第5話005「恩寵(ギフト)の能力」
昨夜、この世界のことを調べたあと『
——次の日
時刻は朝9時過ぎ。教室では1時間目の数学の授業が始まっていた。
昨夜は遅くまで『
そして、いよいよ眠気がピークに達しようとしたとき、俺にある『異変』が生じた。
それは、数学の先生が数式の説明をしたときのことだった。
「はい、じゃあこの問題を誰かにやってもらおうかな〜」
先生は黒板に問題を書くとその問題を生徒の誰かに答えさせようとしている状況だった。
「⋯⋯まずい。あんなの当てられたら地獄しかない」
俺はドキドキしながら「当たらないでくれ!」と戦々恐々としていた⋯⋯⋯⋯⋯⋯その時だった。
「っ?!」
突如、俺の頭の中で先生が出した問題の答えが
しかも、俺が問題の答えの
この時は運良く先生に当てられることはなかったが、当てられた生徒が答えを言うと俺の頭の中で出た答えと正解した生徒の答えは同じだったのだ。しかも、その後の先生の解説に関しては、先生の解説よりも『俺の頭の中の解説』のほうがより具体的でわかりやすかった。
「な、なんだ⋯⋯これ?」
その後、数学の授業を聞き耳を立てていると、さっきと同じようなことが頭の中で何度も繰り広げられた。最初は「何事か」と思ったが、その後授業で何度もそれを体験していく内に俺の中である『可能性』が導き出された。
「これって、もしかして『
それから次の歴史や国語の授業でも試してみると今度は『別の収穫』もあった。
それは、さっきと同じように一度授業を聞いてその授業に関連する教科書の問題文をやると、その答えが瞬時に出てきたのは数学の時と一緒だったが、もう一つ『授業でもまだやっていない問題』に関しては
「俺が知らないものに関しては⋯⋯⋯⋯答えは出せないっ!?」
ただ一つ興味深かったのは、
「⋯⋯やばいな、この能力。つまり、この『
俺は『
「それだけじゃない。数学の授業で俺が『解説』を求めたら先生の解説よりも『もっとわかりやすく具体的な解説』が出てきた。それって、つまり『見聞きしたものを記憶する』だけじゃなく『見聞きした記憶を保存するだけじゃなく、それをベースに適切な答え⋯⋯『最適解』を導き出したってことじゃないのか?」
そうして、俺は『最適解』の導く過程が『記憶』にあることだと
「記憶⋯⋯最適解⋯⋯最適化⋯⋯求めれば自動的に⋯⋯⋯⋯⋯⋯『
俺は一人ぶつぶつと可能性を探り思考の海へと潜り、そして、
「⋯⋯ちょっと試してみるか」
俺はこの能力について一つの仮説を出すと、放課後急いで図書館へと向かった。
そして、すぐに『大学入試コーナー』に行って『去年のセンター試験』を解いてみる。すると、
「わ、わかる⋯⋯わかるぞ⋯⋯答えが出てくる」
もちろん、俺が知らない⋯⋯俺の記憶にない問題に関しては答えは出てこなかったが、俺が一度でも聞いたことがあるだろう問題に関しては答えが瞬時に頭に出てくる。
「なるほど。やはり俺の頭の中で答えが出る問題ってのは、過去に意識して見聞きしていたものだったからちゃんと記憶に残っていたということか」
こうして俺は、ふとしたきっかけで自称神様がくれた『
「まず、わかりやすいところでいえば、どんな一流大学でも合格できるのは間違いないし、しかもいろんな場面でも使える汎用性の高さもやばい。さらに『最適解』が導き出される条件が『理解』じゃなく、ただの『意識して見聞きする』だけなのだから、俺の興味のある・なし、向き・不向き関係なく、知識を
なかなかの『ぶっ壊れ能力』である。
これを『チート』と言わずして何と言おう。
さて、そうなってくると自然に試したいものがもう一つ出てきた。
「⋯⋯この能力って
ニチャァ。
********************
俺は次にスポーツ関係の本棚へと移動し『陸上競技』の本を手にした。
俺はこれを『理解して読む』のではなく『とりあえず目を通す』というやり方でパーッと読んでいく。1時間ほどで読み終えた。
「さて、どこで試そう?」
ちょっと考えれば、陸上部に行って試せばいいのだが、いかんせん『友達いない暦=年齢』の『人見知りマスター』な俺からしたらそんなことできるわけがないのは自明の理。で、考えた結果、
「とりあえず、50メートル走を試してみよう」
俺は図書室を出ると運動場に出て、誰も使っていない端のほうへ行った。
そして、だいたい50メートルあたりだろう場所にコーンを置き、元の位置へと戻り、そして⋯⋯⋯⋯走ってみた。すると、
「え! 7秒11⋯⋯っ?!」
俺は手元の時計で測ったタイムを見て驚愕する。
半年前の体力測定では俺の50メートル走の記録は『9秒後半』だったので2秒以上記録が縮んだということになる。走りの知識などない俺でもこのタイムの縮まり方が
そして、そんな異常な現象を起こせる可能性があるとすれば、
「⋯⋯『
そう、おそらく『
俺はこの『
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