第26話 もう一人のアルバイト

 どうも、皆さま。

 はじめまして。

 私は遠藤さやです。

 

 え?お前は誰だって?

 そうですよね。

 私が誰だか、誰もわからないですよね。

 

 私は、猫カフェ『ネコまっしぐランド』でアルバイトをしている、ただの大学二年生です。

 え?お前なんかいたっけ?

 いましたよ。

 オープン初日から。


 覚えていないかと思いますが、第一話で呼び込みをやっていたのが、私、遠藤さやです。

 その後は、基本的に、猫実好和くんと入れ違いでシフトに入っていたために、描写がなかったのかと思います。


 後ずけじゃね?

 と言いたい気持ちはよくわかりますが、それにつきましてはコールセンターにお問い合わせください。(ない)


 さて、皆さま。

 私には悩みがあります。


 それは......

 このアルバイトを辞めようかどうしようか!

 ということです。

 

 もともと、猫好きの私は、大学生になったら猫カフェでアルバイトしてみたいな~と、ず~っと思っていました。

 しかし、勤務地や募集状況など、私の都合に適うものはなく、一年が過ぎていきました。


 そんな矢先です。

 大学二年生になった私のもとへ、『ネコまっしぐランド』なる猫カフェが、近所にオープンするとの情報が!

 しかも、オープニングスタッフを募集中とのこと!


 もはや、遠藤さやに迷いはありませんでした。

 私はすぐに応募し、面接し、採用が決まり、晴れて猫カフェでのアルバイトの夢が叶ったのです!


 ......問題はここからです。


 いざ、勤務となると、私は重大な事実を知りました。

 そう。ネコまっしぐランドには、猫がいないということ!


 すなわち、それは猫カフェではなかったのです。

 その代わり、ネコ娘なる者がいて、接客等を行なっています。

 猫耳カフェ、といった方が良いかもしれません。(メイドカフェ的な)

 

 こんなの、完全に詐欺です!

 なぜ、お客様からクレームが来ないのか?

 不思議でなりません。

 

 え?面接の時、気がつかなかったのか?

 実は、面接は、某チェーン店のカフェで行われたため、店の実態がわからなかったのです。

 店長曰く「まだオープン前やから」とのこと。

 今になって思えば、巧妙な偽装工作だったのかもしれません。


 じゃあさっさと辞めればいいんじゃね?

 確かにそうですね。

 しかし、ハヤオンさんやナルさんをはじめとして、ネコ娘スタッフの皆んなが本当に良い人で、何となく辞めるに辞められなくなってしまい......

 今に至ります。


 そんな私は、客観的な意見を聞きたいな~と思い、同じバイト仲間で同じ大学生でもある、猫実好和くんに相談してみることにしたのです。

 猫実くんとは、ほとんどシフトが被ることがなく、彼の歓迎会も、私は都合が悪く参加できませんでした。


 そこで、彼の勤務時間に忘れ物を取りに来たという名目で店を訪れ、彼と接触し、連絡先を交換しました。

 その日の夜、すぐに私は彼と約束を取り付け、今日、約束の日となったのです。

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