来ばえだと鑑賞した。


それにしてもだいたいどの作品もそうだが、

最後のフロンティアと呼ばれる宇宙の逆境加減には半端がない。

生身の人間の無力さとひ弱さが、むき出しにされる。

だからこそ精神と知恵が毎度、試されるようで、

ヒリヒリ感と先の読めなさがたまらなかった。

実話ベースということなのだから、挑み、切り抜けてきた主人公らにはただただ、グッジョブを送りたい。


国を讃える内容だから、きっと国も製作を後押ししてくれているんじゃなかろうか。

思わずにおれないほどに今のところ、ロシアの宇宙と戦争ものにハズレなし。



ここで描かれているものは「宇宙」「SF感」というよりも人間ドラマである。

そしてドラマには、物理的、精神的困難が王道とつきまとい、

(それがないと成り立たない、というわけではないが)

困難が手強いほどドラマは盛り上がる。

本作の場合この困難とは「死」だ。

一歩どころか半歩も間違えると即、死につながる宇宙空間はしかも、

相棒と二人きりの閉鎖空間でもあったなら、逃れようない二重の困難に縛られているのが主人公、という事になる。

これはもうデキスギ、なくらいの設定だが、現実に処理された事故だったのだから、ツクリバナシのやり過ぎ感に怯むことなかれ。むしろオーケーなのではなかろうかと感じてしまった。

いや、ツクリバナシなのだから徹底して突き詰め、そんなのありか、と思わせるほどの困難を用意するくらいがやはり良い。

だが、徹底させる。

その一点突破こそ案外、書き手を試すところで、知恵と想像の広げどころだろう。

なら突破を可能にするためにも、こうした実例を脳内に格納、サンプルと保持しておくことは大事かもしれず、知見を広げるための好奇心や逸脱する遊び心こそ忘れたくないなと感じた次第である。

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