第5話 スキル



「て、めえ、え......殺してやる!」


「おーおー、こええ顔するなよ。 ぷるぷるとブルっちまうだろ。 スライムだけに」


倍憎返撃リフレクション】受けた攻撃を倍にして返すスキル。返せるのは物理だけで、魔法は無理。でもこういう脳筋野郎には効果抜群の力だ。


「本気だッッ!! 後悔してもおせええぞっ!!!」


 ――ドオオオンン!!!


 戦士の体から爆発するかのように魔力が放出された。


 これがこいつの本気ね。ふんふん、なるほど。お手並み拝見っと。



 ――ヒュ



 真上、死角である頭上から斧を振り下ろす。



 ゴカッ――



 巨大な隕石が落ちたかのよう。



 ――ズズズ......。



 地震が起こり直撃した部分の地面は吹き飛び、クレーターのような巨大な穴が出来ていた。


「ひゃはっ、跡形もねえ! こうしちまえば再生もくそもねえだろ!!」


「おお! 確かにな! こんなの食らったらひとたまりもねえぜ‼」


「は?」


 俺は戦士の頭の上に乗り、うんうんとうなずく。


 俺からの攻撃がくると勘が働いたのだろう。戦士の全身が鎧のようなオーラで硬められた。


「――ッッ!!」


 その魔力硬度は並の攻撃では傷ひとつつけられない。目視でもそれがわかるほどの強靭さを誇っていた。


(ま、無駄だけどね)


「――フッ」


 バキョッ!!!


「ぶふっ!? な、がっ!!?」


 俺の攻撃はあっさりと魔力の鎧を貫通。戦士の腹に風穴があく。


 戦士は最早反撃することもままならず、倒れ込みうずくまった。


「......ヒール」


 そしてやはり即座にヒールが飛んでくる。


(......あの白魔道士のヒールやべえな。 なんでも治しやがる。 まあ、こいつらに簡単に死なれたら困るっちゃあ困るからいいけど。 あの白魔道士の女は最後に殺るか)


 勇者が剣を構え震えながら言う。


「な、なにをしたんだ......戦士の魔力防壁を簡単に貫くなんて......」


 ははっ、なんだこいつ脚が震えてる。ん?あれ?あっちの黒魔道士......漏らしてね?


 そんなに俺が怖いのか。


 まあ、里の皆はもっと怖かったろうし、苦しかったんだ。


 たっぷり味わってくれよ、この絶望と恐怖と苦痛を。


 俺はそんな事を考えながら勇者の問に答えた。


「何をしたって、ただ少し息を吐いただけだけど?」


「い、息......?」


「そうそう、ほんの少しフゥって息を吐いたんだよ。 ただそれだけ」


「そんなんで、戦士の魔力防壁を......」


「ははっ、魔力防壁? 豆腐みてえな脆さだったけど」


「あ、ありえねえ、戦士は......魔王の攻撃すらその魔法防壁で防ぎ無傷だったんだぞ!?」


「ふぅん。 ありえねえ、か。 それじゃあ今度はお前がためしてみなよ」


「......え」


「最強の勇者、なんだろ?」


「ッッ!!!」



「ほら、殺してみなよ。 魔物は皆殺しにするんだろ? それとも黒魔道士があの時みたいに俺を燃やすか?」



 名を呼ばれビクッとする黒魔道士。



「すみません、ごめんなさい、ごめんなさい......あ、あたし、あなたにひどいことしちゃったの? ゆるしてください、ゆるし」




 ――ボグッ




 黒魔道士の顔面を弾き飛ばした。



「く、黒魔道士!!?」


「大丈夫、死んでねえよ。 なんかイラッとしたから黙らせたけど」



 黒魔道士は地面に伏して動かなくなった。気を失っている状態だ。



「つーか、今のもさっき戦士の腹に穴開けた時のスキルだぜ。 【空気砲撃エアバレット】っていって......いやぁ、まあ、名前はあるけどスキルってほどでもないんだよな。 ただ俺が体内の空気を魔力により圧縮して飛ばしてるだけだから」


「......それでこの威力だと......!?」


「まあ、圧縮に魔力たくさん使ってるしな。 ちなみに本気で撃ったら破壊できない物ねえよ、これ」


「な、な.....」


 強いからこそ、か。実力差に気づいちゃった感じだなぁ。もうちょっとオレツエー勘違いくんを痛めつける感じで楽しみたかったのに。


 まあ、どのみち痛めつけて殺すことには変わりないけどな。


 そんな事を思っていると、勇者は逃げられないと感じたのか、俺へと向かってきた。


「うおおおっ!!!」


「おっ、そうだ! こいこい!」


 流石は勇者といったところか。剣技すげえな。


 流れるように繰り出される攻撃は的確で、まるで俺の動きを先読みしているかのように繰り出される。


(先読みスキルかなんかかな? まあ無駄だけど)


 俺の体には魔物一億匹(多分)の魔力が宿っている。その魔力で身体強化されている俺の動体視力、俊敏性は、たとえ先読みされて攻撃されたとしていても、それを上回るスピードで回避できる。


 できるし、まあぶっちゃけ




 ――ズガンッッ!!




「――!? な、なにっ!?」


 体に剣が直撃。しかしその刃が俺の体を両断することは無かった。高密度の魔力が剣を防ぎ、ダメージが通らない。


 まあ、フツーにフツーの魔力防壁なんだけど。


「な、なんで、嘘だ!! 俺の攻撃は魔力を無効化する......な、なのに! なぜ斬れない!?」


 あ、あー!そういうスキルあるのか!


 まあ、多分俺の魔力量はその効果を上回る程なんだろうな。打ち消しきれない魔力量。それにより防壁が崩せない。


「んー、勇者さあ、もうちょっと頑張れない? こんな雑魚だと殺してもちょっとあれだよね? なんか雑魚殺しても楽しくないからさぁ」


 ――パアァンッ!!


「ぐああっ!?」


 勇者の脚に【空気砲撃エアバレット】を撃ち込む。


 片膝を地面についた時、右手首を【空気斬撃エアショット】で斬り落とした。


「あああっ、ああああ......お、俺の手があッッッ!!!」


 噴き出す鮮血。




「わあ、噴水みたい」





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