第30話 見舞い
ーーーーーー
チュンチュンチュン
スズメ達が爽快な朝の歌を奏でる頃......
ゴホッゴホッゴホッ
青年は憂鬱な風邪の歌を奏でていた。
「だ、ダメだ......治るどころか、悪化してる......これじゃ今日のバイト無理かも...」
猫実好和は、三日前の水曜日からやんわり調子を崩していた。
しかし、本人はたいした自覚はなく、
「疲れてるのかな?寝不足かな?寝ればすぐ良くなるだろ」
などと嘯いていつも通りに過ごしていた。
ところが、休みの土曜日になった途端、急激に体調を悪化させたのだった。
「とりあえずただの風邪みたいだけど......バイトは代わってもらった方がいいなぁ...代わってもらえるかなぁ......
ああ、完全にタカをくくってた。昨日のうちに連絡しとけば良かった。でも昨日はまだイケそうな気がしてたし......
と、とりあえず、店長と遠藤さんに連絡しよう......」
猫実は、朝の七時前には一連の連絡を済まし...
さや
「わかった!代わるよ!そのかわり私が風邪ひいた時は猫実くん代わってよ!なんてね!じゃ、お大事にね~!」
アミ
「がってんしょーちのすけや!気にせんでゆっくり休みや!」
...無事、遠藤さやの代打合意と店長の確認を得ると、安堵して再び眠りに入った。
......
夜の九時手前。
起きては寝てを繰り返し、ようやく「何か食べなきゃ......」と重々しく起き上がって弱々しく立ち上がる猫実好和。
そこへ...
ピンポーン
インターフォンが鳴る。
宅配便か?と思い、スウェットにマスクをした猫実はフラフラと玄関まで行き、ドアスコープを覗いた。
「えっ?店長?」
思わず猫実は即座にガチャッと扉を開く。
「こんばんは!猫実くん!見舞いに来たで!」
「て、店長......あ、ありがとうございます......それと、今日はホント申し訳ございませんでした......」
「ええよええよ!それとな?ウチだけやないでぇ?」
アミ店長はツレ二人を手招いた。
「えっ......もずきゅん先輩と、ナル先輩も!?」
なんと、人見知りネコ娘とツンデレネコ娘も連れ立って来訪していた。
「こ、こここここんばんは!か、体は、大丈夫??」
「ふんっ。風邪引いてると聞いて来てあげたわ。ありがたく思いなさい!」
猫実は面食らったが、
「ほな、入らしてもらうで!」
「あっ、ちょっと...」
アミ店長がドカドカと雪崩れ込むように入って来たので、そのままなし崩し的に見舞い人達を迎い入れた。
[補足]
大学二年生男子、猫実好和の家に女子が足を踏み入れるのは、彼の人生史上初めての事だった。
しかし、この時の彼には、残念ながらその事実を噛み締める余裕は微塵もなかった。
例えるなら、修学旅行が楽しみ過ぎてハシャギまくっていた子どもが当日に体調崩した状態、といったところだろうか。
ということで...
次回、
『出張デリバリーネコ娘』
乞うご期待。
...スイマセン、ウソです。
当作品は全年齢対象です。(なんのこと?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます