B5-1 確信はできずとも信用は Part2(ゲーム)

<攻撃側チーム>

プレイヤー:

采漢紳シャッハ・ジェン】攻撃力4800 威力3 累積負傷値:18

【糸詠】攻撃力500 威力1 累積負傷値:13

手札2枚

【ウプシロン】攻撃力1500 威力6 累積負傷値:8

【シンセ】攻撃力3100 威力3 累積負傷値:14

【ヨー】攻撃力3100 威力1 累積負傷値:10


アイテム:

【スロット】

【昆虫の羽】

【封書】


<防御側チーム>

プレイヤー:

水硝クリスタル

攻撃力1900 威力5 敗北値25

効果:???

(力よりも頭で勝負することを好む鬼。

一度決めたら絶対に曲げない)


アイテム:

【???】


**********


ヨーが口を開く。


「ねぇねぇ、さっきもらった手紙使おうよ」


「ああ、そうだな」


采漢紳シャッハ・ジェンは【封書】を取り出す。


「さて、何を書いたら良いものか」


「"攻撃したら負け"って書いておけばいいんじゃない?

そうすればあいつ、すぐに倒せるよ」


「そんな極端なものが通用するとは思えない。

試しに書いてみるか?」


「うん」


ヨーから言われた内容を書き込む。

文字は何事もなかったかのように消えてしまった。

その紙を見せる采漢紳シャッハ・ジェン


「ダメか…」


「(さぁ、どうするか。

奴の性格からして…)」


采漢紳シャッハ・ジェンが【封書】に何かを書き込む。


「(皆にも共有しておく…)」


自らの能力で、仲間のモンスター達にも伝える。


「(…なるほど。

それなら奴には効果的かもな)」


水硝クリスタルは待ちかねていた。


「さぁ、お前のターンからだ!」


TURN1

(ヨーのターン)


「俺のターン!

今の俺の攻撃力なら、あいつに勝てるぞ!

攻撃!」


【ヨー】攻撃力3100 威力1

     vs

水硝クリスタル】攻撃力1900


ヨーが鬼に向かって飛んでいく。

体当たりするも、敵は何でもないといった様子だった。


水硝クリスタル】の頭上には、天井から光が差している。


水硝クリスタル】累積負傷値:0


「え!?

何でダメージ受けてないの!?

俺、ちゃんと攻撃したじゃん!」


「お前ごときが俺にダメージを与えることなんてできねぇんだよ!」


「くぅ~!

せっかくのチャンスだったのに!」


TURN2

(水硝クリスタルのターン)


「俺のターン!

ここで効果を発動!

全てのプレイヤーに5ダメージを与える!」


「何!?」


再び水硝クリスタルの頭上から光が差し、全てのプレイヤーに雷が落ちる。


「うわっ!」


采漢紳シャッハ・ジェン】累積負傷値:23(18+5)

【糸詠】累積負傷値:18(13+5)

【ウプシロン】累積負傷値:13(8+5)

【シンセ】累積負傷値:19(14+5)

【ヨー】 累積負傷値:15(10+5)


「全てのプレイヤーに5ダメージだと!?」


「攻撃もせずにこんな…」


「だが、これで奴もダメージを…」


水硝クリスタル】累積負傷値:0


「どうして!?」


「さぁ?

どうしてだろうな?」


「お前、何かずるい手を使ってるんじゃないだろうな!」


「ゲームの管理は全てこの塔が行っている。

イカサマしようにも、俺にはどうしようもねぇよ。

さぁ、お前らのターンだ!」


TURN3

(采漢紳シャッハ・ジェンのターン)


「俺のターン!

攻撃だ!」


采漢紳シャッハ・ジェン】攻撃力4800 威力3

     vs

水硝クリスタル】攻撃力1900


采漢紳シャッハ・ジェンが拳を向けるも、水硝クリスタルは片手で受け止めてしまった。


水硝クリスタル】累積負傷値:0


「どうだ采漢紳シャッハ・ジェン

かつてボコボコにした相手に、手も足も出ない状況ってのはよ!」


「くっ…」


TURN4

(水硝クリスタルのターン)


「俺のターン!

再びダメージをくらえ!」


ダメージをプレイヤーが襲う。


「うわっ!」


采漢紳シャッハ・ジェン】累積負傷値:28(23+5)

【糸詠】累積負傷値:23(18+5)

【ウプシロン】累積負傷値:18(13+5)

【シンセ】累積負傷値:24(19+5)

【ヨー】累積負傷値:20(15+5)


水硝クリスタル】累積負傷値:0


采漢紳シャッハ・ジェンが膝をつく。


采漢紳シャッハ・ジェン!」


「そいつの累積負傷値はこれで28。

そんだけのダメージを受ければ、立っているのもやっとだ。

もっともそいつは、立つこともできないようだがな」


「最初から、俺達に勝ち目なんてないんだろ!」


「待て! 糸詠!」


「!」


采漢紳シャッハ・ジェンが糸詠に呼びかける。


「冷静になれ。

確かにこの状況、俺達の不利には変わらない。

だが、攻略の糸口もつかんでいるはずだ。

俺が話したことを思い出せ…」


采漢紳シャッハ・ジェンが話したこと…」


思い返す糸詠。


「…分かった。

次の俺のターンで何とかするよ」


「ああ。頼むぞ」


TURN5

(糸詠のターン)


「俺のターン!

