第1話 江國香織 『冷静と情熱のあいだ』より
阿形順正は私のすべてだった。
あの瞳も、あの声も、ふいに孤独の陰がさすあの笑顔も。
もしもどこかで順正が死んだら、私にはきっとそれがわかると思う。どんなに遠く離れていても。
二度と会うことはなくても。
(ここまで引用 江國香織『冷静と情熱のあいだ』角川文庫 平成13年 冒頭)
□ □ □
冒頭の一文。
まさに「端的でありながら多くを孕む美しい文章」。
たったこれだけの短い文章で「私」と「阿形順正」のおぼろげな関係性も、どれほど想っていたのかも、「順正」のかすかな雰囲気も、もう会えないであろうという諦観も、それでも今なお抱く思慕も、まざまざと伝わってくる。
冒頭でこれだけ強烈にやられたら「二人の事」が書かれているこの小説を、もう読まずにいられない。
急いで本を持ってレジに走ったのを、これ書きながら思い出したよ。
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