『ボディーガード、または、塩田の園』
やましん(テンパー)
『ボディーガード、または、塩田の園』
『これは、フィクションです。』
ある、どうしようもない、うっとおしい、夜のこと。
夜中に、どんどん、と、窓を叩くものがあった。
民家とは言え、2階の窓であり、ま、やってやれないこともないが、古い家だから、屋根が抜けかねず、非常に危険な行為である。
とは言え、カーテンを開けて見るべきがどうか、やましんは、いささか判断を躊躇したのであった。
が、実際には、そのようなことは、元々、無駄だったのである。
なぜならば、カーテンを引くまでもなく、何者かが、部屋の内部に実体化したからである。
『ぎわ。物質転送かあ。』
と、やましんが、喘いでみる間もなく、それらは、三体の遮光器土器タイプの生命体になった。
その内の一体が、右腕をお腹に当てながら、会釈をして、こう言ったのであった。
『こんばんは、やましんさん。良いおばんです。今夜は、あなたを、人体資料として、採集に参りました。われらの母星、コイ・ホーロー第三惑星にお連れいたしまして、各種調査にご協力くださいますよう、強制いたします。身体を、切ったり、他につないだり、追加したり、いたしますが、命は保証いたします。いざ。』
『んなもん、嫌だね。』
『この計画には、それなりの予算が投入されておりますゆえ、嫌は、出来ません。』
『ぐぎょわあ。』
やましんが叫んだ、その時である。
『やましんどのを、救助せよ。ごきなあ。』
との号令が掛かったのだ。
見れば、無数のごき軍団である。
『かかれぇ! ごきら!』
ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱあ!
進軍ラッパが鳴り響いた。
『うわあ。』
階段から、まだまだ、来るわ来るわ。
大砲やら、ロケット砲やら、電磁波砲などの重装備を引っ張りながら、ごき連射機銃を抱えた歩兵ごきが大挙して、遮光器土器タイプの生命体に襲いかかった。
さらに、プラモデルみたいな戦闘機が10機ほど、やって来た。
しゃ、しゃ、しゃ、と、ミサイルを発射する。
ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱ、ぱっぱあ!
『わ、わ、わ、退去。退去。』
やましんは、部屋の反対側に退去する。
大砲が炸裂し、ロケット砲弾が、なにやら生物化学兵器みたいな煙を上げて、連中に的中する。
電磁波砲は、うねうねと光線が悶え、連中の身体を拘束しているらしい。
遮光器土器タイプ生命体が、いかにも、慌てて混乱しているところに、巨大な網が天井から落ちてきた。
見れば、まさに、天井では、無数以上のごき軍団が歓声をあげている。
こうして、遮光器土器タイプの、生命体三体は、あっさりと、お縄になったのである。
窓の外で、何かが飛び去るような光があった。
どうやら、置き去りにされたらしい。
冷たい、仲間たちだ。
すると、隊長らしき、ひとまわりでかいごきが、現れて、やましんに、敬礼した。
『ごき軍団、地球外生命体対策隊長、ごきフリーデマンであります。日頃は、お世話になります。大将から、あなたを必ず、お守りするように、指示されています。最近、地球外からの侵入者が多発しておりまして、人間政府も警戒しているやに、聞いております。あ、これは、まだ、極秘なので、よろしく。では、おやすみ中、お騒がせごきでありました。失礼いたします。ひったてい。撤退!』
『ごきなあ〰️〰️〰️〰️〰️〰️!』
『や、やましんさん、なんとか、お助けを。』
遮光器土器型生命体が、哀願した。
やましんは、翌日、ごき大将あてに、寛大な処置を願い出たのである。
仲間を見捨てるなんて、感心しない。
しかし、それにしても、地球政府は、何を、秘匿しているのであろうか。
やましんに、わかる由も、ないのであったが。
ちなみに、ごき達にとっては、やましんちは、食糧補給に、絶対的に必要であり、まさしく、塩田の園、なのである。
end
『ボディーガード、または、塩田の園』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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