第5話 才能

 昼休憩ももうすぐ終わるであろう図書室にて、冴えない高校二年生とピッカピカの転校生の男女がいる光景に図書当番の人も頬を赤らめながらもニヤニヤとこちらをチラ見してる姿が視界の端に見て取れる。

 何を期待してるか分からんが、貴方が想像してるウハウハするような展開にはならない。確かに転校生は僕の感性からしても十分美人と言って差し支えないと思う。が...


「ねぇねぇねぇ 君はどんな小説書いてるの?どんなジャンル書いてるの?読ませて読ませて」


 何だこのめんどくさい生き物は!!!!

 自分で言うのもあれだけど僕は人と喋るより本読んでた方がいいと思うタイプの根暗君なのでこのタイプとは無縁かつ一番関わりたくない人種。みんなが思うような甘酸っぱい展開にはならない。多分。

 それでも僕が踏み込む理由が彼女にはある。


「あのさ、小説家ってやっぱりがないと出来ないのかな」


唾を飲みながら覚悟して聞いた質問に転校生は涼しい顔でさも当たり前かのように、

「ん?何言ってるの?そんなんあって大前提だよ?」


 僕の心のなかで彼女の口から出るとは思ってなかった、出てほしくなかったストレートな答えを浴びせてくる。


「でも才能だけあっても無理だと思う。本を書いて書籍化までこぎつけても実際それで食べていけるほど儲かるわけ確証もないし、生活をするために自分が作りたい物より売れる物を作らないといけない所から来るストレスに耐えながら書き続ける努力だっている」


(努力なら僕だってしてる...)

 グッとペンを握る僕の手に力が入る。

 言われた事が真っ当なのは分かってる。分かってるからこそ込み上げてくる悔しさと焦り。そんな僕を見透かすように転校生は続ける。


「確かに君のプロットよく作り込まれてる。今まで数をこなしてきたのがよく分かるし、並の努力じゃないって言えるほどに小説に向き合ってるのは感じ取れる。けどさ」


 さっきまで意気揚々なテンションだった転校生が冷え切った目で僕に現実を突きつける。


「そもそもに君の作品



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