鳥を産む国
@sitanosasori
第1話 鳥
昔遊んでいた人の名前が思い出せない。
昔遊んでいた公園の名前が思い出せない。
そんな彼に親は優しく「それはね、ぜーんぶ▇▇▇ちゃんが持っていったのよ」と教えてくれる。
登校に自転車を使うのはこの付近では珍しくない。朝から挨拶代わりのベルを鳴らし合う学生が行き交う。
楽しい会話をしていた2人、学校に着くと門が閉じられそうになっていた。「うわ、北野だよ」為来子が嫌そうな顔をする。「ここは任せて」手押しで自転車を進める。そんな2人が見えたのか北野と呼ばれた男がやってきた。「おいお前らまた遅刻か?」怪訝そうな目線が2人に刺さる。「え、えぇと北野先生。今日は
昼休み、教室を出て購買へ走る水三とその友人達。「今日こそはカツサンド食うぞ!」階段を飛越ながら進みちらほら人が並び始めた列に入り込む。「はぁはぁ……磯島の奴毎回早く終わるから助かるぅ」「それなー、マジで俺らの食生活分かれってんだ他のセンコーは」愚痴をこぼしながら番を待つ。「ッ?」水三が突然フリーズする。会話を続けてた友人は1度止まり目を見る。「おーい」「あぁ、わりぃ。さっきの時間寝てたからさ」「そんなんでテスト大丈夫かよ!」
購入したカツサンドとレモンティーを非常階段の手すりに置き手を拭く水三。「いやー、あいつの顔みた?クラスのキモ陰キャやろう」目の前では階段に座りながら語らう友人達が居る。「あ、うん。滑稽だったよね?」何となく話を合わせ、汚い笑いを飛ばし合う。
午後の授業を終えて人気の引いた教室で荷物をしまっていた水三の所に北野がやってきた。「生徒証返すぞー、今回は印無しだからな。次は無い」帰ってきた生徒証を胸ポケットに入れて教室を後にした。カラスがちらほらと空を舞い「カァカァ」と耳障りななき声を立てる。駐輪場は殆ど自転車が消えていて人気の無さが余計カラスの声を際立たせていた。「少し遅くなるったって六時まで残すことは無いのにさ」愚痴りながら水三が自転車に近付くと籠にカラスが集っていた。「離れろ!俺の自転車だぞ」カバンを振り回すとカラスはどこかへ消えていった。何に集まっていたか不審に思い近寄ると黒い何かがカゴの中に入っていた。「なんだ?うわっ?!死体」赤黒いビクビクとうごめく様子を見て生きてるという実感にとりあえず胸を撫で下ろす水三。「タチの悪いイタズラだな」カバンからポケットティッシュを取り出す。切り目を空け1枚引っ張り出すと細かい繊維が舞った。「うぇ、でも我慢してくれよ」赤黒い塊にそれを被せ拭き取るように軽く撫でた。嫌な呻き声を立ててそれは元の色を見せ始めた。見れば鷹のような凛々しさがどこかあった。「これで少しは寒くないだろ。羽が散りすぎてるぞ」カッターシャツを脱ぎ軽くその鳥を包んだ水三。「んじゃ帰るかー」カバンの小さいポッケから肩掛け用の紐を出し装着、肩に背負い自転車を走らせる。
「ふぅ、はぁ、くぅっ!だぁー」諦めて自転車から降りた水三はハンドルを押しながら上り坂を上がっていく。「やっぱり坂は辛いね」カゴでカッターシャツにくるまった鳥はそんな苦労を素知らぬ顔で、風を浴びていた。
小一時間掛け下り坂に辿り着いた水三。上りながらずっと鳥に話しかけていたせいか何処と無く友達のような近さを覚え気付けば家族や友人の話をしていた。「ふぅー、上着いた。後少しだね」カバンを掛け変えてサドルに跨る。「うぇーい!!」ペダルに足をかけ、力を込める。回転と共にチェーンが絡まりだしタイヤが回転を始めた。「最っ高の気分だろ!」徐々に加速していき、ペダルは空回りを始めた。風を割く勢いで下る自転車に鳥は無反応そうに呻き声を立てる。「なんだよー、ここ下るためだけに生きてるようなもんなんだぞ」下りさかが終わりそのままの勢いで上り坂をあがっていく。途中の脇道で自転車をおり、手押しで進んでいく水三。「あそこがさっき言ってた家んなだけどっても鳥には分からないか」駐車場に停めてある車の横を通り抜け、庭の方へ入っていく。自転車を屋根の下に停車させ鍵を抜きとる。「ほら行くぞ」カッターシャツ事鳥を持ち上げ家のガラス戸を引く。ガラガラと言う音に反応してか足音が近付く。「おかえり。え、なにそれ」「ただいまー、母さんこいつ見れる?」
水三が事情を細かく説明、終わる頃には母親の方も見終わっていた。「人の看護師何だけどね、とりあえず目立った外傷はないし洗えば綺麗になるよ」胸を撫で下ろす水三を見て鳥は首を傾げる。「この子なんて種類かしらね」近くの本棚から鳥の図鑑を取り出しパラパラとめくっていく母親。「んー、顔付きは鷹だよね」鷹というワードに反応したのか鳥が少し胸を張って自慢げに鳴く。「あー、灰鷹かも知れないわね。ほら見て」鳥と同時に覗き込んだせいで嘴に頭を打ち痛みから転がる水三、鳥はそんなのお構い無しに図鑑の灰鷹の写真を嘴で突っついた。「人の言葉が分かるの?あんたより賢いんじゃない」鳥は高々と跳ね上がり水三の頭の上に乗っかった。「はぁ、ほんとに元気そうだな」しばらくじゃれついているうちに料理の配膳が終わっていた。「この子って人のご飯いけるのかしら。カラスとかはよく食べてるのみるじゃない?」迷った末に鳥を手に抱え料理の前に持っていった。「これは?じゃぁこれ」魚や味噌汁を無視してヒジキを貪り出した。「肉食だよな?大丈夫なのか」「野生の動物なんだから分別はつくと思うわ。ほら食べましょ」
風呂も終わり布団に倒れ込む水三。スマホの時計は22時を指していた。「はや、居残りってやっぱ悪だろ」部屋の電気を暗くしスマホの明るさを下げていく。
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