第47話 ロディ、いまさらダンジョンに挑まんとす

「「「「「ダンジョンボスを!!?」」」」」


 フェイのとんでもない指令にロディたち5人は驚きの声を上げた。


「ちょっと、あんた何言ってんだい!そんな話さっき言ってなかったじゃないかい!」


 ロスゼマが慌てたようにフェイに非難の声を浴びせる。

 横のエリーも驚いて目を大きくしている。どうやらこれはフェイの独断のようだ。


「そりゃそうじゃ、今決めたんじゃからのぅ。」

「勝手に決めんじゃないよ!全く、皆の迷惑も考えな。」

「しかもダンジョンボスなんて。もっとほかの条件にしてもいいじゃなくて?」


 ロスゼマは怒りの、エリーは困惑の言葉でフェイをとどめようとする。しかしフェイは考えを変えないようだった。


「いや、ワシはもう決めたんじゃ。それが出来ねば街を出ることは許可できんし、ワシの弟子を名乗ることも許さん。」

「ええーーーっ!!」


 ロディは悲鳴にも似た声を上げた。せっかくフェイから弟子と認められたはずのに、それを名乗れないのは、外から見ると弟子と認められていないのと同じだ。


「・・・フェイの身勝手さは昔っからなのだけど、本当困ってしまうわねえ。」

「アンタたち、別にコイツの言葉を真に受けなくてもいいんだよ。こんな条件なんぞやらなくって街を出たとしても、こいつ以外は誰も文句は言いやしないさ。」


 エリーとロスゼマはロディたちに対して優しく言葉をかけてくれるのだが、フェイは一向に空気を読まずにさらに話し続ける。


「なあに、今のロディの力ならボスを倒すことなど簡単じゃよ。攻略法もすでに確立されておるしな。ただし、めんどくさくて時間がかかるんじゃがな。」


 3人のそれぞれの言葉を聞きながら、ロディはしばらく考えていたが、やがて後ろにいる4人を振り向いて訊ねた。


「エマたちは3人でダンジョンを進んでいるよね。ボス討伐はしたことある?」

「まだないわよお兄ちゃん。私たちの最高は8層までよ。」

「10層にダンジョンボスがいるから、もうちょっとだけどな。」

「そうなのだ。だからロディとナコリナが加われば10層にも軽く行けるのだ。」


 こう答える3人の口調は意外と軽い。どうやらボス攻略の話もあまり嫌ではないようだ。


「俺、出来ればここのダンジョンを攻略したいって考えていたんだ。せっかく8層まで行けてるんだ。もしロディたちと一緒なら10層に行くのも簡単だろ?なら俺はやりたいぜ。」


テオはいつになく前向きに意見を言ってきた。やはり男子としてはダンジョン攻略やボス討伐は魅力的なのだろう。


「私も今のままで終わると中途半端だから、攻略できるんなら攻略したいわ。」

「ロディが一緒ならどこでも行くのだ。」


 残る2人も賛成の意を言葉にしてきた。

 ロディは視線を動かしてナコリナを見る。

 ナコリナは最初戸惑っていたようだが、やがて心を決めたようにロディに言った。


「せっかくだし、私もダンジョン攻略するのに賛成するわ。私がロスゼマさんから教わったポーションの実力をみんなに試してもらいたいしね。」

「そっか。」


 ロディは4人の顔を見渡した。

 テオは意気込んで、レミアは嬉しそうに、エマは楽しそうに、ナコリナはちょっと不安げに、4人はそれぞれ違った表情だったが、みんなワクワクしているように見える。


(やっぱりみんなダンジョン攻略をしてみたいんだな。俺も正直言うとやってみたいし。なら断る理由はないな。)


 ロディは再びフェイたち3人に振り向くと、


「わかりました。ダンジョンに行って、ボスを攻略してきます。」

「うむ、よくぞ言った。それでこそわが弟子じゃ。」


 ロディの言葉にフェイが満足そうに頷く。エリーとロスゼマは『仕方ない』というような表情をして黙ってため息をついた。


◇◇◇


「ところで、ここのダンジョンボスって何なの?」


 ダンジョン攻略の準備を進めるために宿に帰ってきたあと、ナコリナが聞いてきた。ナコリナはあまりダンジョンに入らなかったため、ダンジョンの知識が少ない。ましてやボスの情報も調べていなかった。

 だが実はロディもいままでそれどころではなかったので、首を振って『知らない』というジェスチャーをした。


「あ、私知ってる。前に調べてたんだ。」


 ナコリナの言葉を聞いていたエマは手を上げながら近寄ってきた。


「ザイフダンジョンの10層にいるボスはね、何と『スライム』なの。」

「「え、スライム!?」」


 それを聞いたロディとナコリナは一緒にハモってしまった。

 スライムと言えば最弱のモンスターとして有名である。それがボスモンスターとは・・・。


「もちろんタダのスライムじゃないの。」


 エマは右手の人差し指を立てて横に振り、左手を腰に当てて笑った


「そのスライムはね、とってもでっかいの。名前は『ヒュージスライム』って言うのよ。」

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