第36話 SHINRI

 頭が痛くなってきた。さっさと濁った小便を出してしまおう。

 便所には誰もいなかった。背の低い三つの小便器が、申し訳なさそうに並んでいる。洗面台の下の屑かごには、役目を終えた萎びたコンドームが二つ、仲良く放りこまれていた。

 誰かが来る前に、とっとと済ましたほうがよさそうだ。

 半日ぶりに小便をした。勢いの悪い、断続的な小便。足のしびれが、排尿を妨げているのかもしれない。

 目の前の象牙色の壁には、猥雑な落書きがしてあった。女性器をデフォルメした絵の下には、携帯電話の番号。書き殴ったような字で、添え書きがあった。文字の間隔が狭く、どこに『/』を入れればいいのかわからない。

 こんな内容だ。


(せかいの『SHINRI』がしりたいアナタいますぐにこのばんごうにごいっぽうを!)


 ……ところで、『SHINRI』って?

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