娘と二人

タナカマキコ

第1話

娘が隣でスースーと寝息を立てている。

私は、真っ暗な天井を見上げて明日はどう生きようかと考えていた。


2年前の今日、私は妊娠したばかりで、彼とも別れて暮らすと心に決めた頃だったかな。

辛くて、辛くて。その頃は、お腹の小さな命を守る為に必死で、どうしたら会社にバレずに仕事ができるか、どうしたら、経済的にも誰にも頼らないで生きていけるか悩んでいた。とても怖いと思いながら日々を過ごしていた。


1年前の今日、仕事から復帰したばかりの頃だろうか。復職したら、お客が一人も残らず取り上げられていた。私は本当に怖くて辛かった。産休から復職する数週間前、会社から『戻ったら一からやり直しだね』と伝えられた時、私は生まれて間もないななちゃんを手に抱いて、茫然と立ち、目の前が真っ暗になった。赤ちゃんを守れないかもしれない。大きな不安に包まれた。

電話を受ける数週間前、赤ちゃんのパパから、出産祝い金をネコババしたと言われて喧嘩したばかりで、一人で育てると言ったばかりだった。


赤ちゃんのパパは、会社を経営していて、金銭的には不自由ない生活を送っている人だ。

私は18歳の頃に彼と出会い、10年後に彼と婚約した。婚約して3ヶ月で、私から婚約破棄した。理由はたくさんある。私は我慢ができない人間だ。言いたいことは言わないと気が済まない。負けず嫌い。頑固。

うまく行かないのは私にも理由がある。

私は、彼と結婚すれば、専業主婦になれると期待した。母が住むための家も買っていたが、彼がローンを支払ってくれると言ってくれたので、婚約した。もちろん、その頃、彼のことを好きで、家族として、一緒にいて守ってるくれる人ができたと喜んだ。


でも、彼は、婚約して1か月後に、会社が窮地に落ちた。仕事は続けてくれ、と言ってきた。私の計画は、そこで終わった。

妊娠すれば、また、専業主婦として生きる道があるのではと期待して、妊活に励んだ。

妊娠しなかった。私は失望した。

婚約破棄した2週間後に妊娠が判明したことは、運命のイタズラだ。私はそういう運命を歩んでいる。歩んできた。


世の中、妊娠している女性が一人で出産費用と生活費用を賄うのは大変だ。痛感した。大変だった。どんなに具合悪くても会社に働きに行く。つわりで吐き気があっても、飲み込んだ。辛くて涙が出そうになることが何回もあった。でも、一人で産むと言い切ってしまって後戻りができなかった。後悔している。


私は今、全てをやり直したい。

間に合うか。

どうしたらいいか。



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