第6話 葉真中顕『絶叫』より
「美味い話はない、とは言いますが、この国には一瞬だけ、なんの知識もない素人でも、ただ売り買いするだけで資産を何倍にも増やすことができた時期があったんです。ただねえ、こういうのは、結局は帳尻が合うようになっているんですよ。本当に勝てたのは、それを承知して絶頂期に売り抜けてゲームを降りた一握りの人だけです。圧倒的大多数は、気づいたときには、もう降りるに降りられなくなって、ツケを払わされることになった。鈴木さんも、その一人でした。ええ、そのことは責められません。だって、鈴木さんは悪いことをしたわけじゃない。ただ、一握りの勝ち組に入れなかった、平凡な普通の人だったというだけのことです。誰でも勝てるように見せかけられているのに、本当はごく一部の人間しか勝てないゲームに負けたところで、何を責められましょうか。借りたものさえ返せば、まったく問題ありません」
(ここまで引用 葉真中顕『絶叫』 光文社文庫 2017年 154P)
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葉真中顕さんは、社会派ミステリーの旗手として急速に躍り出たね。まだ二冊しか読んだ事ないんだけど、実にいい。ぐんぐん迫ってくる感じの筆力の高さにびっくりする。そんな感じのもっと葉真中さんの特徴をあらわす文章を引用しようと思ってたんだけど、実にタイムリーだなと思う事があったから、今日はあえてこの文章にしたわ。
何がタイムリーって、おとといの日銀総裁の「実質利上げ宣言」。総理が国民に株への投資を促してたかと思ったら、日銀総裁が株が下がる金融引き締めを宣言するんだからね。おまけに誰が見ても「実質利上げ」を、お得意の「利上げではない」という強弁つきで。
速報が入ってきた時、あやうく買い替えたばかりのノートPCに盛大にコーヒーをぶっかけるとこだったよ。みんなも気をつけた方がいいよ。これから「〜ではない」という強弁のもと、その「〜」を強烈に推し進めていくだろうから。ボクチャンミクスの後始末のためにね。一人のボクチャンの面子を守るためなら一億人に犠牲を強いても平気で何でもしてくるよ。しこたま儲けた殿様連中は、もうとっくに売り抜けて高みの見物してんだからね。言いたい事は山ほどあるけど本筋から離れるから、この辺にしとくよ。
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