同時に手札が1枚増える」


糸詠の手札:3枚


「アイテム【スロット】を使う。

青の補助系スロットを使用!」


青いリールが回転する。


「(頼む…)」


リールは8の目で止まった。


「よし!

8の目の効果で、相手の攻撃と効果を2ターン封じる!」


水硝クリスタルが鎖で縛られる。


「さらに【回想配置リプレイス・リマインド】。

味方を別の階に移動させる。

頼んだよ!

ウプシロン、シンセ!」


「了解!」


回想配置リプレイス・リマインド

アイテム:カード

効果:味方1人または2人を指定した階に移動させる。

(既に訪れた階でなければ効果は受けられない。

また、その階をクリアすると元の階に戻る)


2人は消えた。


「(あの小僧、まさか気づいたのか…)」


「ターン終了」


TURN6

(水硝クリスタルのターン)


「俺のターン」


「【スロット】の効果1ターン目。

お前は攻撃も効果の使用もできない!

さっきみたいにダメージは与えられないぞ!」


「ちっ!

終わりだ!」


「次はウプシロンのターンだ…」


TURN7

(ウプシロンのターン)


<B3>


「やはり居たな」


シンセの言葉に頷くウプシロン。


そこには杖を持った石像が配置されていた。


【バリア】

攻撃力0 威力0 敗北値7

B5でのゲームが始まると、B3に出現する。

効果:???

(魔法使いをイメージした石像。

味方のサポートに徹する)


**********


<B5>


采漢紳シャッハ・ジェンが呼吸を整え、立ち上がる。


「お前がなぜダメージを受けないのか。

その秘密は、お前がダメージを受ける時、さらに俺達にダメージを与える時に天井から差す光にある。

お前はここより上の階から、別のユニットの影響を受けていたんだよな?」


「くっ…」


「俺が違和感を覚えたのは、B3で全てのゲームをクリアした時。

あの時だけ、階のクリアを告げる表示が現れなかった。

だがB4であの魔女を倒した時には、その表示が現れた。

つまり俺達はまだ、B3を完全にクリアしてはいないということだ」


「…」


「そこでお前が最初に言ったことを思い出した」


**********


B1での水硝クリスタルによる説明。


「お前ら攻撃側は、B1~B5までの防御側プレイヤーを1人ずつ倒すことができれば勝利…」


**********


「お前は各階に1人ずつ敵がいると言った。

それにもかかわらず、B3で登場したのは、迫る壁と秤のみ。

プレイヤーは登場していない」


「(やはりこいつ、只者ではない…)」


「さらにいえば、各階ではゲームクリアとともにアイテムが追加される。

しかし、B3で行われたのはアイテムの更新。

アイテム【ダイス】を【スロット】に更新させることで注意をそらし、階をクリアしたと錯覚させたようだが、俺には通用しなかったようだな」


「くっ…」


「これらのことから、あの時はまだ配置されていなかったが、B3にはプレイヤーが存在するのではないかと仮定し、前の階で皆に伝えた。

そしてこの階であの光を見た時に確信したよ」


**********


<B3>


【ウプシロン】攻撃力1500 威力6

     vs

【バリア】攻撃力0


突進により、石像にヒビが入る。


【バリア】の累積負傷値:6(0+6)


TURN8

(バリアのターン)


石像は微動だにしない。


**********


<B5>


「B3の秘密に気づいたところで、お前は小僧の手札を確認することも敵のステータスを確認することもできない。

それでもこの俺を倒せると、確信できたというのか!」


「もちろんそこは賭けだった。

2つの階の敵を同時に相手にする方法があるのかは分からない。

だが、糸詠がここまでの戦いで、カードを効果的に使い俺達を支えてきたのは事実。

手札に起死回生のカードがあれば、無駄にすることはない。

少なくともその点は危惧していなかったさ」


采漢紳シャッハ・ジェン…。

そこまで俺を信用してくれてたなんて」


「あまり調子に乗るな。

俺は客観的な事実を言ったまでだ。

何としても奴を倒すぞ」


「うん!」


「ウプシロンとシンセが敵を倒せるか気がかりだったが、お前のその様子を見るに問題はなさそうだな」


「(あの石像はプレイヤーの補助専用。

攻撃や守備では、何の役にも立たない!)」


【バリア】

攻撃力0 威力0 敗北値7

B5でのゲームが始まると、B3に出現する。

効果:

・前後2階までの味方は全てのダメージを受けない。

・このプレイヤーがいる限り、選んだ味方1人は「自身のターンの攻撃を放棄して、同じ階の全てのプレイヤーに5ダメージを与えられる」効果を得る。

(魔法使いをイメージした石像。

味方のサポートに徹する)


水硝クリスタルを縛っていた【スロット】の鎖が切れる。


「(奴を抑えていた鎖もここまでか。

だが…)」


**********


<B3>


TURN9

(シンセのターン)


「私のターン!

攻撃!」


【シンセ】攻撃力3100 威力3

     vs

【バリア】攻撃力0


【バリア】の累積負傷値:9(6+3)


石像が砕け散る。


"B3 クリア"


**********


<B5>


ウプシロンとシンセが戻ってきた。


「倒してきたぞ!」


「ありがとう、二人とも!」


「これでお前はダメージ与えることも防ぐこともできなくなった!」


「くそっ!」


続く…

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