完全変人マニュアル
羽弦トリス
第1話たまごクラブ
読者諸君は『たまごクラブ』と、言う妊婦さんが読む雑誌を御存じだろうか?
今も、発行されているかは僕は知らない。
あれは、26年前の17歳の高校2年生の時。
コンビニで、ジャンプを読んでいて棚に返す瞬間、『たまごクラブ』の雑誌の表紙が目にとまった。
何も考えず、その雑誌のページを捲る。
妊娠中の食事や、妊娠中のセックスについて細やかに説明してあった。
面白い!
僕は、学生服のまま、『たまごクラブ』を購入した。
帰りのバスの中で、その雑誌を夢中に読んだ。
翌朝、通学のバスの中でもつり革を掴みながら読んだ。
そして、ある噂がささやかれた。
【羽弦は、彼女、妊婦させたらしいぜ!】
と。
僕は避妊はしていたので、気にしなかったが、担任が個室に僕を呼び出し、
「羽弦、お前は3組の丸山を妊娠させたのか?正直に答えろ!」
「えっ?妊娠ですか?僕は妊娠なんか絶対にさせていません。なにぶん、プラトニックラブなので」
担任は、
「本当だな?」
「はい」
「じゃ、何故あんな妊婦が読む雑誌を持ち歩いてるんだ?」
「明日は我が身です。知識だけは、付けておかないといけません。妊婦さんって大変なんですね」
「……」
「母親の偉大さを感じます」
「……羽弦!歯を食いしばれっ!」
バッチーン
「ぐはっ!」
僕は担任に、竹刀で殴られた。
「もう、いい。分かった。誤解されるようなマネは二度とするな!」
「はいはい」
バッチーン
「はべらっ!」
「……」
担任はにらんでいる。
「分かりました」
放課後
「羽弦君。久保田先生に呼び出されたの?」
と、彼女の丸山いずみが僕にアップルジュースを渡しながら言った。
「ずんちゃん、竹刀で殴られたよ!竹刀で二度も!」
「だって、羽弦君が誤解されるような事をしでかしたからでしょ?わたしも、妊娠したの?って、周りから言われたし。わたし、普通じゃない生き物の羽弦君が好きなんだけど、たまごクラブはちょっと」
「特進クラスの偏差値の高い、ずんちゃんには理解出来ないだろうが、僕は天才なんだよ!明日、泊まりにずんちゃん家に行っていい?」
「ま、お父さんは羽弦君の事気にいってるからいいけど……」
「最低、3発ね」
「バカッ」
今、思い出せば、懐かしい。『たまごクラブ』。
本物のパパになるのは、この時から13年後なのだが。
『羽弦、変態疑惑』は、この頃から今日に至る。
次回は、また、いつか。
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